10話
その後、僕達はお互いに親交を深める為、夕飯を共にする事となった。
とはいえ、状況が状況なので、全て出前ではあるのだけど、心なしか小海さんがとても嬉し気にしていたのが印象的だ。
「んー! おいひい! ようやく落ちついたって感じだよ!」
テーブルに並べられているメインディッシュは、ピザ。トッピングにポテトやナゲットも添えられている。
僕も佐久穂さん同様に、舌鼓を打っている最中であった。
「本当だ、美味しい。住んでいる場所は、ピザはおろか、出前すら頼めないですから、何だか新鮮です」
「お二人の気持ち、わたくしにも分かります。一人では量が多くて、つい敬遠してしまいがちですもの」
「何やら学生時代に戻った気分だ。そうは思わないか、特別顧問?」
「そうですね。普段は、誰かと食事する機会が無いものですから」
「でもでも! 部室が解放されたから、またとーみセンセーと一緒にお昼ご飯が食べられるよ!」
「佐久穂、君という奴はまったく……」
東御先生は、そう言いつつも口元を緩め、穏やかに笑っている。
ただ、この笑顔を見るのは初めてではない。
初めて出会った時からずっと変わらない、温かく優しい笑顔。僕達を見守ってくれているからこその表情なのだろう。
「しかし、予想外の来客人数だな。俺がここで、任命式が行われた時は、ごく僅かの関係者のみだったはずだが」
「わたくしの時もそうでした。やはり今回の規模は、立科くんの力が関係しているのでしょうか?」
「間違いない。特にイオ君が、『祓魔師』として認められた時の反応は、想像以上だったが。まあ、実技試験で相手をした俺からすれば、驚く事でもないのだが」
そう言うと、麻績村さんは、イオの元へ歩み寄り、優しく頭を撫で始めた。
「おー、よしよーし。俺達も今日から仲間だぞ。一緒に頑張ろう」
『アオォン!』
「うん、いい返事だ。佐久穂所長がおっしゃられていた通り、イオ君が最も二人の間近で行動できる存在だ。俺の可愛い後輩たちを守ってくれよ?」
『ワフッ!!』
イオは元気よく吠えると、その身を翻して僕の元へとやってきた。
そしてこちらをジッと見つめる。この仕草は……。
「どうやらイオのお休み時間みたいだね、今日はご苦労様」
イオに向けて手を伸ばすと、身体が徐々に光の粒子へと変わり、やがて僕の中へ吸い込まれていく。
この感覚も慣れてきた。
「相変わらず不思議な光景だが、一体どういう仕組みなんだ?」
「詳しくは何とも……。ただ、僕の力を源に、実体化を持続させているのだとは思います」
「ふむ、所長から話は聞いてはいたが、その力は可能性に満ち溢れているな。世界が放っておかない訳だ」
麻績村さんは顎に手を当てて、感慨深げに呟いた。
「そこまでの事では……と、今までは考えていましたが、今日の出来事を振り返ると、認識を改めなければと思いました」
「あれだけの人数ですものね、きっと海外からの来賓もいらしたはずですよ」
「ああ。俺も今日、身をもって知った。立科君の、君達の存在感をな。だからこそ、監視役がここに送り込まれてくるのだろう」
「へ? 私達以外に誰か来るの? ゆーこさんは何か知ってる?」
「立科君の力を見極めに、海外からどなたかがやってくる。わたくしの知っている限りでは、それだけですわ」
「海外から!? 凄いな、アオイは……」
佐久穂さんが尊敬に満ちた眼差しを向ける。その視線は、どこか気恥ずかしさを覚えるものだ。
「佐久穂さんだって、僕の相棒なのですから、対象に含まれているのでは?」
「そっか、そうだよね。えへへ、嬉しいな」
佐久穂さんは頬を赤らめて笑みを浮かべている。
「(特別顧問、あの二人はいつもあんな調子なのか?)」
「(えぇ、そうです。無自覚なのはお互い様なのですが)」
「(ふふっ、青春ですね。わたくし、日々の楽しみが一つ増えましたわ!)」
「(……若さとは、時に恐ろしいな)」




