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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第一章 ゼロ距離なカノジョ
26/77

26話

 ピピッという目覚まし時計の音で僕は起きる。

 カーテンの隙間からは太陽の光が差し込み、部屋を照らしている。その光を浴びながら伸びをする。

 あれ以来、変な夢を見る事もなく、いつもと同じ朝だなぁと思いつつ身体を起こすと、新しい同居人であるイオが飛びついてくる。


「ガウッ! ガウッ!」

「おはようございます。今日は随分と元気ですね」

「グルルッ!」

「それは良かったです」


 僕は笑顔を浮かべながらイオの頭を撫でる。

 訓練を受けてから一週間ほど経ち、イオに関して少しずつ分かる事が増えてきた。

 一つは、実体から再び僕の中へと納まる事が出来るという事。これは公共機関で移動する際に、とても便利である。

 もう一つは、食事や排泄の必要ないという事が分かった。活動する為のエネルギーは、全て僕と繋がる光の粒子から取得している。

 なのでイオ自身は食事の必要ないのだが、何かとおねだりをしてくるので、一緒にご飯を食べる事が多い。

 ちなみに、食事をする時に独り言で、『美味しい』という言葉を口にすると、何故か喜ぶのが不思議だ。


 ―――――


 平日は、もっぱら体力作りと反復訓練。ランニングをしたり、筋トレを行ったり、基礎訓練を行う毎日だった。

 そんなある日、学園で東御先生から呼び出しを受ける。

 放課後に教員室に来いとの事だったので、授業が終わったら直ぐに向かう事にした。

 職員室に行くと、東御先生が椅子に座っていた。机の上には資料と思われる紙束が置かれている。


「すみません、遅くなりました」

「大丈夫だ。急に呼び出したりして悪かった」

「いえ、特に予定はなかったので」

「そうか。では早速だが、本題に入る。立科、同好会を設立する気はないか?」

「はい?」


 突然の言葉に、僕は困惑する。東御先生は机の上の資料を手に取ると、一枚を僕に手渡してくれた。


 1・部活の活動内容は自由

 2・設立条件は3名以上の部員を集め、顧問の教師の許可を得る事

 3・同好会は最低2名必要


 僕が受け取ったのは、そんな内容が書かれた用紙だった。


「あの、いきなり過ぎでちょっと意味が分からないのですけど?」

「ああ、すまない。説明不足だったな。簡単に言うとだ、学園内にも、『祓魔師』として活動がしやすい場所を確保しておいた方が良いのではないかと、佐久穂先生から話が出たんだ」

「"穢れ"が発生した場合、すぐに駆け付けられる様にですか?」

「それもあるが、一番の理由は、お前達が学園内で自由に使えるスペースを確保したかったからだ。仮にも非公開組織なのだろう? それならば、人目につく場所で活動をするよりは、身近で秘密裏に活動出来る空間があった方が都合が良かろう」

「まぁ、確かに」

「幸か不幸か、学園全体の生徒の人数が少ないせいで、部室として使える教室が余る状態だ。そこを使えば、他の生徒達に見られる事もないだろう」

「確かにそうかもしれません」


 僕は渡されたプリントを見つめる。そこには部活動に関するルールが書かれている。ざっと目を通してみると、結構緩い内容の物が多かった。


「それにだ、私としては、『祓魔師』も大切ではあるが、生徒としての本業を忘れて欲しくはないと思っている。勉学や友人との交流も大切にして欲しいのだ。そこで、この話は丁度良いと思ったのだ。どうだろうか?」


 僕は少し考える。

 確かに、言われてみればそうだ。今までは、『祓魔師』になる事だけに気を取られていたけど、学校生活だって大切な思い出の一つだろう。

 友達と楽しく過ごしたり、時には馬鹿な事をして怒られたりと、そんな青春の一ページを刻んで欲しいと東御先生が思ってくれるのなら、こんなにありがたい事は無い。


「分かりました。この話をお受けします」

「引き受けてくれるのか。ありがとう」

「ちなみに佐久穂さんにはお話したんですか?」

「ああ、既に署名を貰っている。『お昼ご飯をアオイとゆっくり食べる場所が確保できた!』と喜んでいたよ」


 そう言いながら東御先生は、口元を手で隠しながら笑う。佐久穂さんらしい反応に、思わず笑みが零れた。


「私としても、放課後に二人の訓練を見てやれるから、一石二鳥さ」

「お、お手柔らかにお願いします」

「善処しよう。しかし、本当に君達は面白いコンビだよ。だが、相性は抜群の様だ」

「そう見えますかね?」

「見えるさ。佐久穂は私との模擬戦で何度も負けているが、それでも立ち向かってきた。あの子は強い子なんだ。負けても折れず、諦めずに何度も何度も挑んできた。私はあの子の根性を見習いたいと何度も思ったものだ」

「佐久穂さんは負けん気が凄いですからね、それに、自分の力を高めたいという向上心もあると思います」

「そして立科も、彼女と同じぐらいの負けん気だ。二人とも負けたくないという気持ちが強い。その気持ちがある限り、お互いに高め合っていけるだろう」


 僕はその言葉を聞いて嬉しくなる。佐久穂さんだけじゃない。自分も同じように負けたく無いと東御先生は思ってくれている。その事実が何よりも嬉しい。


「二人は、共に歩む相棒となるだろう。私はそう信じているよ」

「はい!」

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