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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第二章 『祓魔師』とカノジョ
37/77

3話

 放課後になり、久しぶりに佐久穂さんと部室へ歩みを進める。

 廊下を歩いていると、窓から校庭の様子が見え、運動部が汗を流していた。

 部活に入っていない生徒は、帰宅の準備を済ませ、学園を後にしていく。

 この光景を見ると、不思議と夏が始まるなと感じさせられる。ここでは初めて見るのにね。

 隣人との会話は途切れる事もなく、目的地である『自然研究同好会』の扉の前に着いた。

 東御先生から預かってきた鍵をポケットから取り出して、錠を開ける。

 そのまま室内に入ると、むわっとした空気が肌に触れ、外気との差に驚かされる。


「うへぇー、あっつぅ」

「これは流石に……耐えられませんね」


 佐久穂さんが声を上げると、それに同意するように言葉を漏らした。

 二人して窓を開け、換気を行うと、ようやく部屋の暑さに慣れ始める。


「ふうっ。やっぱ、こっちの方が涼しいね」

「ですね。流石にあのままではいられないです」

「あははっ、そうだね」


 僕達は、お互いに用意した椅子に座るなり、一息吐く。


「さて、何の話をする?」

「そうですねぇ……」


 僕達の視線は、ホワイトボードに向けられる。

 そこには、『来月の予定』『議題一覧表(仮)』『その他、連絡事項等あれば書き込んで下さい!』といった文字が並んでいる。

 最初は、スマホのアプリ等でやりとりをすれば良いと思ったが、それだと部活動っぽくないと佐久穂さんに却下された。

 その意見に反対出来る者はおらず、実際に使い始めてみると、案外悪くないと思えた。雰囲気は大切だ。


「どれにしよっかー」


 佐久穂さんは、楽しそうな笑みを見せながらペンを手に取る。その様子を見て、僕の方も何となくやる気が湧き上がってきた。


「この暑さは、まさに夏! って感じでテンション上がるよね!」

「今の季節で暑かったら、本格的に夏になったらどうなるんですかね」

「そりゃあもう! 最高だよ!」


 カノジョの言葉を受けて、僕は、今より更に気温が上がると想像する。それはもう、灼熱地獄と言っても過言ではないだろう。


「でも、ここは山に囲まれていて、それなりに標高もあるから、盆地ほどは酷くないよ」

「確かに。東京とかはもっと暑いと聞きますから」

「うんうん。だから、そこまで気にしなくてもいいと思うなー」


 そう言うと、佐久穂さんは窓の外を見つめる。追う様に顔を向けると、視線の先には、雲一つ無い青空が広がっていた。

 議題から反れ、しばらく他愛のない会話を続けていると、コンッコンッと小気味の良いノック音が室内に響き渡ると、続けて女性の声で「失礼します」との声が聞こえた。

 その音に、僕達が振り返ると、一人の女性が室内へと足を踏み入れる。

 現れた人物は、僕達が所属する同好会の顧問であり、担任でもある、東御先生であった。


「すまない。待たせたな」


 東御先生は軽く頭を下げて謝罪すると、空いている席に腰を下ろした。


「センセーお疲れ様ー」

「ああ、ありがとう。お前達も久々で悪かったな」

「いえ、先生のお陰でこうして活動が出来ていますから」


 先生が入室するなり、佐久穂さんは笑顔で労いの声を掛ける。僕も同じ思いだったので、カノジョに続く形で声を掛けると、東御先生は、少しだけ表情を和らげて感謝の意を示してくれた。


「先生。今日は何か連絡事項でも?」

「ああ、『祓魔師』に纏わる話がある」

「だとすれば、窓を閉めた方がよろしいでしょうか?」

「重要な話っぽいのは分かるけど、締め切ると暑くない? センセー?」

「熱中症問題などを考えると、佐久穂の言う事は正しい。なので職員室からこれを借りてきたぞ」


 そう言って、東御先生はリモコンを取り出して、机の上に置く。


「おお~! これはもしや! クーラーを動かすのですか!? センセー!」

「正解だ、佐久穂。稼働確認を口実にして、クーラーの試運転が出来る」

「マジですか! やったー! 流石はとーみセンセー! 話が分かる!」

「佐久穂さん、先程までこの暑さが夏と豪語していたのに、切り替えが早過ぎませんか?」

「ソレはソレ! コレはコレ! 別腹的なアレ!」

「相変わらず、佐久穂は分かりやすい反応をしてくれるな。そういう事だから窓を閉めてもらえると助かる」

「了解しました」


 僕と佐久穂さんは、手分けして窓とカーテンを閉める。

 東御先生が冷房のスイッチを入れてしばらくすると、クーラーから冷たい風が吹き出し、部屋を冷やし始める。


「ふわぁ……涼しくなってきた。改めて感じると、やっぱり違うね」

「はい。快適ですね」


 それぞれ感想を口にしていると、東御先生がコホンと咳払いをして注目を集める。話を始めても良いか? という合図だったようだ。

 僕達は姿勢を正すと、意識を東御先生に向ける事にした。

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