41話
僕はシアさんに、これから行う事を説明し、起こりえる事態についても、説明をした。
カノジョは、納得してくれた様子だったのだが、「でもー」と言ってくる。
「本当に良いの?」
シアさんは、僕に確認を取るように聞いてきたのだ。
カノジョの言い分はこうである。
『祓魔師』の力と『エクソシスト』の力を掛け合わせる。
それは、僕もシアさんも初めての試みだ。上手くいく保証など無い。
「それでも、やってみます」
するとシアさんは、優しく僕の頭を撫で始める。
「アオイそこまで言うなら、きっと上手くいくヨ。もしもの時があっても、ワタクシはアオイを絶対に恨んだりはしないネ! だから安心して欲しいネ!」
「……はい。シアさん、よろしくお願いします」
シアさんから渡された、二丁の銃。
それらは白金の弾薬が装填された状態で、僕の手に収まっている。
僕は、銃に対して力を込める。
すると僕から発せられる力に反応し、二丁の銃は、光り輝く白銀へと変貌を遂げた。
これが、今、僕が持っている力の全てだ。
「シアさん、銃を手にしてみて下さい。恐らく、分かるはずです」
「分かったネ」
カノジョは、リボルバーを握りしめ、片方の手で銃身に触れる。
「温かい……、とても優しい温もりを感じるヨ」
「そうですか。良かった」
シアさんは、目を閉じ、深呼吸をする。
「うん。間違いないネ」
目を開き、彼女は力強く答えた。
その言葉を聞いた瞬間。僕の胸の中に熱いものが込み上げてくる。
「アオイ、ありがとネー。ワタクシの為にここまでしてくれて……、嬉しいヨ」
シアさんは、僕の手をそっと握る。
「僕の大切な人達を守りたいだけです。シアさんも含めて」
「こういう時は、ワタクシの為にって言うべきだヨ? まぁ、そこがまた可愛らしいんだけどネ」
「あははっ、ごめんなさい」
「ルイー! アナタも同じ事をして貰えた経験が、アリマスカー?」
「もちろん、あるよ!」
「その時の気分は、どんな感じだったネー?」
「最高だよ!」
「ベリーグッド! ワタクシも同じ気持ちデス! 行ってくるネ!」
「はいっ!」
両手に銃を握りしめたシアさんは、僕に向かって親指を立てる。
そして、用意した足場を使って、中洲の鴉天狗達の元へと飛び立った。
――――――
「お待たせしたネ。さて、始めましょうカ」
中洲の鴉天狗の目の前に立つと、視線が私に集中したのを確認してから、ゆっくりと息を吐き、集中する。
「……行くヨー!!」
ワタクシは、声を上げて鴉天狗に向けて、左右の銃を発砲。
銃弾は、真っ直ぐに飛び、鴉天狗の頭部に命中……するはずだったのに、直前で何か見えない壁に弾かれてしまった。
「これは……アオイに飛ばした羽根かナ? ……本当に忌々しい」
私は、更に攻撃を続けるべく、引き金を引く。
しかし、先程と同様に、翼の羽根に阻まれてしまう。
「やはり、簡単ではないみたいだネー」
私が放った弾丸は、鴉天狗の手前で止まり、地面へと落ちていく。
「……」
「黙っていても何も始まらないネ。これだけ大人しくしていて、何も無いなんて事はないでショ?」
ワタクシの問いかけに対して、ようやく表情を崩し、ニヤリと笑う。
本能的に恐怖を感じている。
けれど、ここで退くわけにはいかない。
何故ならば、ワタクシの後ろには、大好きな人がいるのだから。
その人が託してくれた力を、ワタクシは信じる。
突如、耳鳴りのような音が響き渡り、思わず顔をしかめる。
それはまるで、頭の中で直接鳴っているような感覚であった。
しかし、それはすぐに止み、瞬きをした瞬間、鴉天狗の数が増え、ワタクシを取り囲むようにして立っていた。
「シアさん! 今向かい……」
「ダメ! 皆さんは身を低くして伏せていて下さい!! 危ないデース!」
アオイが、こちらに向かおうとしているのが見えた為、咄嵯に叫び制止させる。
本来なら彼の行動は正しく、とても嬉しい事なのだけれど、今回ばかりは誰にも邪魔をされたくなかった。
「か弱い乙女を取り囲んで、何もしないつもりデスカー? それならこちらから始めちゃうネー!」
ワタクシは、両手に持った拳銃のトリガーを引き、銃弾を放つ。
両手に持っていた武器を交差させ、そのまま身体を回転させながら放つ。
放たれた銃弾は、弧を描きながら、中洲にいる鴉天狗達に襲いかかった。
「グギャァア!?」
「ギィイイッ」
ワタクシの攻撃を受けた者達は、悲痛な鳴き声を上げ、倒れ込む。
「まだ終わらナイヨ!」
続けて、次の標的に狙いを定め、射撃を行う。
「所詮、作り物の命。ワタクシの敵じゃないネ」
ワタクシの攻撃により、数体の鴉天狗達が倒れる。
残る数は、十数体といったところだろう。
リボルバーの残弾は、一発。ライフルも残り数発だ。
それに気が付いたのか、鴉天狗達が一斉にワタクシを襲い掛かる。
「ふぅー、人気者は辛いネー」
ワタクシは、深く息を吐き出すと、意識を切り替える。
「少しだけ本気にさせてあげるヨ!」
リボルバーを構え、正面から襲い掛かってきた一体の胴体に照準を合わせ、引き金を引く。
これでリボルバーの残弾は、ゼロ。
本来ならこうなる前にリロードをしておきたいのだが、そんな隙を与えてくれるほど、甘くないだろう。
錫杖を持った者が、私の死角から攻撃を仕掛けてきた。
弾切れを起こしたのだから、正しい判断と言える。
だが、残念だったね。
「悪いけど、今のワタクシは、リロードをする必要が無いネ!!」
残弾がゼロになったリボルバーの引き金を引けば、銃声が響き渡る。
手にしているライフルは、薬莢を外へ排出する目的もあるので、この銃特有のレバーアクションを行う必要性がある。
撃つ度にかかるひと手間が、煩わしいと感じる時もあったけれど、今はこの手間と音が、最高に気に入っている。
アオイから借りた力を利用して、ワタクシは、祈りも念じる事もせず、ただ、自分の意思でこの現象を引き起こした。
この銃には、ワタクシとアオイの想いが詰まってる。
「さぁ、ここからが本番ダヨ」
ワタクシは、不敵に笑い、新たな銃を構える。
銃口が火を吹き、相手が地に伏せ、消滅していく音だけが響く。
「アオイから貰った力がある限り、ワタクシは負ける気がしないネ」
銃口から煙が立ち上ぼり、硝煙の匂いが鼻腔を刺激する。
時折、羽根がワタクシ目掛けて飛んでくるのだが、今のワタクシにとって、脅威ではなかった。
相手の攻撃を紙一重で避けつつ、的確に引き金を引いていく。
「ワタクシの大切な人を傷つけようとする輩は、誰であろうと許さない。後ろは、絶対に通させないヨ」
腰を深く落とし、片足を伸ばした状態で、ある一点にライフルの銃口を向け、発砲。
「グギャァァ!!」
空を飛んで逃げようとでもしたのだろうか、ワタクシは容赦無く撃ち、断末魔の叫びと共に、"穢れ"は地面に落下する。
「ワタクシは、まだまだ未熟者デスガ、アオイの為ならば、これくらいの事は出来るのデス!」




