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05話 初めての村

-森の中 河川沿いの砂利道-


 川に沿って下流へ向かう。そのうち人里近くに出るはずだ。


 子供の体格とは言えヒト型に成れた恩恵はかなりのものだ。考えずに直感的に動ける。これは非常に有難いことだ。一方で犬型の動きには違和感が半端ない。元々犬を飼っていたのでその時の記憶を基に動かしているのだが、再現しきれていない。なんだろう?不自然過ぎる。

 自分の動きを犬側からも観察してみると、こちらも人形的な雰囲気が強くて気色悪い。何が原因なのだろう?


 そもそも生き物は常時呼吸をしている。寝ている時以外は常にバランスを取って姿勢を保っている。無意識に身体の重心を保つように動いているのだ。つまりバランスの取り方や動作に問題が有ると本来の動きから外れて不自然、もっと言えば不気味になるわけか。


 脊椎動物の動作は骨格を基にしている。骨格と筋肉の動作範囲を超える動きは出来ない。どんな動作をするにも関節という可動域の制限が掛かる。柔軟性にも適度な範囲というのはあるか。

 原因に気が付いて修正を始めると途端に不気味さが激減した。

 面倒ではあるがこれも慣れだ。不審に思われないためには必要な処置だろう。


 歩きながら口の中を構成し直す。奥に声帯を造り、肺に相当するものを作成する。

 息を吸う。息を吐く。ゆっくり呼吸をしてみる。まぁ、それっぽく動くだけだが。


「すー、はー、すー、はー」


 声帯を振動させ、発声してみよう。


「あー、うー、えー」


 いいね、声が出せるようになってきた。


「ぐるるるる、わん!」


 犬はもうちょい工夫が必要だな。まぁ、犬は喋らないから適当でもいいか。それっぽくなれば違和感も無いはずだ。


「あめんぼあかいなあいうえお」

「となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ」


 活舌もそうだがこの身体に見合った声に調整しなければ。声質は年相応に高めがいいな。


「あー、あー?あ、あ、あ、あ、おー」


 うん、8歳児の女の子ならこのぐらいだろう。


 うーん?まだ何か違和感が・・・あぁ瞬きか。そういやしてないね。無意識で動作する部分は気を付けないとダメだなぁ。早すぎず遅すぎず・・とこんなもんかな。

 あとは表情か。吸収時に表情筋の構成は分かっている。動かし過ぎても不自然だろう。


 やってみるとほんの少しの動きで充分なのが理解出来た。

 基本は微笑でその都度少し変化させればいいか。

 鉄面皮の幼女って・・・どんな需要があるんかね。

 まぁ無表情よりははるかにマシか。


 だいぶ所作がまともになってきた。これなら違和感もあまり感じさせないだろう。

 それなりの距離を歩いたし、朝になってしばらく経つ。川の流れも穏やかになった。

 下流域に入ったのでそろそろ人の生活圏に入る。

 お、あれは橋だな。あそこから道に繋がるだろう。歩いて行けば村か街に着きそうだ。

 

 この辺りは木も疎ら。いつの間にか森を抜けていたようだ。

 丸太を並べたような橋の右は山側に延び、左側は野原が広がっている。

 道幅は10メートル程度。土剥き出しで石が所々見える。踏み固められ、轍の跡も在ることからそれなりに交通量が有ることが分かる。

 まぁ、左でいいか。とりあえずこっちが妥当だろう。何か先に在るはずだ。


 しばらく進むと建物が見えて来た。木造家屋が幾つか、他には倉庫と思しき建造物が雑に組んだ柵の内側に見える。あ、人がいるな。どうやら人里に着いたようだ。


 柵の外側から観察する。規模からすると村か。それほど大きくはない。住人規模は100棟を超えない程度。生活レベルも近代的とは言えないな。中世とまでは言わないがこの様子だと電気はまず無いだろう。何時だったかテレビで発展途上国の田舎町を取材してたのがあったが、それと似た印象を受ける。

 

 柵に沿って歩いて行くと畑に出た。これは麦か?結構な広さだ。まだ青いが収穫時には金色の見事な光景が見れそうだ。ここは農村地帯なのかな?


 そんなことを考えて佇んでいたら二人ほどこちらに近づいてきた。

 振り返って観察する。村人と違い、武装している。金属製の胸当てに槍鉾。ゆっくりと移動していて今のところ敵意は感じない。この村の警備兵だろう。

 逃げ出すのも不審過ぎるので近寄って来るのを待つ。

 相手に警戒している気配はない。まぁ幼女を警戒する奴もいないか。

 相手は男性2人。どちらも兵士って体格だ。手前側の男は若い。十代か?奥の男は確実におっさんだな。二回りは上だろう。


「------、----。------?」


若い方の男に話しかけられた。

 まぁ、予想通りだ。全然理解出来ん。強いて言えばロシア語っぽい。


「------。------?」


奥のおっさんも何か言ってるようだ。

 マズイな全く分からんぞ。とりあえず困ったような表情で首を傾げてみる。


「------。------、---?」


若い方がしゃがんで視線を合わせて来る。

 いや、怖がってるんじゃなくてですね。うーん、どうしたもんか・・・。

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