16話
僕は、佐久穂さんと合図を取った後、再び"穢れ"に攻撃を仕掛けた。
カノジョが、"穢れ"の注意を引いている間に、僕は死角に入り込む。
「そこだっ!」
掛け声と共に、再び僕は、"穢れ"に対して一撃を与える。
怯んだか!? 僕がそう思うよりも先に、佐久穂さんが"穢れ"の顔面を切りつける。
薙刀の刃が、"穢れ"の特徴的な赤い目を傷つけ、そこから黒い霧が噴き出す。
「流石です! 瑠衣!」
「にしし! アオイもナイス! これでどうだ!?」
「グオォォォァァァッ!」
先程までとは打って変わり、苦しそうな表情を浮かべ始める"穢れ"は、距離間隔を失ったのか、その場から動かずに、暴れている。
その隙に、僕は佐久穂さんの所まで移動し、二人で背中合わせに構える。
「アオイ。こんな時なんだけどさ……」
「どうしましたか? 瑠衣」
「なんかこの体勢ってアレっぽくてカッコイイよね?」
「アレってなんですか? 瑠衣」
「共闘してる的な? そんな感じ!」
「なるほど。でしたら僕達の前にいるイオも含めてあげないと、拗ねてますよ」
「あはは! 確かにそうだね。イオ~」
「ガウアッ」
呼吸を落ち着かせると共に、佐久穂さんの少しばかり呑気な言葉に救われる。
恐怖や不安といった感情は、和らぎつつあり、冷静に考える余裕が生まれていた。
「このまま追撃をするべきか、援軍が到着するまで時間を稼ぐか、迷うところですね」
「アイツの目って、回復すると思う? アオイ」
「可能性は高いかと。先程よりも落ち着いてきた様ですし、そう考えるのが妥当かと。どういった原理で再生をしているのかは分かりませんが」
「参ったねぇ。それだと、増援が来るのを待った方が良いかなぁ。正直、ちょっとキツイかもしんない」
「僕も同じ考えです。"穢れ"自身が作り出した結界に、救われる様な状況なのが、悔しいところですが」
「まっ! アタシ達以外に、被害者が出ないと思えば! ね?」
「ですね。前向きに捉えましょう、瑠衣」
佐久穂さんと会話をしながら、僕は"穢れ"の動きを観察する。
相手は、目の治療を終えたのか、睨みつける様に、こちらの様子を窺っている。
「時間を稼ぐにしても、ある程度、気を引き付けておかないと、何をするか分かんないよね?」
「そうですね……なら一撃離脱で仕掛けてみましょう。瑠衣のタイミングでお願いします。僕もサポートに回りますので」
「オッケー。んじゃ、第二ラウンド! 行っくよー!」
カノジョの言葉を聞き、僕は、いつでも動けるように身構える。
佐久穂さんは、深呼吸をした後、一歩前に出る。
「はあああっ!!」
気合の入った声を出しながら、カノジョは薙刀を振り下ろす。
それを防ごうと、"穢れ"は腕を交差させるが、勢いよく振り抜かれた薙刀の刃は、相手の腕に傷を付ける。
振り払おうとする"穢れ"に対し、薙刀から手を離し、間髪入れず腹部に蹴りを放つ佐久穂さん。
身体能力に関しては、カノジョに勝てる未来が見えない。
「奇襲ばかりですみませんね!」
佐久穂さんの一撃により、怯んでいる"穢れ"の背後から、僕が力を込めた木刀で切りかかる。
足元からは、イオが爪で攻撃を加える。
「グオオォオオッ」
「効いてる! けど、あと一押し足んない気がする! アオイ! 何か良い案ある!?」
「一つだけ! 直接、"穢れ"に触れて、力を注ぎこめば、もしかしたら!」
「おっけー! そっちは任せた!」
「はい! 瑠衣! 薙刀の代わりに僕の木刀を!」
僕は、佐久穂さんに向けて、手にしていた木刀を放り投げる。
カノジョは難なく受け取り、力強く握りしめた木刀は、僕の手から離れていても、白銀に輝いている。
「アオイが持っていなくても大丈夫なんだ! むふふ! なんかアタシまで力が沸いてくる感覚!」
「僕も初めて知りましたよ! 念の為、輝きが薄れてきたら、無理な使用は控えて下さい!」
「りょーかい! とーみセンセーに散々しごかれたアタシにかかれば、木刀だろうと問題ナシ!」
「イオ! ちょっと無理するけど、手伝って!」
「ガウッ!」
"穢れ"から放たれる一撃は、地面をえぐる程の威力を持っている。
相手はそれを利用し、飛び散る破片を武器として使用してくるが、土の壁を出現させる事によって、攻撃を防ぐ。
防御壁を利用しつつ、僕は再び攻撃に転じる。
「はああっ!」
佐久穂さんは、"穢れ"の攻撃に対して、臆する事無く突っ込んでいく。
僕は、カノジョを信じて、イオと共に"穢れ"に接近する。
左右からの同時攻撃。どちらに仕掛けてくるのか! 相手は、佐久穂さんに狙いを定め、腕を伸ばし始めた。
僕は、佐久穂さんに向かって、叫ぶ。
「瑠衣! 避けて!!」
僕の言葉を耳にした佐久穂さんは、一瞬で身体を回転させると、伸ばされた"穢れ"の腕を、避けると同時に回転の勢いのまま、切り裂く。
舞い上がる、"穢れ"の腕。その瞬間を逃さず、僕は、"穢れ"の胴体に手を当て、力を注ぎこむ。
「ガアアアァァァァァ!!」
叫びながら、僕を弾き飛ばそうとする"穢れ"。イオが妨害をしてくれたが、僅かに相手の攻撃が僕に当り、吹き飛ばされる。
「アオイ!?」
「な、なんとか大丈夫です! それよりも!」
腕を吹き飛ばされ、力を無理矢理注がれた"穢れ"は、片膝をつき、苦しそうにしている。
次の瞬間、僕達は驚愕する事になる。
「グガガガァァァ!! グルシイ!! ニクイ!! スベテガ!!」
目の前にいる"穢れ"が、言葉を発したのだ。
ワクチン接種、副作用でちょっと辛い
明日の朝8時の投稿予約は出来ましたが、19時に投稿が無かったら回復に努めます




