瓶底で見つけた嫉妬の光が闘争心を駆り立てる
“佳作”の二文字を幸運ととらえるか。それともお情けの不運と見なすか。
ひねくれた俺は後者の人間で、手渡された賞状を帰り道で八つ裂きにして空高くに雪を降らした。
きっと佳作にも入らなかった凡人どもは「贅沢者」と非難して親指を逆さに突き刺すのだろう。
俺としては中途半端に才能を評価されるくらいなら、こんな頑張ったで賞なんかいらない気持ちの方が強い。
俺が欲しいのはテッペンの評価だ。
それ以外のレッテルを貼られて渾身の作品を評価されるのはまっぴらごめんだ!
一位以外の席に座ったってただの負け犬専用シートにしかすぎねぇんだ。
「とまぁ君は偉そうに語るけれどね。評価は評価だ。不満の結果さえも自身の武器にできないようじゃ君は三流じゃないかな」
「バネにはしている。それと俺は媚を売る芸術をやる気はねぇ」
「コンテストに出展している以上、君の理屈は通らないよ。言葉を借りるならそうだな……負け犬専用シートにお座りしていたらどうだろう。一位の玉座よりお似合いだよ、犬塚くん」
キャンバスに向き合ったまま、先輩は淀みなく優しい言葉で俺を黒く塗りつぶしていく。
振り向いた先輩の瓶底に俺の顔が反射して映し出される。
苛立ちと悔しさと憎しみを混ぜた、とてもじゃないが強者に相応しい表情は浮かべていなかった。
「本当に贅沢者だと思うよ。君は土俵にも立てなかった僕に、わざわざ自虐しにくるんだもの」
「俺はそんなつもりはない! 第一先輩は競争とか、嫉妬とかしねぇだろ──」
「表現者たるもの、大小なりに評価されたいって思うのが常じゃないのかな」
君の肥大した自惚れと同じように。
ゆっくりと外した眼鏡の先に鈍く光る緑色の瞳の輝きを見つけ、おどろおどろしさに言葉を失う。
「僕は君が破り捨てた佳作の評価さえも欲しいよ。君がいらないっていうなら今からでも蹴落としてその席に座りたいくらいにね。でもそんなことはしない。僕は僕の表現で君を潰して上に行きたいからね」