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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第二章 『祓魔師』とカノジョ
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14話

 僕と佐久穂さんは、予定通りショッピングモールへとやってきた。

 家族連れにカップル、友達同士に部活帰りの学生など、様々な人達が行き交っている。


「凄い人の数だね」

「だね。離れない様にしないと」


 僕は、カノジョの手を優しく握ると、そのまま指を絡めていく。


「ふふっ、ありがとう」

「どういたしまして。僕がこうしたかっただけなので、気にしないでください」

「もう、アオイってば! 正直に言われるとアタシだって照れちゃうよ! ほら、行こ?」

「はい。じゃあ、まずは……」


 センサーを設置する場所を確認すると、僕達は歩き始める。

 一つ目は、進行方向の先にある建物から、少し離れたところにある花壇。

 二つ目は、モールの中央付近にあるベンチの下。

 三つ目は、駐車場から少し離れた場所に設置してある、自動販売機の裏。


「結構な数があるんだね」

「そうだね。今の季節だと、三つ目を設置した辺りで、夕暮れ時になり」

宵の明星(よいのみょうじょう)だっけ? "穢れ"がもっとも発生しやすい時間帯って」

「そうです。だから、最後のセンサーを設置する前に、イオを呼びましょう」

「オッケー!」


 僕と佐久穂さんは、人混みを避けながら、目的の場所へと進んでいく。


「花壇、みっけ! これでひとーつ!」


 カノジョに杭を手渡し、僕は周囲を警戒する。


「瑠依、お願いします」

「りょーかい! いってきまーす」


 佐久穂さんが、植えられている花々を傷つけない様に掻き分けて進み、杭を打ち付けていく。


「終わったよー。次はベンチの下だね」

「分かりました。それでは、早速向かい……その前に」


 僕は、佐久穂さんに視線を向けると、カノジョは不思議そうな顔をしながら、首を傾げる。


「どうしたの?」

「よければコレを使って下さい。スカートの裾に花粉が付いていますから」


 僕は、カノジョにハンカチを差し出す。


「ありがと! 気が利くねぇ」

「いえ、これくらいは」

「それじゃあ、お言葉に甘えて」


 佐久穂さんは、差し出したハンカチを手に取ると、それでスカートについてしまっていた花粉を取り除いていく。


「はい、綺麗になった! 洗って返すね!」

「あはは、そこまでしなくてもいいですよ」

「ダーメ! こういうのはキチンとしなきゃ!」

「そういうものですか」

「そーいうものです! さっ、次行こ!」


 僕達は、中央付近の広場を目指し、歩き始めた。

 到着した先は、周囲には多くの木々が生い茂っており、木陰になっているため、暑さも和らぎ、心地良い風が流れてくる。


「気持ちいい風ですね、今度はゆっくりと出来る時に、訪れたいです」

「だねー。あっ、見てみて! こんなところに猫ちゃんが居るよ!」


 佐久穂さんは、しゃがみ込み、子猫に顔を近づける。


「んにゃ~」

「よしよ~し」


 カノジョは、優しい手つきで撫でていく。

 すると、子猫は目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らした。


「可愛いね~」

「そうですね」

「この子は、何処から来たんだろう? 首輪が付いてるから、地域猫かな?」

「多分そうでしょうね。毛並みも良いみたいだし、人に可愛がられているんでしょう」

「うん! そうに違いないね! ……あっ、逃げちゃった」


 佐久穂さんは残念そうに呟くと、立ち上がった。


「さて、こちらの設置は完了しました。次の場所に向かいましょうか」

「うん。行こう!」


 僕達は、最後のセンサーを設置しに向かった。


 ――――――


 最後のポイントは、駐車場。

 センサーを設置する前に、片隅へ移動し、イオを呼び出す。


「イオ、いらっしゃい」


 漆黒の狼が姿を現すと、僕は屈み込んで挨拶をする。


「窮屈かもしれないけど、しばらくの間、首輪を付けるね。そうしないと通報されかねないから」

「ガウッ」

「ありがとう」


 僕が、イオの首元に用意してきた赤い首輪を取り付けると、彼女は気合を入れるかの様に身体を震わせる。


「これで準備は完了。それじゃ行こうか、瑠衣」

「うん! 最後の一つに向けて、しゅっぱーつ!」

「ガウウッ」


 僕達とイオは、目的の場所へ歩いていく。

 田舎特有とでも言うべきか、駐車場は、ショッピングモールと同じか、同程度の広さがある。

 そのため、駐車している車の数も多く、また、歩行者の姿も多い。

 僕達が歩いている歩道には、買い物袋を持った主婦や、楽しげに会話をしている学生達が多く見受けられた。


「……他の人から見たら、アタシ達ってどんな風に見えてるんだろ?」

「恋人同士とかでしょうか? もしくは仲良く犬の散歩をしている兄妹?」

「ふっふっふー。不肖ながら、この佐久穂瑠衣! お仕事中に、そのような飛び跳ねて嬉しくなる言葉を頂戴しても、平常心を保つ事が出来ます! 本番に向けて沢山練習を積み重ねてきたので!」

「……練習? ちょっとだけ残念ですが、凄いです。流石は瑠衣です。尊敬します。両手を腰に添えて胸を張る姿は、とても凛々しくて素敵ですよ」

「えっへん! もっと褒めてくれても構わないんだよ? なんならアタシの事をもーっと好きになってくれてもいいんだぜ?」

「それは勿論です。瑠衣の事は好きですから」

「おっと、ここでまさかの告白タイム!? ちょっと待って! 心のじゅん……」


 その時、僕と佐久穂さんのスマホが、同時に鳴動した。イオも、歯を剥き出しにして、低い声で威嚇するように吠え始める。


「これは……"穢れ"の反応だね」

「…………おす」

「あ、あの? 瑠衣? 今何か言いまし……?」

「倒す! 絶対倒す!! 許してなんかやんないんだから!!」

「瑠衣!? 落ち着いてください! 先程の想いなら、また伝えさせてもらいますから!」

「アオイ、雰囲気、シチュエーション、トテモ大切。オーケー?」

「あ、はい。ゴメンナサイ」


 僕は、反応のあった方角へと走り出す瑠衣と、イオの背中を追う以外、何も出来なかった。

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