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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第二章 『祓魔師』とカノジョ
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40話

 川沿いの陸地に存在した"穢れ"は、『祓魔師』達の手によって殲滅され、残すは中洲に陣取る鴉天狗のみとなった。

 にも関わらず、中洲の鴉天狗は、僕に羽根を飛ばした以外の攻撃を仕掛けてくる様子が無い。何故だろうか?


「どういうつもりなのかは知らないけれど、こっちとしては好都合だよね。アオイの状態も回復してきたみたいだし!」

「お手数おかけしました」


 佐久穂さんは、こちらへ駆けつけて来た直後、僕の状態を見て単騎突撃しようとした所を、小海さんによって止められていた。


「まったくよ! いきなり走り出すんだもの。焦りましたわ!」

「ごめんなさい。でも……」

「分かってます。佐久穂さんは、立科君の事をとても大切に想っているんですよね」

「それはもう!」


 小海さんは、カノジョの肩に手を置き、優しく語りかけた。


「だからといって、一人で突っ走っちゃダメですよ。自分の事も大切にしてくださいね」

「あい……ごめんなさい」


 佐久穂さんは、素直に謝罪の言葉を口にした。

 その様子を見届けた後、小海さんの目が僕に向けられ、少しばかり身体が強張る。


「立科君、身体の調子は大丈夫かしら?」


 手足を動かし、問題が無いことを確認する。どうやら、しっかりと動くようだ。


「はい。まだ本調子ではありませんけど、なんとか」

「そう。良かったわ」


 小海さんの顔には安堵の色が見える。

 彼女の性格上、僕の事を心配してくれているのは分かっているのだが、先程の佐久穂さんとのやりとりを見た後だと、どうしても緊張してしまう。


「驚異的な回復力だな。これも"澱"を残さない為の防衛機能ってところかな、ご老公」

「おそらくそうだろう。"穢れ"が憑りつけば、それこそ死に至るからな」


 麻績村さんと翁が会話している横では、佐久穂さんが真剣な面持ちをしていた。


「オミー、お願いがあるんだけど」

「ん? 何だい、佐久穂君」

「先に鴉天狗達の浄化を済ませる事って、出来ないかな?」


 佐久穂さんの提案を聞いた麻績村さんは、顎をさすりつつ考える。


「理由は?」

「……おじいちゃんには先に謝っておくね。ごめんなさい。アオイが浄化を行えば、力を取り込む時に、怪我が治ったのを何度も見てきたの」


 佐久穂さんの答えに対し、翁は首を横に振っていた。


「構わん。私も同意見だ。このまま放置をしていたら、アヤツに再びに取り込まれてしまう可能性は、否定出来ぬ。それに……」


 そこまで言うと、僕の方を向いた。


「我らの力と意思を継ぐ者が居るのであれば、託すのも悪くはない。立科君、お願い出来るか?」「はい。分かりました」


 僕は、力強く返事をする。

 彼らを浄化する為、僕達が行動を始めた時、翁がシアさんを呼び、呟く。


「異国の少女よ。彼等に魂の救済を与えてくれた事に礼を言うぞ」

「お気になさらずに。それが『エクソシスト』としての仕事ですからネ」


 翁からの感謝に対して、シアさんは落ち着いた口調で応えると、翁は満足そうな笑みを浮かべた。

 彼は、ゆっくりと僕の元へ歩み寄ると、目の前で立ち止まる。


「よろしく頼む」


 黙したままうなずくと、彼等に手を伸ばし、光の粒子が僕の中へと吸い込まれていく。

 彼等が穏やかな表情をしている様に見えたのは、気のせいでは無いはずだ。


 ――――――


「さて、これで残るはアイツだけだね!!」


 佐久穂さんは、意気揚々と声を上げる。

 中洲の鴉天狗達は、僕達に攻撃する事無く、ただひたすら待機していた。

 まるで、何かを待っているかのように……。


「あの子、何を考えているのかしら? まさか、仲間が来ると思っているとかじゃないでしょうね」


 小海さんは、眉間を寄せながら疑問の声を上げた。

 確かに、このタイミングで攻撃をして来ないという事は、誰かがやって来るのを待ち構えていると考えるのが妥当かもしれない。


「であれば、全員で向うのは得策ではないか。小海君、君はここで待機。私が行こう」

「ハイ! オミムーにお願いネ!」

「今日は女性からの頼まれ事が多い日だな。さて、聞かせて貰おうか、オタリー君」

「ワタクシが向かうヨ!」

「理由は?」


 麻績村さんは、シアさんに問いかけた。

 シアさんは、麻績村さんに向き合う形で、一歩前に出る。


「アイツに一発、ぶちかましたいからネ」

「……なるほど。そういう理由ならば仕方がないな」


 麻績村さんは、苦笑いをしながらも、シアさんの言葉を受け入れた。


「はいはい! アタシも!」

「却下だ。理由は経験不足と、先に願い事を叶えてあげたからだよ。佐久穂君」

「ぶー。ケチ!」


 頬を膨らませながら抗議するも、麻績村さんは取り合わなかった。


「というわけで、オタリー君、頼んだよ。イザという時は、『いのち大事に』だ」

「了解したヨー!」

「立科君、力は使えそうかい?」


 麻績村さんは、心配そうに声をかけてくれる。

 僕は、両手を握ったり開いたりと繰り返しながら、身体の状態を確認した。


「はい。大丈夫です」

「すまないが、中洲へ渡る為に川へ足場を作ってくれないか? 三列ほどな」


 麻績村さんの頼みを聞き入れ、僕は手を前に出し、念じる。

 すると、円状の水面が盛り上がり、徐々に高さを増していった。


「ありがとう。お嬢様を水に濡らさずに済むよ。助かる」

「いえ、これくらいはお安い御用ですよ」

「流石はアオイだネー! それじゃちょっと行って……」

「ストップ! シアさん!」


 僕は、慌ててシアさんを止めに入る。


「どうしたの、アオイ? ワタクシから離れるのは嫌なのかナー? そんな可愛い事を言われたら、オネーサン困っちゃうヨー!」


 後ろから抗議の声が聞こえたが、小海さんが口を塞いでくれたのだろうか、すぐに静かになった。


「離れ離れになる事は、絶対に嫌です。だからこそ向かう前に、僕の力をシアさんに預けたいと思います」

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