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ゼロ距離カノジョと祓魔師への道  作者: 詩永あえし
第一章 ゼロ距離なカノジョ
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15話

 佐久穂さんとの会話は途切れる事は無く、気が付いた時には、玄関の呼び鈴が鳴る音が聞こえた。

 僕は立ち上がり、玄関へと向かう。佐久穂さんも僕の後に続いて付いてきた。

 玄関の鍵を開けると、そこには軽く手を振りながら笑みを浮かべている美鈴さんの姿があった。


「やあやあ、お待たせしたね」


 佐久穂さんは、僕の横を通り過ぎると、そのまま勢いよく美鈴さんに抱き着いていた。


「うわーん、美鈴伯母さんだー」

「おやおや、今日は随分と甘えん坊さんだね。まるで何かをおねだりする子供みたいだ」

「ギクッ!」


 美鈴さんの言葉に、佐久穂さんはビクリと身体を震わせる。どうやら抱き着いた彼女に対して、美鈴さんが力強く抱き返しているようだ。

 佐久穂さんは、美鈴さんから離れようと腕に力を込めるが、それを阻止しようと更に力を込めていく美鈴さん。


「ちょ!? 伯母さん! 苦しいよ!」

「突然、電話で私を驚かせた罰さ。ほれほれ~」


 佐久穂さんが苦しんでいるにも関わらず、美鈴さんは彼女を離そうとしない。それどころか、彼女の頬に自分の頬を当ててグリグリと動かしていた。

 佐久穂さんは必死に抵抗するが、無駄に終わる。


「……むぐぅ」

「いひひっ」


 スキンシップが過剰に思えるのは、きっと僕が疲れているせいだろう。そう思う事にした。


「あの、そろそろ止めた方が……」

「いーのいーの。瑠衣ちゃんだって、私が本気でやってる訳じゃないって分かってるんだし」

「ぷはっ! もぉー、伯母さんったら! いい加減にしてよね!」

「えぇー? 嫌だった?」

「別に、そんな事はないけど……」


 佐久穂さんは、少しだけ困り顔でそう答えた。

 立ち話も何なので、僕達は美鈴さんを家の中に招き入れる。

 リビングに案内すると、ソファに腰掛ける美鈴さんは嬉しそうに微笑んでいた。


「電話をもらった時は驚いたよ。まさか立科君だけでなく、瑠衣ちゃんまで、『祓魔師』になると言い始めるなんてね。いやはや、これは流石に予想外だったねぇ」


 美鈴さんが佐久穂さんに視線を向けると、彼女は大きな胸を張りながら、得意げな表情を浮かべている。

 僕は二人にお茶を出すと、自分の席に座って美鈴さんの話を聞く事にした。


「こちらとしては、立科君が、『祓魔師』として力を貸してくれるのなら、それは願ったり叶ったりだよ。ただ、二人は学生だからね。無理強いするつもりもない」

「ありがとうございます。そう言ってもらえると、助かります」

「理由を聞いてもいいかな?」

「はい。実はですね――」


 僕は『祓魔師』を目指す事になった経緯を、美鈴さんに説明していった。

 その時に話し合った結果、佐久穂さんも共に、『祓魔師』を目指してみるという流れになった事も伝える。

 美鈴さんは、僕の話を真剣な眼差しで聞いてくれている。

 一通りの説明を終えると、美鈴さんは、何度か小さく首を縦に振っていた。


「なるほどね。立科君は、瑠衣ちゃんの事を思って、『祓魔師』になろうと思ったわけか」

「不純かもしれませんが、そうですね。僕は佐久穂さんに救われました。あの時、佐久穂さんがいなければ、僕は間違いなく死んでいたでしょう」

「でも、今こうして生きている。身体検査の時には無欲の様に見えていたが、きちんとキミにも目的が出来た様で安心したよ」


 美鈴さんはそう言うと、ニッコリと優しい笑顔を見せてくれた。

 僕はその言葉に嬉しくなって、つい口元が緩んでしまう。


「……ところで、一つ聞きたい事があるんだけど、良いかい?」

「何でしょうか?」

「立科君は、瑠衣ちゃんの事が、好きなのかい?」

「ブフゥ!?」


 美鈴さんの問いかけを聞いた瞬間、僕は口に含んで居た麦茶を吹き出しそうになった。何とか堪えたが、気管に入ってしまい、咽てしまう。

 咳き込む僕を見て、美鈴さんは楽しげに笑っている。


「ゲホッ! ゲホッ!……あ、あの、どうしてそうなるんですか?」

「いやぁー、だってさ。立科君が、『祓魔師』になる動機が瑠衣ちゃんを護る為であり、護られる側の瑠衣ちゃんまで、『祓魔師』になると決めたのであれば、もう確定事項じゃないか。好きじゃなきゃあ、そこまで出来ないだろうし」

「いやいやいや! そういうのじゃなくて! いや、僅かにそういう気持ちもありますが、あくまで僕は佐久穂さんに恩返ししたいと思ってるだけです!」

「ほほう、そうかそうか。立派じゃないか。うん、青春だね」


 美鈴さんは、納得した様に何度も深く首肯している。

 佐久穂さんは、顔を両手で隠しているが、指の隙間からこちらの様子を窺っているのが分かる。

 僕は佐久穂さんをチラリと見つめると、彼女もこちらを見つめ返してきた。そして、僕と目が合うと、お互いに照れ臭く感じてしまい、目を逸らす。

 僕と佐久穂さんの様子を見た美鈴さんは、ニヤけながら僕達を見つめてきた。


「まあまあ、お熱い事で。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいに仲が良いね」

「うぅ……。伯母さんがいじわるする……」

「あはははっ、ごめんね。瑠衣ちゃんの反応が可愛くて、つい意地悪しちゃった」

「むぅ……」


 美鈴さんに弄られて、佐久穂さんは頬を膨らませている。そんな様子の彼女を見つめながら、美鈴さんは嬉しそうに笑みを浮かべていた。


「でもまあ、それも一つのきっかけかもしれないね。二人共、お互いが大切な人なんだと再認識できただろうし、これから一緒に頑張っていけばいいんじゃないかな」


 美鈴さんの言葉に、僕は素直に感心してしまう。

 佐久穂さんと出会ってから、僕は彼女と過ごす時間を大切に思っている。それはお互いがお互いに感じている事だろう。

 とても喜ばしい事だ。佐久穂さんにとっても、僕にとっても。


「よし、それじゃあそろそろ本題に入ろうかね」


 美鈴さんの言葉に、僕と佐久穂さんは姿勢を正して向き合う。

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