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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第一章 ゼロ距離なカノジョ
21/77

21話

 休憩を挟み、再び訓練を始める前に、水分補給を行う。

 美鈴さんが用意してくれたスポーツドリンクを飲み干すと、冷たい感触が喉を通り抜けていき心地よい気持ちとなる。

 隣に座っている佐久穂さんも同じように飲み干し、汗だくの顔にタオルを押し当てる。


「ぷはぁ~生き返るー」

「お疲れ様。もう薙刀を扱える様になってきたね」

「そうかな?」

「うん。初めてとは思えないぐらい、上達している様に見えるよ」


 佐久穂さんは僕が言った言葉を否定せず、むしろ照れたように頬を赤らめていた。


「えへへ」

「佐久穂の筋が良い事は確かだ。このまま基礎を疎かにせず積み重ねていけば、実技試験も受かる可能性は十分にある。だが、油断は禁物である事を忘れないように」

「分かってますよー。でも、もっと褒めてくれてもいいじゃんー」


 真正面から誉められた事が恥ずかしかったようで、顔を真っ赤にしながらも東御先生に抗議する。


「す、すまん。少し言葉が足りなかったようだ」

「玲ちゃんは、いつも一言足りないんだから」

「いや……本当に申し訳ない。この短時間でここまで成長しているとは思わなかったんだ」


 東御先生が佐久穂さんに謝り、彼女は冗談のつもりで言ったのだろう、慌てて両手を振る。


「そんなに頭下げなくても大丈夫ですよ!? アタシのちょっとした冗談ですし!」

「しかし……」

「とーみセンセーがアタシ達の訓練を手伝ってくれて、凄く嬉しいんだから! 知っている人からだと、安心して素直に練習できるんですよね。アオイもそう思わない?」

「もちろんだよ」


 僕は佐久穂さんの意見に同意し、力強く答える。


「そうか……それならば、良かった」

「ほらっ、玲ちゃんが気にする必要なんて無かったわけだし、もうこの話は終わり!」

「分かった。ありがとう。では引き続き訓練を開始する……前に、立科」

「はい」

「君の身体に取り込んだ"穢れ"の力を見せてもらいたい」

「それは構いませんが……まだ、使い方が把握出来ていない状態です」

「それでも構わない。これは訓練なのだから。私と佐久穂先生がいらっしゃる間に、少しでも感覚を掴んで欲しい」

「分かりました、頑張ってみます」


 東御先生は、僕に幾つかの指示を出してくる。佐久穂さんは美鈴さんと共に少し離れた場所に立ち、こちらを見守っている。


「まずはおさらいだ。力を持つ、『祓魔師』は、"穢れ"から取り込んだ力を利用して、様々な事が出来るようになる。ある者は、銀の弾薬を作り上げ、またある者は、一時的に自身の肉体を強化する事で、戦闘をこなすことが出来る。他にも色々と手段はあるが、基本的には取り込んだ力を使用する事を心掛けて欲しい」

「取り込んだ力を利用するのは理解できていますが……どのように再現するのが正解なんでしょうか?」


 僕は疑問を口にする。"穢れ"の力を使う。その行為は、今までの常識を覆すような出来事だ。

 僕が抱いた感想は、まさに『化け物の力を自分のものにする』というものだった。

 その事実を受け入れ難いのと同時に恐怖もあるのだけれど……不思議と嫌悪感は無かったのが救いだっただろうか? ともかく、その考えに至るまでにはそれなりに時間が必要だった。


「良い質問だ。答えとしては……君の中に眠る力がどういったものなのかを把握する事が必要だ」


 そう言うと東御先生は、自分の胸に手を当てながら僕に話しかけてくる。その瞳は真っ直ぐで僕の姿を映し出していた。僕達は向かい合うようにして話を続ける。


「略式名称になるが、『弾丸作成』『身体能力強化』など、そういったものを立科にも使用する事が出来ると私は考えている。どのような原理で発現しているのか、それを意識する事で新たな発見があるはずだ」

「なるほど」


 僕は相槌を打ちながら東御先生の言葉に耳を傾け、その思考を巡らせていく。

 東御先生は僕に説明を続けていく。


「先ずは立科の中にある取り込んだ"穢れ"の力を感じ取ってみろ。呼吸を整えて、全身の血液が循環するイメージを持つ。それが出来たら後は流れに身を任せるだけだ」


 東御先生の説明を聞き終えると、僕は言われた通りに実行する。

 手を握り締め、目を閉じ、大きく息を吸い込む。肺いっぱいに空気を取り込んでいくと少しずつ落ち着いてくる。そしてゆっくりと吐き出していく。

 僕はそのままの状態を暫く維持し続けていく。次第に体がポカポカとし始め、熱さを帯びていく。

 その状態は一分程続いた頃、唐突に変化が訪れる。


(あれ? なんか……掌が熱い?)


 僕の異変を察知した東御先生は、僕の肩に手を置き、声をかけてきた。


「集中してみなさい」

「はい」


 東御先生に促されるまま、僕は体内に流れる血の流れを意識してみる。すると、まるで水のように澄み切った何かが血管の中を流れていく。


「……!」


 それは僕の体に染み込み、広がっていき、体内を駆け巡り始める。

 体の中心に集まるように、心臓を中心として徐々に体の隅々まで行き渡っていくのが分かる。

 佐久穂さんが心配そうな表情で僕を見つめている。東御先生も美鈴さんも黙ってこちらを見ており、皆一様に不安そうな表情を浮かべている。


「……上手く言えないんですけど……僕の中に、何か不思議なものを感じます。これが、東御先生の言っていた力ですか?」


 僕は東御先生に問いかけるが、返事は返ってこない。代わりに美鈴さんが口を開き、言葉を紡いでくれた。


「立科君の言っている事は正しい。それは確かに、キミの中に存在する力の一端。その力は、取り込んだ"穢れ"の情報を読み取り、その情報を元に形を成すもの」


 その言葉を聞いた東御先生は、美鈴さんをジッと見つめる。美鈴さんは、東御先生と視線を合わせ、お互いの気持ちを確かめ合っているかのようにも見えた。そして東御先生が僕に対して言葉を放つ。


「立科、自分が何を出来るようになったのか……知りたくはないかい? 私が許可する。やってみるといい」

「……」


 一瞬、躊躇してしまうものの好奇心の方が勝ってしまい、「わかりました」と一言だけ呟くと東御先生から少し離れた場所に向けて構えてみた。

 掌に光の粒子が集まり、渦を巻き、球体へと変わってゆく。それは地面へと落ちる事なく、空中に浮かんだままだった。

 光は段々と大きくなり、直径二メートル程の丸い玉になる。光が晴れると同時に、そこにいたのは一匹の黒い狼だった。

 漆黒の毛皮は艶があり、瞳の色は紅蓮に染まっているように見える。その双眼からは、あの時とは違い、強い意志を感じる事が出来た。

 コイツはまさか……!?

19時にも

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