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散文集(エッセイ的なもの)  作者: 咲田涼人
18/26

第18回 勝手に楽曲考察 その2

『名曲』と呼ばれる楽曲はそれこそ無数に存在する。これに対して『神曲』はと言うと……。そもそも名曲と神曲の違いがよくわからないし、どちらも定義が難しいのだけれど、単純に売れれば名曲なのかというとそうでもない。売れればいいだけならば知名度の高いアーティストの曲はすべて名曲とか神曲になってしまう。小生が思う名曲とは、発売から相当の時間が経過しているにも関わらず、様々な年代に受け入れられ、歌詞に共感し、感動を与える曲こそ名曲なのだと思う。また名曲と言われる楽曲は、何故か恋愛の歌と応援歌が多い。後者の代表曲といえば、SMAPの『世界に一つだけの花』と岡本真夜の『TOMORROW』だろう。今さらだけれど、この散文で記すのは楽曲考察であるから、名曲であるかどうかは個々の判断にお任せしたい。


 さて今回考察するのは、竹内まりやの『駅』だ。この歌は本当に難しい。歌うことがではなく、解釈によって二つの恋愛のカタチを想像させる。『駅』は中森明菜も歌っているが、こちらは本家の筋の通った淡々とした歌い方ではなく、明菜特有の感情を込めた歌い方によって、本家とは違う全く別の物語を想像させるのだ。ここからは小生の勝手な解釈であることを踏まえて読んで頂きたい。

 まず、この歌の解釈を難しくしている原因はある部分の歌詞にあると思う。

 ❝私だけ 愛してたことも❞

この一文が解釈の分かれ目なのだ。『私だけを』なのか『私だけが』なのか……。

 小生は前者だと思う。恋愛における気持ちのスレ違いが如実に浮かび上がってくる。

 ❝懐かしさの一歩手前で込み上げる苦い思い出に❞

 ひょっとしたらこの女性は、彼との交際の中で、ちょっとした気の緩みで他の誰かに心を動かされたのかも知れない。彼には振られてしまったけれど、

 ❝あなたがいなくてもこうして 元気で暮らしていることを さりげなく告げたかったのに❞

 と思ったのだと解釈する。さらには隣の車両にいる俯く彼の姿に『私がそうさせたのかも知れない』という自責の念に駆られているのかも……。だからこそ、『私だけを』愛していた彼の気持ちが今になってわかるのだろう。過去には戻れない、恋愛の非情さが感じ取れる。


 ところが『私だけが』とすると、この話はどこか『不倫』の匂いを漂わせる。中森明菜の感情を込めた歌い方がそう思わせるのかも知れない。

 ❝それぞれに待つ人のもとへ 帰ってゆくのね気づきもせずに❞

 彼には家庭が、そして自分には新しい彼が、そんなふうにも受け取れる。不倫が前提と考えれば、彼との夜はありふれたものではないから、関係を解消した今となっては

 ❝ありふれた夜がやってくる❞

 というのも頷ける気がする。


 夫である山下達郎さんが、中森明菜の歌い方に激怒したというエピソードもあるようだ。それならばやはり『私だけを』と解釈するのが正解なのだろう。楽曲はアーティストが生み出す作品であるから完成されていて当然だし、誤った解釈をされるのを嫌うのも理解できる。真相は竹内まりやに聞くしかないということか。


 この楽曲が名曲なのかどうかは別として小生はいい歌だと思うし、これからも歌い継がれていくのだろうと思う。

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