15話
"穢れ"と遭遇した際の連絡をタップで済ませ、目的地に到着すると、そこは既に人気のない空間となっていた。
周囲を見渡せば、凹んだ地面と、倒れた車。
そんな場所で佇むのは、全身が黒に染まり、所々に赤が混ざっている、"穢れ"。
外見的特徴だけを見れば、鬼と呼ばれる存在の様にも見え、禍々しい力を放っており、"穢れ"が発するプレッシャーに、思わず息を呑んでしまう。
「(アオイ! どうみてもアレは、ヤバくない!? 初見なんとかってヤツだよね!?)」
「(そうですね。明らかに普通ではありません。今まで遭遇したどの個体よりも強力です。それに何というか……強い憎しみを感じるんです)」
「(うん……そうだね。アイツの眼からは、殺意がビンビン伝わってくるもん……)」
「(瑠衣。これから戦闘になります。ですが、決して油断はしないで下さい。撤退も一つの手ですから)」
「(分かった。絶対に無理はしない。……で、作戦は?)」
「(僕が囮となり、注意を引き付けて動きを止めます。その隙にイオと共に攻撃をお願いします。ただし、"穢れ"が反撃してくる可能性もありますので、その点はご留意を)」
「(オッケー! 任せて!)」
「(それでは、行きましょうか。信じていますよ、僕のカノジョさん)」
「(っ! アオイのバカ! 不意打ちはズルい! キュンってしちゃうじゃん! 後で責任取ってもらうかんね! 行くよ、イオ!)」
車の間を縫う様に駆け抜けていくカノジョとイオ。
その姿を見送った後、僕は、"穢れ"に対して有効な初手を考える。
「(遠距離から攻撃が出来る方法……土の壁を応用すれば……いけるか?)」
佐久穂さん達の邪魔にならない位置でかつ、相手に不意打ちの一撃を作り、意識を逸らす。
そうする事によって、カノジョとイオの攻撃が命中する確率が上がるだろう。
僕は、地面に手を置き、イメージを固めていく。
「よし……いくぞ!」
力を込め、"穢れ"の目の前に、土柱を生み出す。
勢いよく現れた土柱は、"穢れ"の顎に直撃するのだが、まるで蚊に刺されたかのような仕草を見せるだけで、特に変化は見られない。
「見た目通りって感じだ。効いてなさそう。どちらにせよ、前に出なきゃいけないんだから、やるしかないか」
一呼吸入れた後、僕は意を決し、"穢れ"の前に現れる。
こちらに気が付いた、"穢れ"は、口を大きく開けると、威圧感たっぷりの雄叫びを上げた。
「ウガアアアァァァッ!」
ビリビリとした衝撃が、僕の身体を襲う。だが、事前に心の準備をしていた事もあり、耐える事が出来た。
ここで怯んでしまえば、佐久穂さん達を更に危険な目に合わせてしまう事になる。
「こっちだ!」
敢えて声を出し、相手を挑発しながら、僕と"穢れ"との距離が詰められてゆく。
「グルルルルゥ」
相手は、僕を標的として認識してくれたのか、視線を外さずに、ゆっくりと近付いてくる。
タイミングを見計らい、佐久穂さんへ合図を出すと、車の陰から飛び出してきたカノジョは、大きく跳躍をして、"穢れ"の頭部を斬りつける。
それと同時に、イオが爪を光らせながら、胸元に一撃を加えた。
「当たった! でも手応えがない!!」
「ガウッ!」
「こちらからも仕掛けます! すみませんが!」
「任せといて! イオ、援護よろしくね!」
「ガウアッ」
僕と佐久穂さんは、互いに声を掛け合い、連携していく。
カノジョが、薙刀を振るう事で、"穢れ"の意識を自分に向けている。その間に、僕が後ろへと回り込み、奇襲を仕掛ける。
力を注いだ木刀は、白銀に光り輝き、振り下ろされると同時に、斬撃となって襲い掛かる。
「グオォオオオッ!」
「手応えはアリ!! 瑠衣! 一旦下がってください!」
「分かった! イオ! 援護ありがと!」
「ガウ!」
僕達は、"穢れ"と距離を取り、相手の出方を伺う。
"穢れ"のダメージを与える事に成功したが、やはり、あれだけでは決定打には至らない。
「硬い……それに……予想以上に動きが速い……」
「あれは厄介ですね。攻撃が当たっても、あまりダメージを与えられていないみたいです」
「アタシ達じゃ火力不足ってこと?」
「その可能性は捨てきれません。確か、その場合は……」
「援軍要請だね! いまやっておいたよ!」
「ありがとうございます。あとは、どうやって時間を稼ぐかです」
「そこはほら、アタシ達のチームワークでどうにかするしか無いでしょ」
「瑠衣……。そうですね。僕達なら出来ます」
「そうだよ! アタシ達なら出来る! だってアタシ達は……」
『祓魔師だから!!』




