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心の色は薔薇言葉  作者: 月夜野桜
第九章 虹色の薔薇は造られた奇跡
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第五話 金銀花(キンギンカ):愛の絆

 その想いに、赤薔薇ロサ・ガリカは見事に応えた。フルールの足元の魔法陣は、木の床ごと粉々に破壊され、拘束結界の機能が止まる。


 フルールの魔力弾はラミアの左腕を見事に貫き両断していた。直前に流した魔力に反応して、左手首のブレスレットは長大なミセリコルデと化す。落下によって向きが変わった剣先は、発動の勢いでフルールの足元を貫いていた。


「お姉様、愛はしっかりと受け止めたよ!」


 その身を解放されたフルールの魔力弾が、今度はラミアの足元の魔法陣を破壊する。


「やるわよ、フルール。私の相棒として少しは成長したところ見せてね!」


 片腕となったラミアは幻龍ペンドラゴンを発動しつつ、フルールに信頼の眼差しを送る。返ってきたのは、あの自信というよりは自慢気な笑顔。消滅ヴァニッシュメントを組み立てつつ、力強い口調で宣言する。


「なら、お姉様は先に行って! ここはあたし一人で充分。この消滅ヴァニッシュメントと、お姉様との愛の絆があれば!」


 確かにあの動きなら、銀の手シルバーハンド如きに負けるわけがない。その気なら、ラミアをも殺れていた。


「任せるわ。合流はもふもふの楽園で!」


「あたしも、もふもふ大好きー!」


 ラミアはフルールに最高の笑顔を贈ると、幻龍ペンドラゴンを前方に構え、超音速で礼拝堂の裏手の壁を突き破る。そこに乗ってきたヘリはなかった。ジョシュアが逃げるのに使ったのだろう。


 そちらにも回り込んで迫っていた銀の手シルバーハンドは無視して、飛び出した勢いのまま林を抜け、裏の塀を跳び越えて駆けていった。


   §


 タコマ市街の高層ビル群を縫うようにして、ヘリが飛んでいた。非常事態宣言はまだ解除されておらず、上空には空軍の無人戦闘機が徘徊している。それを避けての低空飛行だろう。その中で一人の男が苦悶に歪んだ顔で、フロントパネルを叩きながら怨嗟の声を漏らしていた。


「くそっ、くそっ! 何故私が吸血衝動など……私は夢幻の心臓イモータルのはず。二千年間も隠れ潜み、耐え続けてきた。それだけ生きて、最後は吸血鬼ヴァンパイアとして死すのか? 神の子であるこの私が?」


 その男、ジョシュアが叩いたパネルから、黒鶫が囀るような美しい音色の少女の声が響く。


『独り言でもまだ言ってるってことは、本気でそうだと信じ込んでるのね。狂ってるわ、本当』


「黒薔薇!? 馬鹿な……生きているのか? あの状態からどうやって助かった!?」


 聞こえるはずの無いその声に反応して、ジョシュアは恐怖に染まった表情で激しく周囲を見回した。パネルからの声の持ち主は、もちろんどこにも見当たらない。


『逃亡手段を間違えたわね。声はもちろん居場所まで全て筒抜けよ。まさか私が乗ってきたヘリを使うなんて。しかも繁華街の低空を抜ける気とか。頭悪いわね、あなた』


「どこだ!? まさか上か!?」


 ジョシュアはキャノピーから空を見上げた。戦闘機はヘリとは大分異なる進路を取って、かなり遠くに消えた。抜けるような青空には、何も見当たらない。再び美しい囀りが流れ出す。


『お望み通り吸血鬼ヴァンパイアとして処分してあげる。元英国銀の手シルバーハンドのエース、このローズ・アンブロシアが!』


 再び激しく周囲を見回すジョシュア。右手の窓の先を見て、慌ててパネルに手を触れた。ヘリに回避運動を指示しようとしたのだろう。しかし、時すでに遅し。


 近くの高層ビルの外壁を駆け上がってきたラミアは、壁面を蹴って勢いよく飛び込んでいた。


「吼えろ、幻龍ペンドラゴン! 神の敵に裁きの炎を!」


 ラミアの右手から紅白の龍が螺旋を描いて伸びた。それが絡み合って融合し、黄金の光の剣と化す。神の裁きの光は、ヘリごとジョシュアを貫いた。上半身を完全に消失させ、直後に振り下ろした剣は、そのままジョシュアの残骸すべてを、完全に消滅させた。


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