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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第二章 『祓魔師』とカノジョ
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最終話 『祓魔師』と『エクソシスト』

 意識が朦朧とする中、身体がゆらゆらと揺れ動く感覚を覚えた。

 聞き慣れた声が、僕の名前を呼んでいるような気がしたが、返事をする元気も無い。

 相手が誰なのかすら、はっきりとは分からない。

 そんな中で、ふわりとした浮遊感を感じた直後、意識が途切れてしまった。


 ――――――


 次に意識を取り戻した時、最初に感じたのは眩しさだった。

 寝起きでぼやけた目で周囲を確認していると、以前にも見たことのある風景が見えた。


(ここは……確か『第一次』の医務室? 何でまたここに?)


 不思議に思いながらも頭を動かすと、隣のベッドに佐久穂さんが眠っていた。

 掛け布団を抱き枕替わりにしているのか、白い太股に目が行きそうになるが、どうにか堪える。

 表情は、とても幸せそうで、寝言で何かを唱えている。

 もう片方のベッドは、布団が捲られていて空っぽだ。

 おそらくは……と、推測していると、扉が開かれる音と共に、可愛らしい欠伸が聞こえる。

 ヨタヨタと歩く音と共に、僕が横になっているベッドに辿り着くと、布団の中へ潜り込んで来た。


「(ちょ!? シアさん!)」


 慌てて小声で注意するが、全く効果が無い。

 それどころか、カノジョは僕の腕に手を伸ばし、抱き着いてきた。

 寝ぼけているのだろう、甘える様に顔を擦り付けてくる。

 耳元に吐息がかかる程の距離に顔を寄せ、囁くように名前を呼ぶものだから、心臓が爆発しそうなくらい高鳴っているのだが、カノジョは気付いてくれない。


「……アオイぃ~」

「ッ!!」


 嬉しいのだが、今はマズイ。非常に困る。

 膝枕ほどの接触なら経験済みであるが、シアさんとは、全身でゼロ距離を超える程の密着は未体験なのだ。

 このままだと、色々と限界を迎えてしまうのも時間の問題である。

 何とか離れようと試みるが、シアさんの腕力が強くて振り解けない。


「(シアさん! 起きて!)」

「……アオイの匂いがするネー」


 ダメだ。完全に夢の中だ。

 このままでは、シアさんが目を覚ますまでの間、僕は必死に理性と戦う事になる。

 そうだ! イオは? と思い、以前いた足元に視線を向けると、そこはもぬけの殻。

 存在している感覚は残っているのに、傍にいない! どこ行ったのさ!?


「……アオイー」


 名前を呼ばれ、思わずビクっとしてしまう。

 シアさんは、もぞもぞと動きながら僕の胸に頬を当て、気持ち良さそうに眠っているのだけど……。

 カノジョの髪が鼻孔をくすぐり、甘い香りが漂ってくると同時に、内からこみ上げてくるものがある。


「っくしゅん!」


 クシャミを抑えきれず、思わず出してしまった。

 ……起こしてしまっただろうか? いや、起きてもらって構わないのだが、シアさんは、僕の胸の上でスヤスヤと穏やかな呼吸をしながら、安らかに眠り続けている。

 僕は、カノジョの頭を撫でつつ、諦めたかのように溜息を漏らした。

 その時である。隣から視線を感じたのは。


「…………」


 そちらに目を向けてみると、佐久穂さんが僕達を見つめていた。

 先程と姿勢は変わらず、眩い太股を露わにしつつも、その瞳は僕達を捉えているにも関わらず、虚空を見つめている様に感じる。


「お、おはようございます……」

「……」


 挨拶をしてみるものの、返って来る言葉はない。


「あ、えっと……その……」

「……」

「おぉ……」

「……」


 無言のまま見つめられ続けると、段々居た堪れなくなってきた。

 たが、この沈黙を破るきっかけとなる出来事が起きた。

 それは、佐久穂さんの口から漏れた言葉によって、唐突に訪れたのだ。


「……ずるい」


 その言葉を皮切りに、カノジョは勢いよく飛び掛かってきた。


「ぐぇぁっ!?」

「シアだけズルい!! アタシだって……アタシだって! アオイ成分を補給したいんだし!!」

「し、知らんて……首締まってるから……離して……苦しい」

「イヤだ! 絶対に離さないかんね!」

「い、痛いってば……」

「もうちょっとの辛抱だよ! そしたら、たっぷりと補充させてあげるから!」

「何をですか!? 誰か! タスケ……」

「ほぅ? 呼ばれて来てみれば、随分とお楽しみ中ではないかの」

「!?」


 突然、聞こえた声に反応して視線を動かすが、両隣には美少女しかいない。


「ほれ、こっちじゃ、こっち」


 声の主を探すと、頭上に立っている人物を見つけた。

 いや、人物である事は確かなのだが、その見た目は小さく、おかっぱ髪の日本人形そのものだ。

 瞳だけ器用に下へ向けられて、僕達を見つめている。

 それだけに、余りの怖さに身体が硬直してしまい、口を開いたまま閉じる事を忘れてしまう。


「ふっふっふー、ようやく大人しくなったね! それでは早速、いただきま……」

「小娘、わらわをするーするでないぞい」

「へぁ?」


 カノジョも声に驚いたようで、素頓狂な声を出し、キョロキョロと周囲を確認する。

 そして、僕と同じ場所を視界に収めると、大きく口を開け、二人して声を揃えて叫んだ。


『ぎぃやぁあああああああああ!!』


 声の主はケラケラと、夢の住人はスヤスヤと。

 僕達の声が重なり合い、響き渡る。

 それはまるで、本格的な夏の訪れを知らせる蝉の声のように思えた。


 追伸。

 抜き打ちテストの結果は、言うまでもなく。

第二章、これにて完結です。

夏休みの話が、間章になるのか、はたまた第三章が始まるのか。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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