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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第二章 『祓魔師』とカノジョ
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19話

 報告の為、美鈴さんへ今回の"穢れ"に関して報告するべく『第一次(だいいちじ)|捜査機関(そうさきかん)祓魔課(ふつまか)』へ訪れた僕達。

 事の顛末を美鈴さんに伝えると、彼女は腕を組み、背もたれに身体を預けた。


「うーむ、まさか“穢れ”が人の言葉を喋るようになっていたとはねぇ」

「はい。こちらの言葉を理解しているかまでは、不明ですが」

「かなり物騒な事を言ってたよね? 消えろーとか、アタシに何をしたーとか」

「そうですね。憎悪に満ち溢れた声色でした。」

「……二人共、報告ありがとう。気になる点がいくつも残された状態だ、直ちに第二部隊と第三部隊から人を派遣させるよ」

「了解しました」

「あのー、質問してもいい?」


 佐久穂さんが恐る恐る手を上げる。


「どうしたのかな、瑠衣ちゃん?」

「“穢れ”が将来的に、人間の言葉を話せるようになる事ってあるのかな?」

「それは無いとは言えない。その点については、アレクシアちゃんの方が詳しいかな」

「一介のシスターにすぎないワタクシガ、外部に伝えてもよい情報なのカ、判断しかねマス。ガ、一つダケ」


 オタリーさんは、真っ直ぐな瞳で見つめると、ゆっくりと語り始めた。


「ワタシも詳しくは分かりませんガ、少なくとも、"穢れ"ハ、徐々に進化を始め、知能も向上していくようデス」


「つまり、人間とコミュニケーションが取れるレベルにまで達してしまう可能性があると?」

「可能性はありますネ。ただ、それはあくまで仮説ですノデ」

「……その情報、イギリス本部の許可もなく、私達に伝えてしまってもよかったのかい?」

「現場デ戦闘を行う者ノ、個人的な感想デスカラ」


 微笑みながら、美鈴さんの問いに答えるオタリーさん。

 人差し指を口元に当てながら、「秘密デスヨ?」と、可愛らしくウインクをしている。


「それだけでも十分だよ。ありがとう、アレクシアちゃん。これ以上は聞かないでおこう。ところで、君達はこの後どうするつもりだい?」

「報告が済み次第、帰宅しようかと。終電も近いですし」

「そうか。なら、ここで解散といこう。今日は本当にご苦労様。ゆっくり休んでくれ」

『はい!』

「シアちゃんは、こちらの施設に部屋を用意させてもらったよ。慣れない場所で申し訳ないが、少しでも身体を休ませてくれ」

「感謝いたしマス。ミスズ」

「さて、私は仕事に戻るとするよ。何かあったら、いつでも連絡してくれて構わない。遠慮はいらないからね」

「分かりました。それでは失礼します」

「シア~また直ぐ会いに来るからね~」

「ハイ、待ってますネ」

「じゃあね、美鈴叔母さんも、バイバ~イ!」


 こうして、僕達は、『祓魔師』として初めての任務を無事に終えることが出来た。

 ただ……本人が、オタリーさんが居た事で、美鈴さんに伝えられていない事がある。

 連絡を入れるべきだろうか。少しばかり罪悪感が、僕を襲う。

 オタリーさんの呟いた、『神を信じてはいない』という言葉。

 ……それを聞いていた、佐久穂さんにも意見を聞いてみようか。

 そんな思いが、僕の頭を過った。


「瑠衣さんは、神様を信じていますか?」

「え? 急にどったの? もしかして、シアの言葉を聞いたから?」

「はい。どうしても頭から離れなくて」

「んー、そうだねぇ……。まぁ、いいんじゃないの? アタシは前にも言ったけど、そういうのは苦手なんだけどさ。シアが信じる信じないとかの前に、そういうものだとみんなが認識して生きてるっていうのかなぁ?」

「やはり、オタリーさんの話だと分かりますか」

「イギリスの神様事情はよく知らないけれど、この国には八百万の神様がいるんでしょ? それに、アタシは神様を信じてるってわけじゃないけど、別に悪い存在でもないと思うんだよね」

「神様が、ですか?」

「うん。神様が、ね」


 佐久穂さんは、優しい笑みを浮かべながら、そう言い放った。


「だからアタシは、シアが神様を信じていても、信じていなくても、気にしない。だってもう友達だしね!」


 佐久穂さんの笑顔は眩しく、いつだって僕を照らしてくれる。

 僕達が、初めて出会った時も、カノジョはこんな風に笑ってくれたっけ。


「……結局、概念に囚われず、自分なりに考えればいいというわけですね」

「そゆこと! 難しく考える必要なんて無いんだよ!シアの事だけを考えてあげればさ!」

「そうですね。ありがとうございます」

「いえいえ! ちなみにアタシはアオイの事ばっかり考えています! なんちゃって! きゃー! ホントの事だけど恥ずかしい!」

「ふふ、僕も瑠衣の事を考える時間が増えました」

「ほぇ!?」

「……あれ? 変でしたか?」

「へ、変じゃないけどぉ……。不意打ちはずるいよぅ」

「あはは、すみません」

「あーあ、顔真っ赤になってるだろうなー。責任取ってもらわないとなー」

「責任、ですか? 僕に出来る事であれば、何でもやりますよ」

「ほんとにぃ? なんでも?」

「はい。僕に出来る事ならば」

「じゃあ、これから毎日、おはようとおやすみの電話をしてもらいたいなぁ。一緒にご飯食べたり、手を繋いだり、それから……」

「あのー似たような事を、ほぼ毎日行っている記憶があるのですが……」


 僕の返答に、カノジョは抗議を含めた深いため息をつく。


「はぁ、分かってた。分かってたよー。どうせそう言うと思ってたよーだ」

「瑠依?」

「なーにー? 今ちょっとブーイングで忙しいから後にして欲しいんですけどー?」

「あと少しで学園が夏休みに入ります。『祓魔師』の仕事を頑張って、どこかでお休みを頂きましょう。そうしたら、一緒に出掛けてみませんか?」

「……へ?」

「瑠依の行きたがっていた、動物園や水族館。他にも色々な場所を回ってみたいです」

「……う、うん」

「どうかしましたか?」

「い、いや、なんか、その……。デートのお誘いって感じがしてさ……」

「そうですよ。僕と瑠衣の初めての夏です。思い出を作りましょう」

「……やばい。嬉しすぎて泣きそう」

「僕もです。楽しみにしておきます」

「絶対! 絶対だぞ! 絶対に行こうね! 行けなくなったら凄い事が起きるんだかんね!」

「もちろん」

「……やった!」


 体を丸め、小さく呟きながらガッツポーズをしている佐久穂さん。

 カノジョの、この姿が見れただけでも、勇気を出したかいがあった。

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