13話
一つの山場を越え、僕達は新たな生活が始まる。
授業を終えると、佐久穂さんと共に部室へ向かい、今日から始める活動内容について話し合う。
「えっとー、アタシ達は、周辺地形の把握も兼ねて、"穢れ"の発生頻度が高い地域の調査をしていくんだよね?」
「うん。僕達の住んでいる場所もそうだけど、他の地域も発生しているみたいなんだ。それを事前に防ぐ為にも、調査は必須かと」
「だね。許可された場所に、"穢れ"の発生を探知出来る杭を打ち込みながら進んでいく予定で、杭の打ち込まれていない未調査の部分を重点的に調べていくのが、今日の目的だね」
「了解。じゃあ、まずはどこに行けばいいかな?」
佐久穂さんは、鞄からスマホを取り出すと、地図アプリを立ち上げ、画面を僕に見せてくれる。
「ショッピングモールだね。確かに、ここで騒ぎが発生したら大変だ。人がたくさん集まっているから、避難誘導もしないといけないし」
「でしょ? だから、ここを中心に調査を進めようと思うの」
「いいですね。僕も賛成です。あとは東御先生待ちですね」
僕と佐久穂さんが意見交換をしていると、良いタイミングで東御先生が扉を開き、中へと入ってくる。
「待たせたな、二人共」
「いえ、大丈夫ですよ」
「センセー、早速始めよっ!」
東御先生は、ホワイトボードの前に立つと、黒板消しを手に取り、白かった部分を綺麗に拭き取る。
「さて、今回の任務は、二人の訓練を兼ねた巡回業務とセンサーの取り付け作業だ」
「はい。丁度、佐久穂さんと話をしていました」
「なるほど、準備は既に整っているという訳だな。よし、説明を始めていくぞ」
先生は、マーカーを握ると、白い部分を使って、ボードに書き込んでいく。
「佐久穂先生から、『祓魔師』に支給される物は、所持したか?」
学生証とは違う、僕達のもう一つの身分証明書。これだけは何があろうが、持ち歩くように。と、固く言われている。
武器は、隠された状態で携帯する事になっているが、修復されて戻ってきた佐久穂さんが使用する、薙刀の刃の部分には、カバーが取り付けられてある。
佐久穂さんは、薙刀を持ち上げると、東御先生に見せる。
「はい。忘れてませんよ!」
「僕も、木刀が仕舞われている事を、しっかりと確認しました」
「うむ。よろしい。連絡手段については、どうだ?」
「"穢れ"と遭遇した際に、ワンタップで通報が出来るようになっています」
「よし。準備は万全だな」
「なんだかんだで、とーみセンセーもすっかり美鈴伯母さんの手伝いをさせられているよねー」
「仕方ないさ。それに私も嫌々ではない。二人の力になれるのなら、喜んで手伝わせてもらうつもりだ」
「うう! とーみセンセー! 大好き!!」
「佐久穂! 抱き着くのはやめなさいと何度いえば……」
東御先生は、少し困った表情を浮かべながらも、佐久穂さんを無理に引き剥がそうとはしない。
もはや諦めたのだろうか、それとも慣れてしまったのだろうか。そんな事を考える。
「佐久穂さん、東御先生が対応に困ってるから、そろそろ離れてあげて下さい」
「はぁ~い」
カノジョは、渋々と東御先生から離れると、再び椅子に腰かける。
「まったく、お前と言う奴は」
「えへへ、ついつい」
「あはは……。落ち着いたところで、そろそろ向かいますか? 一駅とはいえ、電車移動になりますから」
「そだね! それでは、とーみセンセー! 行ってきます!」
「ああ、気を付けてな」
佐久穂さんが元気よく挨拶すると、東御先生も笑顔で返す。
僕達は、東御先生と別れ、学園から最寄り駅へと向かう。
――――――
敷かれた線路に電車が揺られ、目的地のショッピングモールまで、ゆっくりと向かっていく。
僕と佐久穂さんは並んで座り、窓の外の風景を見つめていた。佐久穂さんは、流れる景色を見ながら呟く。
「この辺りにも、"穢れ"が出るのかな?」
「分からないけど、可能性はあるかもね。その前に僕達が発見して、退治する事が出来ればいいんだけど」
「だね。でも、"穢れ"ってそもそも何なんだろう? 人に危害を与えて、襲う怪物……だよね? それ以外は?」
僕も、窓の外を眺めたまま、言葉を紡いでいく。
「負の感情が、形を成したもの。という説がありますね。それが本当だとしたら、"穢れ"は永遠と生み出され続ける事になるのかもしれません」
「うわっ、それは厄介だね」
「ええ。でも、そうなると次は、どうやって感情が形となっていくのか、という問題が出てきます」
「あっ、確かに。感情で何かを生み出すなんて、ありえないもんね」
「はい。つまり、何かしらの原因があって、生み出された。と考えるのが一番妥当なのかもしれないですね」
「うん。アタシもその考えに賛成だよ。まあ、その原因が何なのかは、全然思いつかないけどね!」
カノジョは、照れ臭そうに笑う。
「きっと美鈴さんが、頑張って下さいますよ。その為にも僕達は……」
「出来る事をこなしていく! でしょ? 任せてよ!」
佐久穂さんは、拳を握りしめ、こちらに向けて突き出す。
僕も真似をして、カノジョの作った拳に、自分の拳を軽くぶつける。
「頼りにしてます、瑠衣」
「うん! 頑張ろう!!」




