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散文集(エッセイ的なもの)  作者: 咲田涼人
13/26

第13回 人の真ん中に佇む悪魔みたいなもの

‶タバコの先に火を点す。ゆっくりと立ち上る煙の行く先を眺めながら、あっちでもなくこっちでもなく、ゆらゆらと彷徨う煙に自分の人生を重ね合わせ、『こんなはずじゃなかった』と呟いてみる……。〟


 そんな書き出しで、人生に疲れた一人の男の物語を書いてみようかと思ったのだが、何度か読み返しているうちに、「これって絶対死ぬよなぁ」と思い、物語の続きが浮かばなくなった。

 小生は商業作家ではないので、行き詰まってしまえば放り出してしまえばいいし、こんな風に散文のネタにすることだってできる。しかし、書くことが生活に直結する作家となればそうはいくまい。行き詰まり、書けなくなって、もがき苦しみ、プレッシャーとプライドに押し潰される。作家に自死を選択する人が多いと言われる所以かも知れない。


 巷では『あなして』などと呼ばれるドラマがもてはやされている。セックスレスという夫婦のタブーに切り込んだ作品として注目されているが、なんとも観ていて苦しい。登場人物の心の内がナレーションとして語られるのだけれど、それぞれの気持ちが痛いほど伝わってくるし理解できる。ただ、客観的に見るから理解できるのであって、当事者的立場に立つとそこに辿り着くのは至難の業だろうとも思う。よって誰にも打ち明けられずに一人苦しみ、もがくことでカラ回りしてしまうのだろう。人の心の繊細さが、上手く映像として浮き彫りにされている。


 至極普通の話だが、小生ほどの年齢になれば、セックスレスとかなんとか言う前に、思いとは裏腹にどうにもできない現実というものが立ちはだかる訳だが、長い時間を共に生きていれば良きことも悪しきことも人並みにはある。セックスがお互いの愛情を確かめ合う手段であることを否定はしないが、それだけに執着してしまうとドラマのように悶々とした日常を生きることになってしまうことを忘れてはいけない。あくまでもドラマの話なのだから。

 小生は不倫を肯定も否定もしない。それは個人の理性とか倫理の問題でしかない。小生ごときが何を言ったとしてもする人はするし、しない人はしないものである。不倫などドラマの中だから美しいのであって、現実となれば……。ここから先は言わずもがなである。


 毎週このドラマを楽しみにしている紳士・淑女の皆さん。何を思うかは自由です。ただね「君たちは決して岩ちゃんではないし、奈緒さんでもないのだよ」とだけは、上から目線で言わせてもらおう。

 バスルームの鏡には、ぽっこりと膨らんだお腹と、その下にはかつて活躍した? 貧相な物体が映っている。

 今宵も『ためいき』である。

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