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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第一章 ゼロ距離なカノジョ
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28話

 東御先生が加わり、ささやかな同好会設立のお祝い会。

 僕達は久しぶりにゆったりとした時間を過ごす。各々が飲み物を飲みながら談笑している。

 そんな中、東御先生が思い出したというように話し始めた。


「二人共、期末試験の対策をちゃんとやっているか? まだ猶予はあるが、しっかりと勉学に励む必要があるぞ」

「うへぇ、その話題かぁー。勉強は苦手なんだよねぇ」

「あれ? 中間テストだと、佐久穂さんは良い点を取っていた記憶があるんですが」

「私は得意科目しかしない主義なのだ。逆に言えば、それ以外は全くと言ってもいい程出来ない! けど、出来ない部分をアオイに教えて貰った結果だよ!」

「僕は授業を聞いていればそれなりに解けるだけですよ。それに、佐久穂さんの方が圧倒的に成績が上ですし」

「授業中に寝てる時もあるというのに、不思議なものだな」

「うぐ! 先生は一言多いですよ! たまたまその日が眠たかっただけです!」

「佐久穂さんは、普段から予習復習をしてますし、ノートも綺麗に纏めているので、その辺りの癖が出ているのかもしれませんね」

「そ、そう! アオイの言うとおり! その辺は、私はアオイに頼らないで自分でやるもん!」

「問題は、自分で記載したノートを読み返しても理解していないところか」

「むぅぅ! そこは、アオイに聞いた方が分かりやすいからで!」


 僕は二人のやり取りを聞きながら、テーブルに置いてあるオレンジジュースに口を付ける。目の前に起きている光景を眺めながら飲んでいると、甘い味が広がり、思わず笑みを浮かべてしまうほど美味しいと感じられた。

 そうして僕達三人で話し込んでいると、あっと言う間に時間が過ぎていく。気が付けば、もう夕方に差し掛かっていた。

 今日はもう遅いので解散しようという流れになり、僕は自宅に帰る前にスーパーに寄って買い物をする為に外へと出ていた。

 その時である。再び、あの現象が僕に襲い掛かってきたのは。


 周囲から生活音が一切聞こえなくなり、どことなく空気が重く感じられ、吐き気さえ覚える様な異様な雰囲気が漂っている。

 あの時と同じ、"穢れ"が現れる前兆だ。

 僕はすぐさまポケットからスマホを取り出して東御先生へ連絡を取る。すると、すぐに返事が帰って来た。

『今すぐそちらに向かう』と。

 "穢れ"が使用するという簡易結界が完成する前に連絡が出来た。居場所も伝える事が出来た。

 美鈴さんから教わっていた知識と対策を打ち、後は僕の踏ん張りどころである。


「イオ、手伝って欲しい」


 手を地面に差し出して集中すると、僕の声に応えるようにして現れる漆黒の狼、イオ。

 僕の手に頭を擦り付けて来る。愛らしい仕草を見せてくれる彼女の姿に心の落ち着きを取り戻す。

 自宅で鍛錬する為に背負っていた木刀を取り出して握り締め、息を整える。

 美鈴さんから頂いたお守りを取り出し、一度だけ握りしめた後に、再びポケットへ戻す。

 こちらの準備は万全だ。問題は、何が現れるかだが……。


 意識を高めると、暗闇の向こうから現れたのは、人型の何か。

 人間の様な姿をしているが、頭は人間の物ではなく、動物の頭のような形をしているので、異形の存在だという事は分かるのだが……一体、どんな力を持っているのかまでは、分からない。


「イオ」


 僕の言葉に呼応する様に、相手に対して威嚇行動を開始。その姿を見た敵は、ニタニタと笑う。

 こちらから無理して攻める必要性は無い。ヤツが作り出した結界は、相手を閉じ込めておく為のものでしかない。

 ならば、こちらが動くべき時は、敵の能力が判明してからでも遅くはない筈。

 そう考えた僕は、敢えて相手の懐に飛び込むような真似はせず、その場で留まり続けていた。


「貴方は何者ですか?」


 僕の問いかけに対し、奴は口を開かない。やはりニタニタと笑うのみ。やはり、"穢れ"の状態では会話が成立しないか。

 相手を打ち倒し、浄化をすれば、何か聞き出せる可能性はある。それが僕の力、浄める事の出来る力を持つ、『祓魔師』の力だ。


 硬直状態が続き、額から汗が流れ落ちた瞬間、向こうが動いた。

 突如として地面から土の壁を作り出し、僕を閉じこめようとしてきたのだ。


「くっ!」


 咄嵯の判断で飛びのいて避けると、壁は音を立てて崩れ落ちる。

 相手は僕の動きを見て、一瞬だが驚いていた。攻撃が当たらなかった事に、だ。

 だが、それはほんの数秒の間だけであり、相手は再び攻撃を仕掛けてくる。土を操ったり、泥を飛ばして来たりと、まるで手品の様に様々な攻撃を繰り出して来る。

 今の僕では、全てを避ける事も、弾き返す事も出来ないが、一人ではないのだ。


 こちらに集中している相手に対して、イオが牽制を行いつつ、隙あらば噛み付くといった形で相手を攻め立てて行く。しかしそれでも決定的な一撃を与えるまでには至らない。

 この相手は強い。おそらく、イオがまだ"穢れ"であった頃よりも、相手は格上の存在の様だ。このまま戦い続けていても、こちらが消耗し続ける一方であり、勝ち目がない。


(応援が来るまで耐えればいいだけなのに、相手がそれを許さないか)


 東御先生の到着を待っている暇が無い。早く来て欲しいと願いつつも、焦らず冷静に状況を分析し続ける。僕は、どう立ち回るべきだろうか?

 美鈴さんから教わった事、東御先生の指導、佐久穂さんとの訓練、イオとの連携。思い出す事で活路を見出そうと思考をフル回転させる。


「…………」


 ふと、僕の中で違和感が生まれる。そういえば、相手は全て遠距離で攻撃を行ってくる。イオからの攻撃はいなすのに、僕にだけは徹底して距離のある攻撃を続ける。近づけさせたくない理由でもあるのだろうか?

 勿論、これは僕の考えであって根拠なんて無い。ただの直感的な問題でもある。

 けれど、もしも、これが事実だとしたら、どうだろう? 僕は一度目を瞑ると深呼吸を行う。心を落ち着かせながら、ゆっくりと瞼を開く。

 そうする事で視界がクリアになった僕は、イオに視線を向け、声を潜めて語り掛ける。


「イオ、一度だけでいい。僕の攻撃を相手に食らわせてみたい。協力してくれるかな?」


 僕の言葉に彼女は反応を示す。それはどういう意味かと問うているように思えた。だから僕は、その疑問を解消するべく答えを口にした。


「相手は僕からの攻撃を恐れている可能性があるんだ。その理由は、『祓魔師』の力だと考えている。理由は知らないけど、相手は僕が、"穢れ"の存在を浄化する力を持っている事を知っている。だが、方法は理解出来ていないと。それで僕ばかり近づけさせない様にしているんじゃないかなって思ってさ」


 僕の推測を最後まで聞いた後、イオは小さく鳴いて応えてくれた。僕も自分の意思を告げた後、改めて目の前に居る"穢れ"と向き合う。

 先程からずっと睨み合いが続いているので、そろそろ動き出したいところではあるが、そのタイミングを計りあぐねていた。

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