表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第二章 『祓魔師』とカノジョ
65/77

31話

 老人は、天井を仰ぎながら溜息を漏らすと、こちらを向いた。


「改めて名乗らせて貰う、私の名は鴉天狗の翁。この世に現れてから長い時を経ている」

「鴉天狗の翁さんですね。それで、どうして僕の前に現れたのでしょうか?」

「そう急かすでない。それにその名で呼ぶのも面倒であろう。気軽に呼んで構わん」

「えっと……では、翁さんで。こちらなら誰かに聞かれても誤魔化せそうなので」

「賢明だ。さて、君に用件を伝える前に、確認したい事がある」

「何でしょう?」


 僕は、緊張しながらも問い掛けると、翁さんは少しだけ間を置いてから口を開く。


「君達が、"穢れ"と呼ぶものについてだ」

「"穢れ"ですか?」

「ああ、そうだ。一部の人間達は、"穢れ"と対峙する事によって力を得ることが出来る。しかし、それは同時に危険を伴う行為でもある」

「どういうことですか?」

「君達が"祓い"を行うと、"穢れ"が浄化される。その際に発生する"穢れ"の力は、君達の中に蓄積されていく。その力は君達自身を強化すると共に、"穢れ"に対して耐性を高めてしまうのだ」

「耐性が高まる事に、何か問題が発生すると……?」


 僕が尋ねると、老人は静かに首を縦に振る。


「そうだ。良い方向にばかり転ぶとは限らない。浄化、蓄積、強化。ここまでは、"穢れ"の数を減らす為に必要であり、むしろ歓迎すべき事と言えるのだが、問題は、耐性だ」


 老人は、そこで一旦言葉を切ると、大きく息を吐き出してから再び口を開いた。


「"穢れ"は、耐性を生み出した際に、ほんの僅かな"(おり)"を生み出す。それは、周到に己の存在をひた隠しにし、機会を窺ってるのだよ」

「……まさか、力を持つ『祓魔師』が、"穢れ"そのものになる可能性があるというのですか?」

「ああ、そのとおりだ。君達が先日、対峙した鬼と出会っただろう?」

「はい」

「あれは、本来であれば人の形を成すことはない。君達の目には、人間の形に見えていたかもしれないが、実際は違う」

「じゃあ、あの時の、あの鬼は?」

「おそらく、元『祓魔師』だ。君達の遠い先祖に当たるだろう。血の繋がりは別としてな」


 僕が出会ったあの鬼は、元は人間だったというのか? 信じられない話だけど、嘘をついているようにも見えない。

 老人は、手元にあったコーヒーを一飲みすると、空になったカップを机の上に置く。


「立科君、君は今、とても驚いていることだと思う。だが、これは事実だ」

「……はい」

「そして私は、君に頼みたいことがある。君にしか出来ないことだ」


 彼は、真剣な眼差しで僕を見つめてくる。その瞳の奥には、強い意志を感じる。

 まるで、長年探し求めてきた宝物を見つけたような輝きがあった。


「僕は、何をすればいいのでしょう?」

「簡単なことだ。君にやって欲しいことは一つだけだ」


 老人は、ゆっくりと深呼吸をする。僕はその様子を黙ったまま見守る。


「私の同族を、浄化して欲しい」


 そう告げると、老人は頭を下げた。


「頭を、上げてください!」

「無理な願いである事は分かっている。しかし、どうか頼む。このままでは、いずれあの者達は、自我を失い暴走してしまう」

「そんなに危険な状態なんですか?」


 彼はゆっくりと頭を上げ、小さく首肯する。


「比較的、力の弱い者達は、既に"穢れ"に憑り込まれてしまっている」

「それって、かなりマズイ状況じゃないですか!?」

「ああ、我々だけで対処出来るのならば良かったのだが、それも叶わず。ただ、時間だけが過ぎていくだけかと嘆いていた矢先に、君が現れた」

「…………」

「君が現れなければ、我々は何も出来ずにいただろう。今もこうして、君の力を頼ることしか出来ぬ……引き受けてはくれぬか?」


 老人は、真っ直ぐに僕を見る。

 僕は、どう答えたらいいのだろうか? 何が出来るのだろう? そもそも、この話はどこまで信用していいのだろう? 分からない。

 だが、僕は……この人が言っていることを信じることに決めた。


「……分かりました。僕の仲間達にも、協力を仰いでも良いのであれば、やりましょう」

「本当かね!? ありがとう……本当に、感謝している」


 老人は、心の底から嬉しそうな表情を浮かべると、何度も僕に礼を言う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ