5話
早いものであっという間に週末になり、駅前で待ち合わせていた佐久穂さんと、いつも通り電車で揺られながら目的地へと向かう。
終点である最寄り駅から歩き、例の建物へと向かう。
表向きは、何かかしらの研究所として登録されているらしいが、実際には"穢れ"の研究施設であり、その事を公に出来ない事情がある。
それと同時に、『第一次捜査機関祓魔課』の活動拠点でもあるのだ。『第二次』以降もあるのだが、今は説明を省こう。
佐久穂さんと共に中へ入ると、既に東御先生と美鈴さんの姿があった。
美鈴さんは僕達の姿を見かけると、笑顔を浮かべてこちらへ近づいてくる。
「立科君に瑠衣ちゃん。直接会うのは久しぶりだねぇ。改めて合格おめでとう」
「はい。おかげさまで。ありがとうございます」
「美鈴伯母さんも、元気にしてた?」
「勿論。二人が頑張ってくれたおかげで、私は何の憂いも無く君達を、『祓魔師』にする許可証へサインが出来たんだよ」
美鈴さんは、優しく僕達の頭を撫でてくれる。
この場には、美鈴さんの他に東御先生もいるが、特に何か言うつもりはないようだ。
僕と佐久穂さんの顔を交互に見つめ、美鈴さんは口を開く。
「二人共、これからの事を話す前に、確認させて貰うよ。二人は、『祓魔師』になって何がしたい?」
「アタシは、アオイを守る事が一番だけど……そうだなぁ。アタシ達が戦う事で、誰かが救われるならいいなっ!」
「僕も同じです。自分が出来る事を、少しでも多くやれるようになりたいです」
「そうかそうか、立派な心掛けだ。その言葉を聞けただけでも伯母さんは嬉しくて泣きそうだ」
そう言って涙ぐんでいるが、すぐにハンカチで目元を抑えると話を続ける。
「さて、『祓魔師』として活動する以上、様々な場面で危険が伴ってくるのは理解しているね? 瑠依ちゃん」
「うん。怪我をしたり、最悪の場合は命を落とす事も」
佐久穂さんは真剣な眼差しで言う。
カノジョの表情からは冗談ではなく、本気だという事が伝わってくる。
「そうだ。だからこそ、『祓魔師』は、常に死と隣りあわせの仕事だ。その覚悟は出来ているかい?」
「うん。アタシは、そのつもりでいる。そして二度とアオイに怪我なんてさせない!」
「よし、その意気だ。その気持ちを忘れないように。それじゃあ、次は立科君の番だ」
美鈴さんが僕の方を向いた為、佐久穂さんも一緒に僕を見る。
僕は一度深呼吸をしてから、言葉を発する。
「僕も覚悟は決めています。瑠衣を守り抜く為に、自分にできる事は全てやる。それが僕の役目です」
「ふふっ。瑠衣ちゃんも、立科君にここまで言われて嬉しいだろう?」
「も、もう! 伯母さんってば!」
佐久穂さんの顔がほんのりと赤くなる。
美鈴さんは、満足げな様子で笑っていた。
「さて、最後の質問だ。『祓魔師』を辞退する事が出来るのは、今が最後の機会だ。それでも続ける気はあるかい?」
『はい!!』
僕と佐久穂さんは、迷わず答える。
「……野暮な質問だったかもしれないね。二人の決意が固いのは分かった。では、改めて二人を歓迎しよう」
美鈴さん姿勢を正し、僕達に向かって言う。
「ようこそ、『第一次|捜査機関祓魔課』へ」




