第109話 覚醒
三日経った。
「帰って来ないんだけど!」
「やばいっすね」
「どうする?明後日までには帰りたいんだけど」
「明日まで待って帰って来なかったら、ここぶん投げて帰るっすか?」
「しょうがないよね、俺たちにも用事あるし、約束の日数はここに居たし」
「そうっすね、明日になったら帰るでいいんじゃないんすか?」
「よしそうしよう!」
「何が、よしそうしよう!なんだ?」
「うわぁ!ビックリした!ビックリした!ビックリした!」
この人、気配が希薄過ぎるんだよ!
「すまんな、脅かすつもりじゃ無かったんだけどな」
「何をしてたんすか?」
「あー、なんだ、お前らの事調べてきた」
頭をボリボリ掻きながら、さらっとヤバそうな事言ってきた。
「それで……何か分かりましたか?」
出来るだけ気づかれないように臨戦態勢をとる。
「あー、そんなに警戒しなくて良いぞ、お前らが何したいのか、何のためにここに来たのかは大体分かった……」
そこまで聞いた瞬間、俺はウサギを一斉に襲い掛からせた。
「だから、そんなに警戒するなって」
襲いかかったはずにウサギたちがボトボトと勇者の足元に転がる。
クークーと寝息が聞こえてくる。
この人のスキル、地味にとんでもない。
「全部分かった上で、俺はどうでも良いと思ってる」
「どういう事ですか?」
「この世の中、生き残った奴が正しくて、潰された奴はそれまでって事よ」
「それは?干渉しないという事ですか?」
「ん?ちょっと違うかな、高みの見物を決め込むが勝ち目の無い戦いなんて、見てたってつまらんだろう?」
そう言ってニヤって笑う。
「じゃあ、覚醒はしてくれるんですか?」
「じゃなきゃ、お前らに勝ち目なんてないんだろ?」
「……はい」
なんだろう、勇者ってどこか人格が破綻してないとなれないのかな?
「ところで、たかしのユニークスキルってどんなのなんだ?」
「え!あ、うーん、内緒っす」
なんだそりゃ。
まぁ、良いけど。
とにかく、俺たちは無事覚醒して戻って来れた。
ー樹海ダンジョンー
遂にSSSダンジョンに突入する日になった。
時間は何も解決してくれないというのが俺たちの共通意見だ。
一か八か隙を見つけた時に勝負をかける。
だが何が隙になるか全く想像つかないので、この判断は俺と恵ちゃんに委ねられている。
「さて、入るぞ!中に入ると方向感覚狂うからな、視界で確認出来無くなった瞬間合流は不可能だと思えよ」
「はぐれた時はどうするんですか?」
「とにかく真っ直ぐ進め、そうしたら壁に当たるそうしたら壁に手をついて壁伝いに歩け、そうしたらその階層入り口か出口にあたる。
後は運だな」
「ずっと壁伝いに移動しちゃダメなんですか?」
「モンスターと戦わない、宝箱も手に入らない、ただ下に行くだけなら問題ないがな、それじゃあダンジョン入る意味ねぇだろ?」
「あ、確かに」
「それに慣れてくればなんとなく方向把握出来るように成る」
「そうなんですか?」
「二回に一回間違うけどな!」
ダメじゃん
俺たちはダンジョンに向かった。
おそらく、最初で最後の樹海ダンジョン。
ダンジョンに入る時、思わず俺は唾を飲んだ。




