第107話 雪山
前回の反省を踏まえて、もう少し考えて行動することにした。
「ドンは風上で風よけに、コロは俺とたかしに装備、ノバ、パル、ピノで周囲探索に」
これで完璧だ!
「これだけウサギが優秀なのになんで遭難したっすか?」
「そりゃ、舐めてかかって適当に歩いてたからに決まってるじゃん!」
「なんで舐めてたんすか?」
「モンスター出ないし、雪がこんなに面倒だって知らなかったし」
「アレっすね、素人が雪山登山行って、舐めてかかって酷い目に遭うのと同じっすね」
「まぁ、そんなとこ」
「でも、これ、何か目印無いと厳しく無いっすか?」
「サンピラーって知ってる?」
「知らないっす」
「ダイヤモンドダストに光が反射して光の柱に見える現象なんだって」
「へぇ」
「それを目印に辿って行ったら、天使の梯子『エンジェルラダー』っていうサンピラーのでっかいバージョンのがあるんだって」
「天使の梯子っすか」
「それを登れば、神々の遊ぶ庭『カムイミンタラ』って場所に出て、そこがゴール」
「なんか名前が神秘的っすね」
「富士山が日本の霊山なら、大雪山はアイヌの霊山なんだってさ、全部お姉さんからの受け売りだから間違ってても文句言うなよ」
「大丈夫っす、あってるかどうかも分かんないっすし、割とどっちでも良いっす」
そんな話をしていたら、最初のサンピラーを見つけた。
「誰か居るっすよ」
「このクソ寒い中であんなに薄着で平気なら、人間ってことはないな」
「え、でもワンチャン戦乙女のどっちかって事無いっすか?」
「似てるけど、それ本人に言ったら殺されるかもよ」
一応女性だって分かるけど、バーバリアンって検索したら真っ先に出てきそうな獣系の服を一枚羽織ってるだけの状態でサンピラーの前に居る。
どう考えてもガーディアン的な奴だよね。
「スマホ使える?」
「え!なんすかいきなり、ちょっと待つっす……あーなんとかいけそうっすよ」
「じゃあ『アイヌ』『神話』って入れてみて」
「あれってアイヌなんすか?」
「だって、カムイミンタラってアイヌ語でしょ? アイヌのダンジョン入って北欧のモンスターとかなくない?」
「あー確かに! ちょっと待つっすよ……あ、居るっすわ」
たかしはそう言って、俺にスマホの説明文を見せてくれた。
オササンケカムイ:札内川の上流の山の中に住んでいたとされる裸族。冬は獣の皮を纏うがそれ以外の時期は全裸で生活する。時折、山を下りては優秀なアイヌの若者を攫って婿にしていた。この裸族の住む里に入った者は死ぬまでそこから出る事を許されないという。
「アマゾネスじゃん! 戦乙女じゃん!」
「やっぱ、見た目通りの相手っすね」
「思ったけど、見た目人間でも倒すのに何も抵抗感ないね」
「散々本当の人間やっちゃてるっすからなぁ、人間っぽいものとかマジ何も感じないっすね」
人としてはどうかと思うけど、探索者としては生き残りやすくなってるかもなぁ。
実力の上がりまくってる俺たちに敵うわけも無く、人間っぽいモンスターはあっさりと倒された。
この後も、熊やら、蜂やら、蛇なんかが出てきた。
一番厄介なのが、多分カタツムリだと思うんだけど。
神話的にも即死持ちっぽい奴だったから、魔法で焼き殺した。
わからん殺し対策は大事だよね。
最後の梯子にいたのは、六つの頭と六つの尻尾を、持つ狐だった。
「頭多い!尻尾三本少ない!」
「見た目はラスボスっぽいっすね」
「でも、まぁ」
「俺らの敵じゃ無いっすね」
ウサギ達が肉片にしたボスを、神話通りたかしが炎魔法で焼き尽くした。
「さてと、ここ登ればゴールだよ」
「そこでパワーアップすね」
「だと良いんだけどねぇ」
「アレっすよね、もう一人の勇者っすよね? 勇者なら助けてくれるんじゃ無いっすか?」
「そうなんだけど、冬眠中って言われてるからなぁ、謎しか無い勇者だから」
「寝てたら起こせば良いっすよ」
「ここで考えてもしょうがないから行くかぁ」
俺たちは梯子を登っていった。
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