8話
任命式が行われる会場では、関係者であろうか、見知らぬ顔の人達がいる。
壁際には、僕達と同じ礼服を着た、『祓魔師』と思しき人達が待機していて、中央には、僕と佐久穂さん。傍らには、イオの姿もある。
壇上には演台が置かれ、その上にはマイクが設置されている。
「これより、『祓魔師』の認定を行う。皆、静粛に」
壇上にいるのは、間違いなく美鈴さんであるのだが、あそこまで真剣な表情をした美鈴を見るのは、初めてである。
普段の雰囲気とは異なり、「凛々しい」という言葉が似合いそうだと感じた。
美鈴さんは一呼吸置いてから、声高らかに宣言を行った――。
「本日、この時をもって『祓魔師』は、新たな道を歩み始める。資格を手にした者は、覚悟を決めるように」
美鈴さんの言葉は続く。
それは、『祓魔師』である者達に対しての激励とも受け取れるものであった。
「『祓魔師』となったからには、常に死と隣り合わせだ。己の身を顧みずに戦う者もいるだろう。家族を想い、大切な人を守る為に戦おうとする者もいれば、自分を犠牲にしてでも"穢れ"と戦う者もいるかもしれない」
……僕は美鈴さんの方へと視線を向けるが、彼女はただ真っ直ぐに前を見つめている。
「これから先は、厳しい現実が待ち受けている事になる。それでも君は戦うのか? ……いや、君達は戦うのか?」
沈黙は肯定の意を示しているのだろうか。周囲はしんとしている為、はっきりとした答えは聞こえて来ない。
「そうか。ならば、私はこう言おう。私についてこい。私がお前達に教えてやる」
美鈴さんが力強く言葉を紡ぐと、会場内の空気が鋭利なものへと変化していく。
「立科葵、佐久穂瑠依。以上は、本日をもって正式な祓魔師となる。今日という日から、世界は大きく動き出すだろう。『祓魔師』としての使命を果たすべく、精進していく事を期待している」
――――――
僕と佐久穂さん、そしてイオを引き連れて舞台上に上がり、並んで立つと、周囲の人々から拍手が沸く。
「立科葵。汝は『祓魔師』の任に就く事に、誇りを持ち、責任を持つ者なり」
「はい」
美鈴さんが読み上げたのは、任命書の内容だ。この後に行うのは、美鈴さんによる簡単な質問と宣誓の言葉を返すだけである。
「佐久穂瑠衣。汝は『祓魔師』の任に就き、世界の均衡を保つ者として、自覚と責務を全うする者なり」
「はい!」
「イオ。汝は『祓魔師』の任に就いた者の力となり、支える者である。その力を、平和をもたらすものとして使う事を願う」
「ガウッ!」
僕達だけでなく、イオに対しても『祓魔師』として認める旨が伝えられると、僕や佐久穂さんに向けられた以上に拍手が巻き起こり、盛大な歓迎を受けた。
イオも満更でもない様子で、尻尾を振りながら応えている。
その後、無事に任命式は終わりを告げたのだ。




