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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第一章 ゼロ距離なカノジョ
20/77

20話

「さてさて、おさらいといこうか。『祓魔師』の試験に関して、学科は私が。実技は玲ちゃんに指導をお願いする。ここまではいいかい?」

「ああ、任せなさい」


 美鈴先生が楽しげにしているのに対し、東御先生は学園でも見かける、いつもどおりの無愛想である。


「二人に与えられる準備期間は、一か月。その後、学科試験と面接を通過し、実技試験に合格してもらう事になるんだけど……」


 美鈴さんはそこまで話すと、チラリと佐久穂さんを見た。彼女はコクリとうなずくと、美鈴さんの話を引き継ぐ。


「内容については、既に二人には何度か伝えている事が多く含まれているから、予習というよりは復習と考えていてほしいと思っているよ。今ので私の方針について理解できたかな?」

「はい。何とか」

「ならよかったよ。瑠依ちゃんは?」

「ばっちぐー!」

「よろしい!」


 美鈴さんは満足げな笑みを見せると、僕達に向き合った。


「では、実技の話題に入ろう。玲ちゃん、よろしく!」

「……はあ。まあ、いいでしょう。まずは基本的な話からいきましょう。二人には最低限の体力を身に付けてもらう。それと並行して武器の取り扱いにも慣れて貰う必要がある。私から見てこの二つが合格値に達したところで、技の訓練を始めようと思う。質問はあるか?」

「はい、とーみセンセー。一ついいですか?」

「なんだ、佐久穂?」

「とーみセンセーって美鈴伯母さんと同じ組織? の一員なんですか?」

「いいや、私は二人から見たとおりの教師だ。『祓魔師』として働いている訳でもなく、能力を持っている訳でもない、ただの一般人だよ」

(……東御先生、絶対に普通の人じゃないと思うのですが)

(……美鈴伯母さんが頼みに行くぐらいだし、何かあるよね?)


 佐久穂さんとアイコンタクトを交わしつつ、東御先生に視線を向ける。背中を向けて用意されたホワイトボードに何かを書き込む姿は、まさしく教師というべき姿で、違和感が無い。


「では、訓練内容についてだが、私の方でメニューを用意した。最初はかなり厳しく感じるが、これぐらいはこなせるようになってもらう」


 東御先生がこちらを振り向くと、ホワイトボードを軽く叩く。


「まずはランニングからだ。これを毎日続けてもらい、徐々に距離を伸していく」

「はい」

「それから、腕立て伏せや腹筋などの基礎的なトレーニングも。もちろん、休憩時間はちゃんと取るつもりだから安心してくれ」

「分かりました」


 隣にいる佐久穂さんは、手帳を取り出してメモを取っている。その姿は、仕事モードに入ったようで、先程まで見せていた可愛らしい少女の面影はない。


「次に武器の取り扱いについてだが、佐久穂先生?」

「玲ちゃんに言われたとおり、一通りは揃えておいたよ。初心者用の奴だけどね」

「それでかまいません。ありがとうございます。では、案内して頂けますか?」

「はいよ。三人共、私に着いて来ておくれ」


 そう言って、応接室から連れ出され、エレベーターへ案内をされる。

 そこで美鈴さんが鍵を取り出して差し込むと、どうやら地下へと向かっているようだ。

 到着した先は、何の変哲もない通路であった。

 しかし、目の前には扉がいくつも存在し、それぞれの前には数字が書かれたプレートが掛けられている。


「えっと、ここの施設は何があるんですか?」

「ここの担当地区で働く、『祓魔師』の鍛錬場さ。多少の荒事では外に漏れる事もなく、武器の保管所としても利用されている。あ、試験場でもあるよ」

「な、なるほど」


 美鈴さんの返答を聞いて、僕は少し驚いた。そして同時に、僕達が住む世界とは隔絶されている場所なのではないかと思う。


「ちなみに、これから使うのは、この建物の中で一番大きな部屋さ。何やら玲ちゃんが試したい事があるんだってさ、立科君」

「僕ですか?」

「そうそう。立科君が取り込んだ"穢れ"の力も確認したいんだろうね。いやぁ、流石は玲ちゃん。行動が早い」

「利用できる力なのか、できない力なのか、それを見極める必要がある」

「そういうことだってさ、それじゃ、中に入るよ」


 美鈴さんに促され、僕達は部屋の入口に向かう。するとそこには、頑丈そうな扉が立ち塞がっている。

 美鈴さんは、傍にあった端末を操作すると、ピッと電子音が鳴り、音をたてながらゆっくりと扉が解放されていく。


「はい、どうぞ」

「失礼します」

「お邪魔しま~す」


 僕達は中へと足を踏み入れる。広さは学校の体育館ほどもありそうな広さだ

 天井は高く、壁際に設置された棚には多くの物が並べられている。

 美鈴さんは入り口のすぐ近くにある椅子に腰掛けると、東御先生に合図をし、観戦モードになる。


「さて、二人共。佐久穂先生に用意してもらった武器がある。手に取り、自分に馴染みやすいものを選んでくれ」

「はい」


 僕はそう返事をして、近くの壁に寄り掛かると、佐久穂さんと共に様々な種類の物が置かれているスペースに足を運ぶ。

 そこには、剣道で使用するような竹刀から両刃の剣までずらずらと並べられており、その他にも槍のようなものまである。

 置かれている武器には、長さや形に若干の違いがあり、使いやすさや、手に馴染むかどうかを確認していく。


「アオイはどうするー?」

「正直、何を選べば良いのか分からないなあ。佐久穂さんはどう?」

「アタシはもう決めたよ!」


 そう言うと、佐久穂さんは一本の武器を手に取り、僕に見せてくる。

 それは柄の部分が木製で、その先端には、鋭利に尖った刃物のように鋭い形になっている。


「薙刀?」

「そっ! 手にした時に、重さや取り回しの良さがしっくりと来たんだよ! どう思う?」

「うん。確かにいいかもね」

「確かにな。リーチを生かした戦い方をするには、丁度いい」

「でしょでしょ!」


 東御先生は佐久穂さんが持つ、薙刀を眺めながら話し始める。


「扱いに慣れるまでは少々大変かもしれないが、佐久穂のスタイルと非常に相性が良い可能性がある」

「ふむふむ」


 東御先生の言葉を聞き、佐久穂さんはその手を顎に当て、考える仕草をするのだが、その顔には、あまり緊張感は見られなかった。


「立科は、何か気になっている武器は無いのか? もし無いなら、私が見繕うが」

「そうですね……しいていえば、木刀でしょうか」

「理由を聞いても?」

「こういった物を扱うのは初めてなので、基本に忠実にいきたいです」

「了解だ」


 僕は東御先生に説明をしながら、いくつかの武器の中から、一振りの木刀を選び出す。

 それは白く染められた木刀であり、見た目だけで言えば一般的な物に見えなくもなかった。


「ほう、珍しいな」

「……普通じゃないんですか?」

「いや、白樫で出来た木刀だと思うのだが、そこまで白いのは、滅多に見るものではない」

「そんなもんですか」


 東御先生と佐久穂さんは僕の選んだ一振をまじまじと見つめ、美鈴さんに至っては、ニヤニヤとこちらを見つめている。


(美鈴さんがニヤニヤしてるって事は、この木刀は何かありそうな気がするんだけど……)


 一先ず、木刀を握り締めて軽く振ってみる。残念な事に、僕には一般的な木刀との違いは分からない。それもそうだ、木刀を握るのは今日が初めてなのだから。

 佐久穂さんの方はというと、すでに東御先生から何かしらアドバイスを貰いながら、熱心に訓練をしている。

 休日ながらも制服を身に付けて、薙刀を扱っている姿は様になっており、彼女が真剣な表情を見せると、普段の可愛らしさとのギャップもあって凄く格好良く見える。


(また新しい一面が見えた)


 嬉しさを噛みしめながらも、自分も訓練に集中しなければならない。

 東御先生に声をかけて、教わった事を反復しながら、何度も素振りを繰り返す。そして、ある程度時間が経ったところで休憩を挟むことにした。

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