11話
「ふむふむ。私が昨晩、お客様を相手に奮闘していた頃、キミ達は親睦会を開き、楽しく食事をしていたという事かね?」
「……はい、申し開きのしようもなく」
「あはは、ごめんってば、美鈴伯母さん」
明日もあるからと、帰宅が遅くならない様に食事を終えた後は、会話を切り上げて、それぞれ帰路に着いた。
翌日、僕と佐久穂さんは、再びこの場所を訪れ、美鈴さんと面会をしているのだが……。
「いいのさいいのさ、どうせオバサンは寂しい独り者だからねぇ。キミ達が楽しかったのなら、それで満足さー」
誰がどう見てもいじけてるのが分かる美鈴さん。式典の姿はどこへやら。
今は、机の上に頭を置いた状態で、だらしない体勢のまま僕達に話し掛けてきている。
「美鈴さん、あの……」
「なんだい立科君。私は今、絶賛傷心中だよー。慰めの言葉など必要としていないのだー」
カノジョの親族だけあり、美鈴さんも感情表現豊かな人であり、拗ねる姿もよく似ていると感じる。
とはいえ、仕事に関しては非常に真面目で、普段とのギャップには驚かされるばかりだ。
佐久穂さんが、そんな彼女をフォローする為に口を開く。
「伯母さん、機嫌直してよー。食事ならいつでも付き合うからさ! アタシは美鈴伯母さんと一緒にご飯食べる大好きだし!」
「うぐっ! 私の姪っ子は、なんて可愛らしい事を言ってのけるんだ! 昼食は瑠衣ちゃんの好物を食べようじゃないか!」
「やたー! ステーキ! しゃぶしゃぶ! 焼肉!」
佐久穂さんは両手を挙げて喜んでいる。しかしながら、ものの見事にお肉ばかりの食事である。
「ふっふっふー、今日の楽しみが出来たところで、本題といきますか」
美鈴さんは、体勢を整えて座り直すと、僕達を見据えて話し始めた。
「さて、最初に。両名は二人一組で行動してもらう。これは、互いを理解し合う為でもあるし、"穢れ"との戦いにおいて、連携は必須となるからだ」
「連携ですか?」
「そう、キミ達は、『祓魔師』として第一歩を踏み出したばかりだ。とはいえ、それ以前に実戦も経験しているし、基本的な知識も持ち合わせている。あとは周囲とのコミュニケーションだね」
「確かに、まだ顔見知り程度の方々ばかりですからね」
「組織として動く以上、他の人達の協力は、必要不可欠だ。その辺りは、追々慣れていけば良い」
「はい、分かりました」
「さて、そこでだ。明日からキミ達には、任務に当たってもらう。この資料に目を通してくれ」
美鈴さんは、机の上に置かれていたファイルを手に取ると、僕達に差し出してきた。
「これは?」
「『第一次捜査機関祓魔課』の人員配置表だ。これから、キミ達がどういった形で関わるのかが書いてある」
「あ、ありがとうございます」
僕と佐久穂さんは、手渡された書類に目を通していく。
「えっと、『第一次捜査機関祓魔課』は、三つに分かれているんですね」
「そうだ。大まかに、『祓魔師』の資格を得た、第一部隊。それをサポートする第二部隊。そして後方支援に当たる第三部隊。キミ達は、第一部隊に配属となっている」
「……一つ気になるところがあるのですが、質問してもよろしいでしょうか?」
「ダメだ。理由は、こちらも理解しているからだ」
「第一部隊って、アタシ達を含めて四人しかいないじゃん! 『第一次捜査機関』なんて大げさな名前付いてるけど、実際は人手不足なんじゃ……」
「瑠衣ちゃん。時として、真実は人を傷つける事もあるんだよ」
椅子に背中を預けた美鈴さんは、視線を天井に向けて遠い目をしている。
「昨日も散々、『第二次』や『第三次』の連中にも言われたよ。こちらは随分とお暇なんですね。とか。少数精鋭主義ですか、気楽な。とかー。挙句の果てに、二人の晴れ舞台で見せつける様に、『祓魔師』をズラーっと並べやがってよぉ!」
美鈴さんのテンションがおかしい方向へ進んでいっている。
「美鈴さん、落ち着いてください。ほら、ゆっくりと深呼吸を」
「うぅ、すまないね立科君。つい取り乱してしまった。キミ達の前では冷静な大人の女性でいたかったのだが……」
「大丈夫です。美鈴さんは素敵な女性ですよ」
「そ、そうかい? 立科君はおだてるのが上手いねぇー」
「本当の事なのですが……一旦、話を戻しましょう」
「あぁ、そうだね。瑠依ちゃんが言った事は事実だ。人数こそ少ないが、皆、優秀であり、実力は確かだ」
「でもさ、いくらなんでも無理があるしない? アオイが力を得てから、"穢れ"の発生率が減ってるとは、以前聞いたけどさ」
「ごもっともな意見だ。そこで、だ。私は妙案を思い付いたのだよ。ふっふっふ」
美鈴さんは得意気に笑うと、手元に置いてあったタブレット端末を操作し始めた。




