12話
写し出されている、一人の女性。
彼女は、全身を修道服の様な服装に身を包んでいた。
金色の髪は、肩までの長さで切り揃えられており、肌の色は白く、瞳は翡翠色をしている。
名前は……アレクシア・オタリーでいいのかな。年齢は僕達の一つ上、国籍はイギリスの様だ。
「ふあっ、凄く綺麗な人。モデルさんみたい……」
佐久穂さんが、画面を見ながら呟いている。
「瑠衣ちゃんの言うとおりだね。私も初めて見た時は驚いたものだ。だが、彼女は既に、力を持つふつま……いや、『エクソシスト』として"穢れ"と戦っている者だ」
「オタリーさんは、『祓魔師』ではないんですよね?」
「『祓魔師』は、日本での呼び方。イギリスでは、『エクソシスト』と呼ばれている。だから、キミ達と同じだと思ってもらって構わない」
美鈴さんは、机の中からファイルを取り出し、開きながら話を続けた。
「オタリーは、イギリスのとある教会に所属するシスターだ。立科君と同じく、力を持ち、実戦経験豊富な彼女は、かなりの使い手であると聞いている」
「そうなんですか?」
「ああ、前にも言った、銀の弾薬を生成出来るのが、オタリーなんだが……」
美鈴さんは、言葉を詰まらせている。佐久穂さんと僕は、首を傾げる。
「それ以外にも、懸念すべき事が一つあってだな。確定情報ではなく、与太話の類に聞こえるかもしれないが、どうにもキナ臭い噂が流れているのだよ」
「キナ臭さ……ですか?」
「あぁ、イギリスは否定しているが、オタリーは、『聖女』の力を所持しているのではないかと言われている」
『聖女?』
聞き慣れないようでいて、最近はよく見かける単語を出され、佐久穂さんと言葉を重ねてしまう。
「簡単に言えば、神の声を聞き届ける事が出来る存在の事だ」
美鈴さんの言葉を受けて、佐久穂さんは、更に不思議そうな顔をする。
「ご先祖様とか幽霊ならまだしも、神様って本当に居るの? アタシはそんなの信じてないんだけど。アオイは?」
「正直に言えば、信じられない方が勝ります。幽霊すら感じる事も、見る事も出来ない側なので、尚更です」
「そっか。アタシもオバケはダメだけど、神様っていうのは、もっと苦手かも。なんか、耳障りが良すぎるっていうのか、嘘っぽい感じがしてさ。オタリーさんはシスターな訳だし、やっぱり、そういうのを信じているのかな?」
「その辺りは本人にしか分からないだろうが、オタリーに関しては、その限りではないのだよ。彼女は、"穢れ"と対峙する際に、必ずと言っていい程、神の啓示を受けているらしい」
「ほぇー、それは凄いね」
「ただ、その言葉が真実かどうかを、我々が確かめる術がないのが現状だ。イギリス側も、彼女の力を疑っていない訳ではないようだが、それを証明する事は出来ていない。だから否定のスタンスをとっている」
「神様の声が聞こえる証明って、どういう風にやるのさ? まさか、神様にお願いしますって祈ればいいわけじゃないよね?」
「瑠依ちゃん、鋭い質問だね。その方法もあるのかもしれないが、一番簡単な方法は、実際に"穢れ"と対峙した時に、彼女の口から神の啓示を受けた言葉を聞く事だ」
「なーるほど。そうなると、オタリーさんと一緒に行動して、"穢れ"と遭遇するのが一番手っ取り早い解決法なのかな」
「そうだね。幸か不幸か、あちらの都合でオタリーは、『第一次』へ視察にやってくる。是か非を確かめるチャンスでも有るんだよ」
佐久穂さんと美鈴さんの会話を耳にしながら、考えをまとめていく。
僕の力を確認する為、海外から代表としてアレクシア・オタリーさんが、『第一次』にやってくる。
彼女は、教会に所属するシスターであり、銀の弾薬を生成する力を持つ、『エクソシスト』でもある。
そして『聖女』の異名を持つ存在。
神の啓示を受け、それに従い行動を起こす方……なのかな? 現状では、これぐらいしか情報がないので、判断材料としては弱い。
結局のところ、直接お会いして話を聞いてみないと、何も始まらないか。
この時の僕は、気楽にそう考えていた。
カノジョと出会い、言葉を交わすまでは。




