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カラーコーンとコーンバー

作者: 三無文虫

歩きスマホは勿体ないなって話です

街を歩いていると、たまに奇妙な物を見つける時がある。

妖怪とか幽霊みたいな、存在そのものが不可解な物ではなく、普段は気にもとめないありふれた物。

しかし、何か1つが欠けているありふれた物。

だからこそ逆に気になってしまうのだ。


私が出勤中にも、奇妙な物があった。


いつも歩いている駅までの道、人が6人横並びになっても余裕があるくらいには広い歩道橋の上。

歩道橋の中腹あたりに、3つの赤い3角コーンとそれらを繋ぐ虎柄のコーンバーが3角形の形に置かれていた。


普通に考えれば、なんら不思議な物ではない、多少道が狭くなる、くらいの認識に収まるもののはずのその光景からはあるものが欠けていた。


人間と、置かれた理由だ。


その3角コーナーの周辺には、関係者らしき人間がだれ1人いない。

ただ静かに置かれている3角コーンは、何故か妙に気になるオーラを発していた。


それは恐らく、人がいないこと以上に何故置かれたのか全く分からない点にあるだろう。


3角コーナーの中に何かが置かれている訳でもなく、どこかが破損している訳でもない。

かといってペンキが塗りたてということもなく、汚れていることもない。


あれは何のために置かれているのだろう。

何を仕切って、人に何を寄せ付けさせないようにしているのだろう。


どうしても気になってしまう。


視認して、通り過ぎるまでの間、片時もその光景から目を離すことが出来なかった。


そして、近くで見ると分かることもある。


意外と狭い。

人が3人ギリギリ入れるくらい。


もしかしてここだけ脆くなってて踏み込んだら崩れてしまうのかな。


誰か人でも死んだんじゃないのか。


いくつかの思考が脳内を駆け巡り、考察する。


そういえば俺の前を歩いていた人が、3角コーナーの中をじっと見つめていたな。


もしや妖怪や幽霊の類なのか。


魔界とかに繋がっていたりするのか。


ますます思考の域が広がっていく。

自分自身も3角コーナーをじっと見つめていたことに気づかない。


その3角コーナーは、次の日も、その次の日も、変わらず歩道橋の橋にあった。

ひと月だったあとも置いてあった。


その頃にはふとした拍子に気になるくらいの存在になっていた。

6人分の幅が4人分になる場所、程度のものになった。


しかしどれだけ経っても、置かれた理由は分からなかった。

いつ通っても人はいないし、なにか変化があることもなかった。


もしかすると本当に魔界への道だったのかもしれない。

3角コーナーが無くなるまでの2年間に、どこかで冒険があったのかもしれない。


奇妙な3角コーナーが消えるのと同時に車の免許を取得し、自動車通勤になった。


いつもと違う道に少し新鮮味を感じていると、道路の上の方に橋を見つけた。

もう長い間使われていないように見える錆びれた橋。


右に山、左に山、一体どこからどこに繋がっているのだろう。

もしかしたら魔界にでも繋がってるのかもしれないな。


橋が視界に映る10秒程度の短時間、私はその奇妙な物から目を離せなかった。

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