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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第一章 ゼロ距離なカノジョ
17/77

17話

 次の日、いつもどおりに仕度を整え、学園へと向かう。

 昨日は、あの夢を見る事が無かった。これは自分自身で覚悟を決めた影響なのだろうか? 何にせよ、久しぶりに寝不足状態にならず、僕は学園へと辿り着く事が出来た。

 教室に入ると、僕に気付いたクラスメイト達が声を掛けてくれる。


「おはよう、立科君」

「おっす、立科」

「おはよ、立科くん」

「おは……よう?」


 皆が僕に挨拶をしてくれるのだが、視線が一か所に固まっている。

 それもそのはず、僕の隣人が、ブツブツと呟きながら机に突っ伏しているからだ。

 周りからの視線は、「早くなんとかしろ」と言わんばかりである。


「佐久穂さん、どうしたの?」


 僕は声を掛けてみるが、反応は無い。

 仕方ないと思い、僕は彼女の肩に手を置き、軽く揺さぶる。すると、彼女はガバッと顔を上げた。そして、僕と目が合うと、何故か驚いた様子を見せた。


「な、なに!?」

「何って……大丈夫?」

「だ、だいじょばない……」

「えっと……何かあった?」


 僕の質問に、彼女は無言のままコクリと首を縦に振る。


「何があったか教えてもらっても良いかな? 僕で良ければ相談に乗るけど」


 彼女がこうなる原因は、考えられる限りだと一つしかない事は分かっていたので、一応尋ねてみたのだけども……。


「言えない……」

「やっぱりか」

「だ、だって! 恥ずかしいし、アオイに嫌われちゃうかもしれないし……ああっ、もうっ!」


 僕の目の前で頭を抱えながら、顔を真っ赤に染め上げながら慌てふためく彼女を見て、思わず苦笑してしまう。


「嫌わないから、安心して欲しいな」

「本当?」

「もちろん」

「本当に、アオイはアタシの事を嫌いにならない?」

「むしろ、可愛いなって思っているよ」

「へっ? かわっ……」


 僕の言葉を聞いた佐久穂さんは、目を丸くしながら口をパクパクさせている。まるで金魚のような動きだが、可愛らしいのだから不思議なものだ。

 佐久間さんは、僕の言葉が信じられなかったようで、何度も僕に聞いてくる。答えが間違っていない事が分かると、今度は嬉しそうに微笑み始めた。


「えへへ、そうだったんだぁ」


 佐久穂さんは照れたように頬を掻きながら、はにかみ笑いを見せている。

 彼女は感情表現が豊かだ。見ていて飽きないし、一緒にいるだけで楽しく、これからも仲良くしたいと思う。

 それはきっと叶わぬ願いではない筈だ。


「ねえ、佐久穂さん」

「なあに、アオイ?」


 彼女は笑顔で返事をする。その声音は、普段よりも弾んでいる様に聞こえた。


「よければ、今日は寄り道をしながら一緒に帰りませんか?」


 僕の提案に、佐久穂さんの表情は一気に明るくなり、大きくコクりと首肯する。

 そんな彼女を見ていると、自然とこちらも幸せな気分になった。

「やったぁ!」とはしゃぐ彼女に、周りの生徒達は温かい視線を送っていた。

 多分、そこには僕も含まれていたが、佐久穂さんが喜んでくれるのならば、それで構わないと思った。


 ―――――


 放課後になり、佐久穂さんが鞄を持って、僕の方を向いて声を掛けてくる。

 しかし、なぜか躊躇う様な様子を見せた。


「あ、あの……ね。今から一緒に帰る訳ですけれども……そ、それって、いわゆるデートのお誘いですか……?」

「ええと……?」


 予想外の言葉に少し困惑してしまったが、すぐに彼女の言っている意味を理解し、同時に、佐久穂さんと同じぐらい自分まで赤くなっていくのを感じた。


「そ、そういう事になるね」

「……」


 佐久穂さんは無言になってしまった。

 もしかすると怒らせてしまったのではないかと不安に思ったが、そうではなかった様で、俯いて、もじもじとしているだけだった。

 そして意を決したのか、佐久穂さんはこちらを見つめると、口を開く。


「そのですね、アオイ!」

「は、はいっ!」


 僕も釣られて背筋を伸ばしてしまう。佐久穂さんは、真っ直ぐな瞳で僕を射抜いてきた。


「その……嬉しいよ! 凄く、すっごく!」


 佐久穂さんは、両手の指を絡めながらモジモジしていた。その姿はとても愛らしく、とても可憐に見えた。


「うぅー! でもね! まだちょっと早いんじゃないかなーって思うの! もう少し心の準備が欲しいというかさー! いや、勿論OKですよ? 大歓迎なんだけど、心の準備が出来ていないと言いますか……あぁー!!」

「あ、あの、佐久穂さん……?」


 突然、一人悶え始める彼女。その奇行に対して、戸惑いを隠せないでいた。


「えっと……とりあえず落ち着こっか?」

「うん……」


 先程よりは落ち着きを取り戻した様に見えるが、やはり頬を紅潮させており、チラリと上目遣い気味に視線を向けられると、胸が高鳴る。


「佐久穂さん」

「な、なんですかい?」

「多分なんだけど、僕と佐久穂さんが考えている事は、一緒だと思うよ」

「え……?」

「今日の佐久穂さんが、いつも以上に楽しげで、喜んでいたように見えたのは気のせいじゃないよね?」

「……うん! うん! 気の所為なんかじゃありませんよ! なんせ、この佐久穂瑠依は、本日超絶ハッピーなのですから!」

「ははは、確かにそうだ」


 僕は小さく笑う。佐久穂さんは満面の笑みを浮かべながら僕に向かって語り掛けていたのだ。

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