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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第二章 『祓魔師』とカノジョ
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7話

 更衣室から出て、待ち合わせの場所まで歩みを進めていると、既に佐久穂さんの姿があった。

 カノジョの顔がこちらに向き、表情がパッとする。僕を見るなり駆け寄ってきた。


「おおっ! アオイ! 礼服姿、カッコいいじゃん!」

「ありがとうございます」


 佐久穂さんは笑みを浮かべる。礼服効果とも言うべきなのだろうか、いつもより一層、輝いて見え、可愛さよりも美しさが勝っているように感じる。

 カノジョが身に纏っている衣装は、僕と似た配色の上着にタイトスカートの姿。裾の部分にある赤いラインが特徴的だ。

 そしてストッキング……というよりは、タイツであろうか。肌の色は一切見せず、黒一色。しかし、それが逆にいつもと違う雰囲気を作り出している。


「瑠衣もよく似合っています。とても綺麗ですよ」

「き、急に褒めるのは卑怯だっ! 不意打ち過ぎる! それも綺麗だなんて……反則だよ……」


 佐久穂さんは俯くと、ボソッと呟いた。

 普段、僕の方を見つめてくる事が多い佐久穂さんが、目線を合わせようとせず、こちらをチラリとだけ見つめては視線を戻す事を繰り返している。

 僕はその姿がとても愛らしく感じて、つい笑い声が漏れてしまう。


「もうっ! 笑う事ないでしょ!」

「すみません。ギャップがあって、その……」

「その?」

「可愛いなって」

「……っ!?」


 カノジョの顔が一気に赤くなる。耳までも赤くなっており、恥ずかしさのあまりか目を逸らしてしまう。


「……ばかっ」


 佐久穂さんから小さく呟かれた言葉は、怒るというよりも照れた感じの声色で発せられた。

 僕はそんなカノジョの様子を眺めていると、どこからか視線のような物を感じた。

 そちらの方へと振り向いてみると……通路の角から顔を半分だけ覗かせている女性の姿が見える。

 あの人は……以前、『祓魔師』の試験の際にもお世話になった、受付のお姉さんだ。

 僕が見ている事に気づいたのか、口元に手を当てて「シー」と言っているのが分かった。その姿を見て、先程のやり取りを聞かれていたのだと理解する。


「ねえ、どうしたの?」


 佐久穂さんは首を傾げて聞いてくる。僕は何と説明しようかを迷った挙句、誤魔化す方向でいく事に決めた。


「いえ、なんでもありませんよ」

「本当に? 何か隠してたりしてないよね? 今更だけど、私に言いにくい内容だったりとか……」

「違いますよ。妖精さんと目が合ったぐらいです」

「へ? 何それ?」

「直ぐに分かります」

「またそうやってはぐらかす! まあ、いっか。そろそろ時間だし、移動しよっか」

「そうですね。行きましょうか」

「うん!」


 ――――――


 僕達は、任命式が行われる中央ホールへと向かっている最中であった。

 道中、僕とカノジョは、お互いに手を繋いで歩いている。

 いざ本番かと思うと急に緊張してしまい、気持ちを落ち着かせようとしていたら、佐久穂さんが手を握ってくれたのだ。

 試験の時とは、逆だ。なんて思いながらも、握り締めた手のひらの感触は、僕の心を安心させてくれる。


「緊張、解れた?」

「はい。ありがとうございます」

「良かった。でも、もう少しこうしててもいい?」

「もちろん」


 僕は握り返すと、そのままの状態で歩き続ける。カノジョと共に進む道は、まだ始まったばかりなのだ。

 廊下を進んだ先に、一人の人物がこちらを待ち構えている。その人物は、僕達の前に立つと、深々と頭を下げた。


「お久しぶりでございます。この度は、『祓魔師』の任に就かれるとの事で、おめでとうございます」

「ありがとうございます。お姉さんの事は覚えています。受付や試験の際にお会いしましたよね?」

「はい。改めて自己紹介をさせて頂きますね。私の名前は小海優琴(こうみゆうこ)。お二人より少しだけ早く、『祓魔師』としての資格を手に致しております」

「お姉さんも、『祓魔師』だったんだ! なんか嬉しいかも! あっ、アタシは、佐久穂瑠依っていいます!」

「立科葵です。よろしくお願いします」


 僕と佐久穂さんは挨拶を交わす。すると、お姉さんは笑みを浮かべながら僕達を見ていた。


「佐久穂さん、立科さん、どうぞ宜しくね。わたくしのことは、気軽に名前で呼んでくださると嬉しいわ」

「分かりました! ゆーこさん!」

「僕は何だか恐れ多くて……小海さんでいいでしょうか?」

「……立科くん。お姉さんは悲しいわ。どうしてそんなに他人行儀なのかしら? 先程、秘密を分かち合った仲だというのに……」

「アオイ。その話、詳しく」


 涙なくして語れないという仕草をする小海さんと、真顔で詰め寄ってくる佐久穂さん。正直、怖いんですけど。


「ちょっ、ちょっと待った! 誤解です! 僕は何も言ってません! 小海さんとは目が合っただけで、他には何も……」

「ふぅん? 目が合うだけで分かり合える仲なんだ。へぇー。アタシとだってまだなのに」


 人間は、本当に怒っている時は、頬を膨らませないし、まばたきをする事も忘れるらしい。

 ただ一点、僕を見つめ続けるカノジョは、笑顔のままだが、目が全く笑っていない。

 しかし、佐久穂さんから嫉妬心のようなものを感じられる事に、自分でも言葉に出来ない喜びを感じてしまっている。

 しばらく続いた沈黙は、小海さんの抑えつける様な笑い声によって破られた。


「うふふっ、ごめんなさい。佐久穂さんの気持ちが分かる気がするわ。立科くんが可愛くて、つい意地悪しちゃいました」

「へ? どういう事ですか? ゆーこさん?」

「二人がロビーに居た時に、こっそりと隠れながら、様子を見ていたの。立科くんに言われなかった? 妖精さんがいる。って」

「……まさか、ゆーこさんは全て見てた?」

「ええ。勿論」


 カノジョの顔がみるみると赤くなっていく。


「もう、なんで黙っていたのさ」

「すみませんでした。言うタイミングを逃してしまいまして」

「……ゆーこさん。その……見た感想は……?」

「可愛いなぁと思いました」

「っ!?」

「佐久穂さん、とても可愛かったですよ」

「あ、ありがと……でも恥ずかしいので、二度も言わないで欲しいデス……」

新しい登場人物の名前に、ルビを振る設定を忘れてました。

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