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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第一章 ゼロ距離なカノジョ
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27話

 東御先生のご助力で、僕達は同好会にも関わらず部室を使わせて貰える事になった。

 その中で、人気のない静かな場所に、『自然研究同好会』の活動拠点が出来上がる。最初は、『オカルト研究会』にしようかという話も出たのだが、佐久穂さんの強い要望で却下となった。

 空き部屋となっていた教室の掃除を行い、荷物運びや、必要な備品を買い揃えて一休憩をしているところである。

 僕は、佐久穂さんに、『疲れたー、もう動けない。おんぶして運んでぇ~』と言われて、背中に抱きつかれている最中である。


「ねぇ、アオイー」

「なんでしょうか佐久穂さ……ぐえっ!? 首が締まってる! 締めてるから!!」

「あ! ごめん! うっかり力入れちゃった。てへぺろ」

「佐久穂さん? わざとですよね? そのセリフを言いたかっただけですよね?」

「ばれたか。でもほら、アオイの慌てふためく姿は可愛いなって思う」

「……僕は男なので、可愛くても良い事なんてありません」

「いーじゃん別に。減るもんじゃないし。むしろ私の愛情が増えるんだよ?」

「僕の寿命が減りそうなので、止めて下さいね!」

「すぅ~! はぁぁぁ! アオイの匂いだぁ! くんか、クンカ」

「ちょ、佐久穂さん! 鼻息荒げないでください! 恥ずかしいのでそろそろ降りて下さいよ!」

「嫌だもん。離れない。ずっとこのままが良い。すりすり、スリスリ」


 今日も今日とて、佐久穂さんのペースに振り回されている。

 最近は、訓練や復習といった事をしている為、僕達は少しばかり忙しい。

 どの程度かと問われれば、あの日から佐久穂さんが僕の自宅に遊びに来る暇も無いくらいである。

 体力作りや素振りなどを一緒に行っているので、共にいる時間はさして変わらないのだが、彼女からすればふれあいが足らないと不満気。

 仕方ないので帰り際に、こっそりと手を繋いで帰ろうとしたりと色々と試してみるが、効果無しである。

 そうして溜まりに溜まったアオイ成分不足に陥った佐久穂さんが、爆発したのだ。

 東御先生から部屋の鍵を渡されて準備を行っている最中に、背中に飛びつく様にして僕に絡みついてきたのだ。


「ふふん。これで逃げられないでしょ?」

「はい。そうですね。詰みました。僕の負けで良いので、とりあえず離れて頂けませんかね?」

「ダメ。もう少しこうしていたい。ぐりぐり。ぎゅー」

「こら、制服を引っ張るのは駄目だって。僕達は理由があって同好会を設立させて貰ったんだから、あまり、ね?」

「ちぃ、流されてくれなかったか!」

「僕の事を信頼してくれているのは分かるし、ハグをされるとやっぱり嬉しい。だけど、学校内では控えて欲しいかな。僕の心臓に悪いし、他の生徒の人に見られてしまった時も困るかもしれない」

「誰かに見られるのは別にいいけど、確かに学校内じゃ怒られちゃうか。今ので補給が出来たから、今後は自重するね」

「ありがとう、佐久穂さん。一通り準備は終えたし、簡単なお祝い会でもしましょうか」

「さんせー! 折角だからとーみセンセーも呼んでこよっ!」

「うん、そうだね」


 そう言って僕らは立ち上がると、廊下へと出ると念の為に鍵を閉めてから職員室まで向かう。

 東御先生はパソコンに向き合って何やら格闘中であったが、一声かけて教室が利用出来る状態になった事を伝えると、彼女は喜んでくれた。


「そういえば、東御先生。僕が書いた同好会の申請書なんですけど、大丈夫だったんですか?」

「ああ、心配はいらん。同好会の名前に、『自然研究』と表記されてあり、活動内容も地域に関する研究からフィールドワークまで多彩と表記されているから、少しばかり人目に付く行動をしても大丈夫だろう。仮ではあるが、顧問は私になっている。同好会だから監視役みたいなものだが、問題ないだろう」

「そうなると、先生も大変じゃないですか? ただでさえ仕事が山積みなのに、僕達の事にも時間を割くのは申し訳ないと……」

「気にするな。私が勝手にやった事だ。生徒の為になるなら多少の苦労は厭わない」

「先生……本当にありがとうございます」

「礼を言う必要はない。お前達は私にとって大切な生徒だ。当たり前の事さ」


 そう言いながら、東御先生は机の上に置かれた珈琲を口に含む。

 僕は、彼女の言葉に胸が熱くなる。


「とーみセンセー! 部室の準備が終わったからお祝い会をします! 是非来て下さい!」

「そうか、分かった。直ぐに行くから待っていてくれ」


 そう言うと東御先生は、パソコンを閉じる。どうやら既に仕事を終わらせたようだ。彼女は椅子を回転させてこちらに身体を向ける。


「佐久穂は元気だな。少し分けて貰いたいものだよ」

「分けましょうか? さっきアオイから補給したばかりなので」

「ははは、そうなのか。だが、気持ちだけありがたく受け取るとするよ。それは佐久穂専用の元気なんだろう?」

「さっすがセンセー! よく分かってらっしゃる! その代わりじゃないですけど、ジュースとお菓子を用意してきたから、一緒に食べましょ!」

「ああ、もちろんだ。では、向かうとするか」


 東御先生は椅子から立ち上がり、佐久穂さんと肩を並べて歩いていく。なんだか仲の良い姉妹の様に見えて、とても楽しそうにしている。

 そんな二人を眺めながら、僕もゆっくりと後を付いていった。

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