58話 王都への道のり 1
-リベスタン城塞 衛門付近 馬車の中-
サマリード領から王都へ行くにはカシムーン領を経由して西のベスパー領か東のラジャイナ領を通る事になる。どちらもほぼ同じ距離で治安も悪くは無いはずだが、今回はベスパー領方面から進む。理由はマイネルから薦められたからだ。
ラジャイナ領は古くから男尊女卑の傾向が強く、今でもその傾向が強いとの事。わざわざ嫌な目に遭いに行くことは無いし、必ず何かしらのトラブルが起こるだろうと言われた。実際に各地を巡っていたマイネルの言葉に今回は従っておく。君子危うきに近寄らずだ。
王都までは俺の馬車で飛ばしても四日は掛かる。通常なら十日は堅い道のりだ。トリスタンからベスパー領のバンダークまで1日。更にタジク領のシンタックまで1日。そこからマハルまでが半日。何もトラブルが無くて、だが。
それと、長期にわたるのと前回の旅程での具合から判断して、今回は随伴の騎兵は無くしてもらった。正直なところ、邪魔でしかない。俺の馬車が単独で逃げた方が早いのだ。半端な腕と訓練不足の馬で付いて来られても困る。それに大所帯になればどうしても目立つ上に動きが鈍くなる。
クレアは最後まで納得していなかった様子だが、ハミルが許可した事なのでこれ以上は言って来ないだろう。馬鹿と何かは使いようって良く言うもんだ。アレは俺が勝ち上がる前提で何かを皮算用している感じだな。ま、言っても仕方ないか。
リベスタン城塞を出発してひたすら川沿いを南下する。御者は今回もミランに頼んだ。何度も乗っているのでだいぶ扱いに習熟した様だ。馬に無理させない程度で速めにと出発前にお願いした結果、窓から見る景色の流れがやたら速い。その分馬車の振動も少し気になる程度にはなった。
ミランの腕は信用しているが、これ大丈夫なのか?かなり頑丈には作ってあるから壊れたりはしないはずだが。今のところ軋みなどは聴こえないから問題は無いと思いたい。この程度の音や振動なら慣れれば気にはならない。横の二人も相変わらず横になって寛いでいる。このペースだと相当早くトリスタンに着きそうだ。
-商業都市トリスタン 北門-
門で通行証と招待状を見せる。今回はこの招待状が全ての場所での通行を保証してくれる。大会出場者の証明でもあるので帰り道も通行証として使える。王家の家紋が入った手紙などなかなか見られるものではないからな。ちなみに無くしたら大事になるし、悪用がバレたら問答無用で死罪になるのは言うまでもない。指定された期間が過ぎたら効力が切れるので廃棄しても問題無い。記念に飾っておく者が大半らしいがね。
「この馬車ってとても安定して走れるんですよ。この子達も重馬とは思えないぐらい速くて全然疲れないし、結構飛ばして来ちゃいましたけど大丈夫でしたか?」
ミランはかなり上機嫌の様だ。疲れている感じも無いな。楽しんでいる様で何よりだ。
さてと、街中を通って西門近くまで行かねばな。今日の宿をまずは見つけよう。




