4話
「まず、最初に。改めて二人には、おめでとうと言わせてくれ。立科と佐久穂は無事、試験を授かり、『祓魔師』となった」
「はい」
「えへへっ」
東御先生に祝福され、僕と佐久穂さんは、照れたように笑い合う。
「晴れて、『自然研究同好会』は、本来の活動を行うことが出来る。私も一個人として嬉しい限りだ」
「はいっ! アタシもアオイも頑張った甲斐がありました!」
僕達は、二人同時に力強く返事を返した。
「それに伴い、佐久穂先生から連絡を預かっている。二人は何か聞かされているか?」
「僕は特に。佐久穂さんは?」
「連絡は取り合っていたけど、とーみセンセーから許可が下りるまでは、休息するようにって言われてたくらいかなー」
「成る程。なら、連絡の内容は僕と同じという事になりますね」
「そだねー」
僕と佐久穂さんが顔を見合わせていると、東御先生がホワイトボードに文字を書き始める。
「佐久穂先生からの伝言だ。二人に対して今週末に、『祓魔師』の任命式が行われる。その為に、準備を整えておいて欲しいとの事だ」
「ほぇ……そんなのあったんだ」
「初耳ですね」
「本来であれば、既に任命式は終えて任務に就いてもらう予定だったらしい。実技試験があそこまで難易度の高い内容になるとは、二人の試験官を務めた人物も含めて想定外だったようだ」
「それじゃあ、アタシ達があんなに苦労したのは……」
「あれは特例だな。あの時の二人とイオの姿を見て、全力で当たらないと失礼だと悟ったそうだ」
「そっかー」
佐久穂さんは、どこか納得した様子を見せる。
僕としては、先輩とも呼べる方に全力を出させたのは、嬉しいのやら悲しいのやらと複雑な気持ちになる。
だが、その感情は佐久穂さんと変わらないだろう。
「本当によく頑張り抜いたな。私も誇りに思うぞ」
「うん! センセーに褒めてもらえて良かった!」
「はい。僕も同感です」
東御先生の言葉に、僕と佐久穂さんは揃って同意する。
「さて、二人共。身体の調子はどうだ? 試験後の検査では異常が見られなかったが、何らかの影響が残っている可能性はある」
「アタシは元気だよ! むしろ今までよりもスッキリした気分!」
「僕も平気です。筋肉痛もありませんし」
「そうか。疲労も抜けて元の状態に戻っているようだな。では、訓練の再開を許可しよう」
「本当!? やった! 休息の為とはいえ、なんだか落ち着かなかったんだよね!」
「そうですね。痛みが治まり始めると、普段の生活でも、何だかもどかしくて」
「その辺りの感覚は大事にしておくといい。今後、『祓魔師』として活動していく上で、役に立つ」
「はーい。あ、センセーに一つ質問があります」
佐久穂さんが挙手をする。
「ん? どうかしたか?」
「アタシが使っていた薙刀が、実務試験の時にだいぶ痛んでしまった件について聞きたいでーす」
「ああ、そのことか。佐久穂の薙刀については、任命式の時に、修繕された物を用意しておく。新しい物よりも使い慣れた物の方が良いだろうと、私の判断だ」
「おおー! 流石はセンセー! ナイス判断! センセー大好きー!」
佐久穂さんは、東御先生に抱きつく勢いで駆け寄る。
だが、東御先生は冷静に対応し、抱きつきを回避してみせた。
「そうやって無防備に飛びつこうとする癖を直してくれ。危ないだろう」
「むぅ……。いいじゃん。とーみセンセーのケチー」
「そういう問題じゃない。そもそも私は教師だぞ。同性であっても教え子に触れるのは、よろしくない」
「センセー堅いよ~。少しは触れ合いを大切にしようよ?」
「佐久穂の場合は、度を越し過ぎなんだ。立科もそう思うだろう?」
「ノーコメントでお願いします」
僕は、佐久穂さんから視線を逸らす。
東御先生と佐久穂さんのやりとりは、いつものことなので、気にしない事にしている。
「あ、僕からも質問よろしいでしょうか。東御先生」
「ああ、構わないぞ」
「任命式の際には、何を着て行けば良いのでしょうか?」
「学園の制服で大丈夫だ。あちらで着替えが用意されている」
「着替え! もしかして、『祓魔師』専用の制服とかあるのかな!?」
「それは当日のお楽しみだ。さて、連絡事項はこれで終了だ。戸締りは私がしておくから、今日の所は二人共、帰宅をしなさい」
「分かりました。東御先生、ありがとうございます」
「はーい! とーみセンセー、ありがとね!」
僕と佐久穂さんは、それぞれお辞儀をして、部室から退席する。
一人残された東御先生は、誰に聞かせるでもなく呟く。
「……立科。お前の力は、早速目を付けられたみたいだな。気を付けるんだぞ」




