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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

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38話 トリスタンの商取引 2

-商業都市トリスタン モルダー服飾店-


「ようこそ、モルダー服飾店へ。どのようなご用件でしょうか?」


 品の良い柔らかい喋り方だ。目も俺を子供と侮った感じは無い。客対応は満点だ。


「初めまして、私はマリーナと申します。モルダーさんにお取次ぎをお願いします」


 俺が来ることは聞かされているはずだ。それ故のこの対応だろうからな。


「伺っております。ご案内いたしますのでこちらへどうぞ」


 女に案内されて奥へと向かう。なるほど、奥が商談用の応接室になっているのか。


「お待ちしておりました。立派な馬車ですね。先ほど拝見させていただきました」


 モルダーは中から見ていたようだ。まぁ、目立つからな。俺が降りて来たのにも気付いたか。


「お約束の品をお届けに上がりました。ご確認下さい」


 包みを開けて箱を取り出す。机の上でゆっくりと開け、少し前に出す。


「再度鑑定なさるのであればどうぞ。当然、必要な行為ですからご遠慮なさらずに」


 入れ替えられることは十分有り得る話だ。そんな迂闊な商人ではあるまい。

 モルダーの雰囲気が少し変わった。こちらを見る目に穏やかなものを感じる。


「あなたはお若いのに商いというものを心得ておいでなのですね」


「信用は簡単には得難いもの。今の我々には必要な行為でしょう」


 俺が前回と同じ品を持って来たと確認させることが重要なのだ。確認行為は必須だ。この場で確認させないのは俺にとっても不利に働く。後から言いがかりを付け得る隙を与えてしまうからだ。


「では改めてこの場で確認させていただきましょう。少しお時間をいただきます」


 そう言うと彼は脇の棚からモノクルと鏡を取り出して鑑定作業に入った。

 前回同様、真剣な表情で丹念に視ている。今は黙って待つしかない。


「有難うございます。確認出来ましたので代金をご用意いたします」


 無事済んだようだ。そういや支払い方法を確認していなかったな。訊いてみるか。


「代金ですが、一部だけ金貨で。残りは証文でお願い出来ますか」


「畏まりました。どの様に致しましょうか?」


「200枚分は金貨に、残りは100枚分の証文3枚に分割して下さい」


 変に嵩張っても邪魔なだけだ。アモットへの支払いもあるしな。


「ではそれで準備を致します。もうしばらくお待ち下さい」


 そうモルダーが言うと、女が部屋から出て行った。準備は彼女がするらしい。


 証文は現代で言う小切手みたいなものだ。金貨の代わりに高額決済で使われる。商人の間では高額紙幣と同じ感覚で普通に流通している。ちなみに偽造は重罪だ。やれば王家を敵に回すことになる。

 


 女が戻ってきた。準備が済んだようだな。手に鞄を下げている。


「こちらをどうぞ。お要望の通りに致しました」


 モルダーを見ると笑顔で『持って行け』という仕草をしている。


「見事な入れ物のお礼です。粗末な鞄ですがご容赦下さい」


 いや、結構高そうだぞ、この鞄。まぁ、有りがたく受け取ろう。よくよく考えたら、証文の入れ物が無いのは不自然だ。これは俺の準備が悪かったな。


「お気遣い感謝致します。今後ともよろしくお願いいたします」


 丁寧に頭を下げる。これでトリスタン商人の伝手が出来た。後で役に立つだろう。

 後は帰るだけだな。椅子から立ち上がり、外へと歩き出す。


「おや、中を見なくてもよろしいのですか?」


「その必要は無いでしょう。違ったら私に人を見る目が無かったということです」


 彼がここで何か仕掛けてくる輩なら繋ぎを持つ意味は無い。俺を格下と見て舐めた態度を執る奴ならハズレだったということで、殺して金をもらえばいい。だが、次の商品を望んでいるはずだ。下手はしないだろう。出来ればこの商人の伝手は上手く使いたい。


「なるほど。今後ともご贔屓に願います。必ずそのご期待にお答えしましょう」


 少し態度が変わったな。俺を取引相手と認識したか。合格だ。こういう嗅覚の有る商人は優秀だ。期待出来る相手だろう。



 店から出るとタニア達が街の衛士と何か話をしているところだった。何かあったか?


「あ、お嬢。話は済んだようだね。それじゃあ帰ろうか。皆支度をしておくれ」


 手を振ると衛士はにこやかに去って行った。


「何かありましたか。先ほどの衛士は?」


「ああ、珍しい馬車だって私らに尋ねてきただけさ。メリッサが自慢げにしてたよ」


「してないわよ。立派な馬車なのは本当だから感想を言っただけじゃないの」


「開けて中を見せびらかそうとしたのは誰だっけかねぇ」


「なかなか信じてくれないんだもの。見せた方が早いかなと思ってさ」


「軽々しくあんなの見せびらかすのは、盗賊を招き寄せるのと同じさ。迂闊だよ」


 メリッサは少し浮ついているが、タニアは冷静だな。頼もしい限りだ。


 ミランが馬車から降りて来た。タニアの指示で、中で休ませていたようだ。ずっと運転していたからな。こういう差配を言わなくてもやってくれるのは本当に有難い。


「とても快適でした。ありがとうございます。帰りも任せて下さいね」


 意外と元気だな。少しは回復出来たようだし、この様子なら大丈夫かな。

 空を見ると陽も傾きかけている。日暮れ前には城に着いておきたいところだ。

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