第108話 冬眠
神々の遊び場は綺麗な花畑と温暖な箱庭のように……。
なんて事は無く、より一層吹雪が強烈になってる雪原だった。
「イメージと違う! やり直しを要求する!」
「誰にするんすか?」
「知るか! 言っただけなんだから!」
「なんだ、そういう事出来る人知ってるのかと思ったっす」
「んな訳あるか!」
「え、でも吹雪やんだっすよ」
「あれ?本当だ」
「お前らこんなところまで何しに来たんだ?」
いきなり真後ろから声をかけられた。
「うわぁ!ビックリした!ビックリした!ビックリした!」
お前は恵ちゃんか!
「あぁ、驚かしたかすまんすまん。 一応侵入者には警戒しないといけなくてな、それで、何しにきたんだ?」
「俺らの未覚醒なスキルを覚醒してほしくて」
「あー、まぁ、俺のスキル『起臥寝食』使えば出来んことも無いな」
「お願いします!」
「めんどくさい」
「……え?なんて?」
「め・ん・ど・く・さ・い」
「スキル使うだけなのに?」
「疲れるんだわ」
「えー、なんとかならないんですか?」
「んー、じゃあ、俺の代わりに俺は今やってること2日くらいやってくれんか?
現場から離れられないからな、久しぶりに街に行きたいんだわ」
「食べ物は?」
「その辺は俺の『起臥寝食』でどうにでもなる」
「あーそうなんだって……普通にスキル使ってるじゃねぇか!」
「使うパワーが違うんだよ! お前らのスキル目覚めさせるとか、どんだけパワー使うと思ってるんだよ」
「あ、はい、すいませんでしたぁ」
「とりあえず現場に移動するぞ」
「「はーい」」
雪原を歩いてついていくと、空間にぽっかりと穴が空いている場所があった。
「あれってなんですか?」
「知らん!とりあえず、面倒なのがいるから、それが復活しないように見張るだけの簡単な仕事だ」
「え、見張るだけ?」
「そうだ、異変が起きたら非常ボタン押すだけの仕事だな」
「それって監視カメラ置いとくじゃダメなんですか?」
「なんか壊れるんだよなぁ」
「へー機械がダメになる波動とか出てるんですかね?」
「かもしれないなぁ」
ん?
「それって、非常ボタンは壊れてないんですかね?」
「さぁなぁ、使った事ないしなぁ」
「点検とかはしないんですか?」
「定期的に新品に交換してるぞ」
「それってどれくらいのペースですか?」
「半年に一回くらいだな」
「じゃあ、半年は壊れないで持つんですね」
「いやぁ、いつ壊れてるかって調べた事ないしなぁ、交換した時にはだいたい壊れてるしなぁ」
「最近交換しました?」
「来月交換するぞ」
「……帰っていいですか?」
「おう、構わないぞ、その代わりスキルの話は無しな」
「大人って汚い」
「人のスキルを便利に使おうとしてる奴が何言ってるんだよ、働け」
ー特殊空間内ー
そこは鍾乳洞の洞窟ような場所だった。
しばらく歩くと氷漬けの巨大な女性の半身が二つあった。
どうやら真っ二つに引き裂かれた状態で氷漬けにしたようだ。
「めちゃくちゃ綺麗な女性ですね」
半分に引き裂かれた状態でも神秘的で美しい女性だった。
「いい女だろう、シノッペトゥンマッって言うらしいんだが、悪神なんだってよ」
「半分になっても死んでないんですか?」
「再生能力がすごいらしいぞ、俺もこれを俺のスキルで封じたままにしてくれって依頼されただけだからな、詳しい事は知らん」
「それって居なくなって大丈夫なんですか?」
「俺の『起臥寝食』は起きる、寝る、食うって言う普通の行動を拡大解釈して使うスキルだからな、封印っていうよりは、寝ててくれって感じだな、今日かければ一週間は平気だろう」
「なるほど」
「じゃあ、頼んだぞ!」
そう言うと、ウキウキしながらいそいそと山を降りていった。
「そういえば、冬眠勇者って名前なんだっけ?」
「知らないっす、聞いてないんすか?」
「うん」
「俺らも自己紹介してないから、イーブンって事で良いんじゃないっすか?」
「あ!自己紹介忘れてた!」
今更だよなぁ。
俺は勇者が置いていった食料をパクつきながら、テントに潜り込んだ。
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