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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
混迷の大陸編

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398話 アルセイルの受難 10

-アルゼイ城東側 アルセイルの街-


 ララの先導で街中を担当する部隊の兵舎へと歩を進める。方向からして昨日訪れた兵舎が目的地と見て間違いあるまい。


「お姉様は城内にお部屋もご用意しておりますし、兵舎に泊まる必要は無いのではありませんか?ラジャイナ家の方々も城内で起居されると聞いておりますけれど・・・」


 まぁラジャイナ家の直系であれば扱いは違って当然だろうね。寧ろ兵舎に居られては兵士達は気持ちの休まる時が無くて困るだろう。妥当な対応だとは思うけど俺達にはそこまでの処置は要らないかな。


「私達は商会としての活動が多く、同じ宿に泊まるのは珍しくありませんからね。今まで皆で同じ宿で過ごして来たのに、今回だけ変えるのは逆に違和感を感じるはずです」


「そういうものですか。家族の皆がお姉様とお話する機会を持ちたがっていますので、一緒に食事する席をご用意しようと考えていたのですが・・・」


「お招き頂けるのであれば参加させて頂きますよ。城に居たくないとか、そういう事ではありませんので」


 要は“会食”って話だな。部隊を率いる身であればこういうのは必ず有るもの。今の俺はサマリード家の名代みたいな立場だし、縁戚になる予定の貴族家の人物であるし、人となりを見ておきたいという気持ちは分からんでもない。


「ご迷惑でなければ今晩にでもお招きしたいところですけれど、お姉様の御都合は大丈夫でしょうか?」


 今晩とはえらい急ぐね?まぁ早めに俺の人物像を確認しておきたいのかな。これは恐らくジェマルの意向が絡んでいるのだろう。確かに指揮官としては優先して会っておきたいのは理解出来る。彼を安心させる為にも一度は対面で話す機会を作っておくべきかもね。


「構いませんよ。私が不在したところで何か支障が有るとは思いませんし、賊徒の対処は問題なく行えるでしょう。そこは心配無用と考えます。ただ、そうした席に出るのに相応しい服装ではありませんので、そこはご容赦頂けると助かります」


 当たり前だが上位の貴族家に招かれて“鎧姿”というのは戦時下でもない限り失礼に値する行為になる。今回はそうした準備をしていないので、気になるのはその点だな。


「お姉様の立場は皆も理解していますので、特に何も問題視されないと思います。もしお気に為さるのであれば着替えを用意させましょうか?」


「いえ、そこまでは・・・問題無いのであればこの恰好で参加させて頂きます」


「分かりました。後でララを迎えに寄越しますので、宜しくお願い致しますね」


 結局シーラに押し切られる形で今晩の会食参加が決まってしまった。まぁこれも役目の内と考えるべきなんだろう。警備自体はタニア達に任せておけば何の心配もない。彼女達なら上手くやってくれるはずだ。


 兵舎に着くと早速引継ぎに取り掛かる。と言っても基本的にシーラが説明して回るのについていくだけなので難しい事は何もない。井戸に馬房に炊事場と基本的な設備は全て整っているのであまり不便は感じないだろう。規模的にも俺達の人数なら少し余裕が有るぐらいなので問題は無さそうだ。


「誰かと思ったら昨日来てたお嬢さんか。まさか引継ぎ先の隊長とは思わなかったよ。態々下見に訪れるなんて見かけによらず周到じゃないか。貴女の部隊はきっと優秀なんだろうな。期待しても良さそうだ」


 どうやら昨晩言葉を交わしたうちの一人がここの責任者だったらしい。確かに声には聞き覚えがあるな。


「マリーナ様は特にナズ様に請われて来て頂いた程の方です。その力量に疑いの余地は有りません。皆さん安心して後を任せて下さい」


「ほう!それは大したものだ。あのナズ様がお声掛けの人物とあれば心配は要らないな。ならば引継ぎに何の不安も無い。どうか街の皆を宜しく頼む」


 ララが余計な事を口にしたせいで一気にハードルが上がった気がするんだが。まぁ請け負う以上はきっちり成果を出して見せるつもりではいたがね。彼らが不安を残さずに引き上げられるなら、それはそれで良かったのかな。一通り施設を確認して回ったらその足でタニア達を呼んでこないといけないし、宿を引き払う手続きも有るから少しばかり忙しくなりそうだ。環境が変わるので作戦も少し変える必要が有る。大きな修正は必要無くてもその都度状況に合わせて最適化はしていくべきだろうな。


 シーラ達と別れてから街の中心部へと向かい、タニア達との合流を目指す。エクスで上空から見ると丁度巡回を終えて宿へと戻って来たところ。タイミングとしては無駄が無くて都合が良い。やや駆け足気味に宿へと戻り、皆に状況を伝える。


「へぇ、アタシらに兵舎を丸々貸してくれるのかい。悪くない待遇だね」


「ここの寝台も気に入ってるけど、さすがにずっとっていうのはね。良い判断だと思う」


 まぁ、少なくない額の費用が掛かり続けるってのは彼女達の気分的負担に成り得るか。多少環境的な質が落ちても、そこを気にせずに済む方が楽なのかも知れないな。


「では早速荷物をまとめて移動しましょうか。宿の主人には私から説明しておきますね」


 俺が見た感じでは兵舎の寝台もそれほど悪い感じには見えなかった。雑に使っても問題無さそうという点では逆に良くなったと言えるのかもな。大部屋ならではの意思疎通のし易さも有るし、上手く活用したいものだ。


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