表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第二章 『祓魔師』とカノジョ
51/77

17話

「なっ!?」

「アアアァァァッ!」


 突然の出来事に、僕と佐久穂さんは戸惑う。それは、イオも同じだったらしく、動きを止めていた。

 いままで、"穢れ"が言葉を話す事は無かった筈だ。


「"穢れ"が……!」

「アオイ! イオ! 気を付けて! 様子がおかしいよ!」


 すると、突如、"穢れ"は、天に吠えたかと思うと、僕達の方に視線を向けてくる。

 明らかに敵意のある瞳で睨まれているのを感じ取った僕達は、咄嵯に歯を食いしばり、お腹へ力を込め、耐える。


「アオイ! いま喋ったよね!? アイツ!」

「はい! 間違いありません! でも、どうして急に……」


 僕達が話している間に、"穢れ"は、ゆっくりと立ち上がる。

 先程までの苦しみは消え失せ、腕に刺さっていた薙刀を抜き、放り投げ、今は怒りの感情が見て取れる。


「色々と考えたい事が山積みなんだけど、どうやらそうも言ってられないみたいだよ、瑠依」

「そうだね。まずは、こいつをどうにかしないと」

「先程の感じですと、"穢れ"は、僕達の話を理解出来る可能性があります」

「アタシ達の言葉を理解してるってこと? そんなのあり得るの?」

「正直、分かりません。ただ、発した言葉は、憎悪に満ちていました。少なくとも、今は自分達の身を護る事を最優先に考えた方が良いでしょう」

「了解! 一定距離を保ちながら最大限の警戒。睨み合い勝負ってとこかな?」

「そうですね。ある程度の体力が身に付いたとはいえ、持久戦は正直、苦手なのですが……」

「大丈夫! アタシがフォローしてあげるから!」


 佐久穂さんの頼もしい言葉に励まされながらも、僕はゆっくりと佐久穂さんの隣に立つ。

 ただでさえ、命懸けの戦いなのに、カノジョが隣で戦ってくれるという安心感は、計り知れない。


「アオイ! 来るよ!」

「はいっ!」


 "穢れ"が、攻撃を仕掛けて来ようとしているのを感じた僕達は、お互いに声を掛け合いながら、左右に別れ、回避行動を取る。

 直後、先程まで僕と佐久穂さんがいた場所には、拳が振り下ろされていた。


「さっきより速くなってるじゃん! どうすんの、アオイ!」

「瑠衣! 僕が合図をしたタイミングで、もう一度、力を貸してくれませんか!」

「オッケー! 今度は何をするつもりなの!?」

「瑠衣の薙刀を回収して、僕の力を込めてみます!」

「分かった! それならアタシに任せなさい!」

「お願いします!」


 僕は、イオに目配せをし、カノジョに対して協力を仰ぐ。

 佐久穂さんは、"穢れ"の動きに翻弄されながらも、回避に集中し続けてくれている。

 イオも、佐久穂さんのサポートに回ろうと、駆け出す。


「イオ! 瑠衣の負担を軽くしてあげて!」

「ガウ!」


 二人が作ってくれた時間に、僕は薙刀を回収。そして、力を注ぎ込む。

 薙刀の輝きは増していくが、やはりというべきなのか、僕が使用している木刀とは、感覚が違う。

 少なくとも、木刀ほど持続力は無さそうだが、重量も含めれば、威力は保証出来る。


「アオイー! 準備出来たー!?」

「出来ました! 今そちらに向かいます!」


 佐久穂さんの声が聞こえたと同時に、僕は薙刀を構え、一気に距離を詰めていく。

 片腕を無くした"穢れ"は、僕が接近してくる事に気づくと、残った腕でこちらへ攻撃を繰り出してきた。


「残念、本命はいうまでもなく!」

「アタシだよ!!」


 僕は、迫りくる攻撃を避け、すれ違いざまに薙刀をカノジョに託すと、佐久穂さんはそのまま"穢れ"に向かって走る。

 白銀に輝く薙刀を横なぎにし、"穢れ"の胴体に一閃を入れる佐久穂さん。

 それは、僕に対して振りかざした腕まで届き、半分程の斬れ込みを負わせる。

 そこへ、黒い影が飛んでくる。イオが歯を剥き出しにして腕に噛み付き、引き千切る。


「アアアァァ!!」


 "穢れ"の悲鳴が響き渡る。

 両腕を落とされ、胴体に一筋の傷跡を残した"穢れ"は、両膝をついた。


「瑠衣! 大丈夫ですか!?」

「問題ナシ! ただ、今のでまた薙刀がぁ……!」


 佐久穂さんの持っていた薙刀は、"穢れ"の胴体の硬さと、僕の力に耐えきれなかったのか、刃の部分が完全に折れてしまっていた。

 しかし、それでも、"穢れ"の身体には大きなダメージを与えており、苦しんでいる様子だが、姿形はまだ保ったままだ。


「ァァァ……ァァ……」

「……アタシ達だけで、なんとかなったって事だよね?」

「ええ。ですが、正直……」


 この"穢れ"は、他の"穢れ"とは違い、僕達にも理解出来る言葉を発した。

 それだけで知性がある決めつけるのは危険だが……。


「瑠衣、お願いが……」

「話しかけてみる? あの"穢れ"に」

「はい。最終的は、浄化をしなければなりませんから。その前に一言だけ」

「りょ! 念の為、もっかい木刀を借りてもいい? 後悔する様な事だけは避けたいから」

「僕もその様な事になるのだけは、ゴメンです。判断は瑠衣に任せます」

「任された!」


 僕は、ゆっくりと"穢れ"に近付いていく。

 以前出会った、動物の頭をした"穢れ"に向けた言葉を、再び唱える様に。


「貴方は何者ですか?」

「アァ……アァァ……アァァ……! コロスコロス……! コロサレタ……!」

「……!?」

「アノヒトガ……ワタシヲ……アタシヲ……」


 "穢れ"は、僕の質問に答えようとはせず、怨恨の籠った声で呟く。

 佐久穂さんとイオは、いつでも攻撃が出来る様、身構えている状態だ。


「アオイ、残念だけど、イオの様には……」

「はい。僕にしか出来ない事をやりましょう」

「そうだね。それが一番良いかも。あ、でも、無理しないでね。危なくなったらすぐに逃げて」

「ありがとうございます」


 僕は、"穢れ"に近づき、胴体に手をかざす。

 次第に、"穢れ"は光の粒子となり、僕の中へと吸い込まれていく。

 それで終わるはずだった。


「オマエハダレダ! アタシニ、ナニガオキタ! ケサレルノカ! アタシハ、ナニカシタノカ! キエロ! キエロォ!! キエロォォォ!!!」


 突如、"穢れ"の口から発せられる言葉は、どれも理解する事が出来ず、ただただ混乱し、恐怖を感じるだけだった。

 しかし、"穢れ"から発せられた言葉は、どこかで聞いた事がある気がした。


『―――ちゃん』


 誰だっただろう。とても大切な人だと思うのだが、思い出せない。


「アオイ! 下がって!!」


 佐久穂さんの声に、ハッとする。気が付くと、"穢れ"の顔が目の前にあった。

 マズイ!! せめてと思い、腕で頭を護ろうとしたその時、"穢れ"の頭が横にブレた。

 遅れるようにして、乾いた音が、周りに響いた。


「油断大敵デスヨ、ミスター・タテシナ」


 声の主に視線を向けると、そこには、修道服に身を包んだ女性の姿が、銃を構えていた。

 あの人は……美鈴さんから写真を見せて頂いた、アレクシア・オタリーさんの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ