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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
邂逅編

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06話 見知らぬ子供

-サマリード領 ロコナ村 トーラス村長-


 やれやれ、面倒なことにならなきゃいいが。ここ連日、領主の捜索隊が来るようになった。何でも領主の娘が行方不明になったとか。これだけ探して見つからないなら正直諦めた方が良いんじゃないのかねぇ。


 オルナの森で居なくなったならとっくに熊か狼に喰われてる。子供が一人でどうにか出来るはずがない。ましてや女の子。体力的にも厳しいだろう。

 誘拐?こんな片田舎の辺境領地では有り得んな。サマリード領は近隣じゃ貧乏で知られてる。身代金目的ならもっとマシなところが沢山有る。


 可哀想な話だが、私達にはどうでもいい。捜索隊が来る度に食料と水をやらなきゃならんし、休憩場所も空けなきゃならん。早く終わって欲しいものだ。

 

 さて、そろそろ畑の様子でも見に行くか。今年は麦の出来が良い。例年よりも備蓄量が期待出来る。収穫が今から楽しみだ。


 おや?何だろう、あの子供は。この村の子供ではないな。格好もあまり見ない感じだが・・・犬を2匹も連れてるのか。しかも大きい。見た感じでは大人しそうだが咬まれても嫌だし、警備の連中に知らせておくか。



-ロコナ村 衛門詰所 警備兵ベック-


 そろそろ交代の時間か。早く行って夜番の奴らと替わってやらんとな。

 待機所で朝飯用の燻製肉を齧っていると神妙な顔つきのアレンが入ってきた。


「柵の外に見たことの無い子供がいる?」


 アレンがまた変なことを言い出した。トーラスからそう言われたらしい。


「で、何で俺達がその子供の相手をしないといかんのだ?」


「その子は大きな犬を2匹連れているらしい。下手に突いて咬まれるのは嫌だとさ」


 アレンは朝飯でもらった燻製肉を頬張りながら面倒そうに言った。


「くだらんな。俺たちは警備のために居るんだ。子供の相手をするためじゃない」


「ベック、警備ってもここらに盗賊なんか出やしない。俺らは村の連中からは無駄飯食いと思われてんだ、少しぐらい何かやってやらんと。俺だって気は進まないさ」


 そう言うとベックは困った顔をして黙った。やがて諦めたように言った。


「もうすぐ見張りで立たなきゃならんしな。ついでだ、さっさと済ませよう」


「だな、食ったらそのまま向かおう。その子供は畑の方に歩いて行ったらしい」


 二人共、口に含んだ肉をそのままに壁に立てかけてあった槍鉾を手に取ると、感触を確認しながらゆっくりとした足取りで待機所を後にした。


 麦畑は村の西側から出てすぐの場所だ。西側出入口に向かって歩き、近づいて様子を伺う。確かに見慣れない格好の子供が畑の傍で立っていた。

 


「嬢ちゃん、どこから来たんだい。この辺の子じゃないよね?」


 とりあえず俺から話しかけてみる。育ちが良さそうな雰囲気だ。服装もこの辺の村人が手に入れられるものじゃない。7歳ぐらいかな?この年齢の子供が一人でうろついているのはおかしい。彼女を挟むように犬が座っている。こちらを注視しているが動く気配はない。警戒しているのとは違うようだ。


「アレン、子供なんだぞ。普段通りに聞いたら怖がって当然だろう?」


 ベックが呆れた顔だ。まぁそうだよな。厳つい野郎が2人も武器持ってくればなぁ。


 少しでも怖がられないようにしないと。俺は武器をベックに預けた。

 しゃがんで目線を彼女に合わせる。上から目線は威圧してるのと変わらんだろう。


「すまないね、でだ。少し話を聞かせてくれないかな?」


 どうも彼女は困惑している様子だ。怖がっている感じでもない。

 しかし・・・どうも反応が思っているのと違う。なんだろう?

 兎に角、幼い子供を放っておくわけにもいかない。まずは村へ連れて行こう。落ち着いたら何か分かるかもしれない。


「ここに居ても仕方ない。村へ行って落ち着いて話をしよう。どうかな?」


 相変わらず困った表情のままだ。これは・・・ひょっとして耳が聞こえないのか?

 マズイな・・・だとすると厄介事を抱えることになりそうだが、こんな幼い子供を見捨てるのは気分が悪い。後で皆に相談して考えることにしよう。


 俺は立ち上がり、中腰になって手を差し出す。

 彼女はしばらく困った顔で俺の顔と手を交互に見ていた。

 やがて意図に気付いたのか、手を重ねてきた。表情が少し笑っているように見える。


「大丈夫だ、悪いようにはしないよ」


 強く引き過ぎないように加減し、手を引いて村へと誘導する。抵抗する素振りは無い。犬達もゆっくり後からついて来ている。余程訓練されているのか吠えもしない。


「アレン、どうするんだその子供?」


 ベックが理解出来ないって表情丸出しで聞いてきた。


「村で保護する。耳が聞こえてないみたいだぞ、この娘」


 ベックは驚いた顔をし、すぐに彼女に哀れみの視線を向ける。やるせない表情だ。


「そうだったか・・・ひとまず連れ帰ってトーラスに相談だな」


「ああ、この娘をここで放り捨てるのは俺には出来そうにない」


「同感だ。お前がそんな奴だったら今後二度と口聞いてやらん」


「何だそりゃ、まぁベックも同じ意見で嬉しいよ」


 帰って村長に相談か。まぁ、悪いようにはならないだろう。そんな気がする。



「なるほどねぇ、耳が聞こえていないと」


 トーラスは困り切った顔だ。厄介事ではあるが無慈悲な対応も取れない。そんな気持ちが見て取れる。『余計な事しやがって』言わなくても表情から伝わってくる。


「正確にはその疑い、かな。聴こえづらいだけかも知れないが」


 辻褄を合わせればその線が強いってだけで、確信が有るわけじゃない。俺は医者じゃないし、一時的な症状なのかもしれない。

 ただし、今の状態が相当危険なのは間違いない。保護は当然の処置だろう。


「で、お二人はどうしたいので?」


 トーラスとしては結論を出したくないのだろう。この村はあまり裕福とは言えない。簡単に他所から来た子供を養ってやるとは決められない。まして村の労力の足しになりそうにない女の子供だ。


「それは俺達が決めれる話じゃないさ。だから村長に相談しているんだろう?」


 少し頭を冷やせばこの展開は予想出来た。だから俺とベックはトーラスに丸投げすることに決めていたのだ。そもそも俺達の頭は難しいことを考えるのに向いてない。こいつは頭が切れるが冷たく成り切れないところがある。任せても最悪の展開は無いだろう。


「交替を待たせているんでな。悪いが急ぐ。後はよろしくな、村長」


 俺とベックは困り顔のトーラスを尻目にそそくさと村長宅を後にした。


「はぁ・・・私にどうしろと言うのですか」


 目の前の椅子に行儀良く腰掛ける子供。年の頃は7~8歳だろうか。不思議そうな目で私を見ている。アレン達が言うには耳が聞こえていないらしい。一緒についてきた犬は2匹とも部屋の隅で大人しく座っている。


 服装を良く見るとそれなりの値段がしそうなものだ。この辺の村人が着れるものじゃないだろう。大商人か下級貴族の娘なのだろうか・・・ん?そう言えば行方不明の娘って話が有ったな。この娘がそうなのか?


 しかし何日か前の話だし、目の前の娘は全然憔悴している様子も無いんだが・・・。

 次の捜索隊は確か今晩来るはずだ。その時に確認してもらうとしよう。

 上手く行けば村に報奨金の一つももらえるかも知れん。

 違ったらそれからまた考えるとしよう。

 

「さてと、まずは捜索隊のために食事の準備をさせねばならんか」


 どちらにしろ用意はしなければならんのだ。全く、次から次へと厄介事ばかりだ。


「ここから動かないで下さいね、面倒事は御免です」


 そう言い残してトーラスは準備の段取りを頭で考えながら自宅を後にした。

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― 新着の感想 ―
[一言] エピソード5までは多分読まなくても問題なさそう
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