25話 擬態出来る限度
-リベスタン城塞 マリーナの部屋-
この世界に来て約2年。文字も言葉も覚えた。今の自分の立ち位置も凡そ理解出来た。人の中で生活する上での十分な擬態も問題無い水準まで習熟したと思っていいだろう。
ここからどうするか?だな。後4年も経てば生理が始まっていなければ不自然だし、そうなれば別の領地に嫁入りということも有り得る。さすがにそこから先は誤魔化すには難しいし、ほぼ不可能とも言える。
となれば数年の内に今の環境から抜け出さねばなるまい。
この周辺での勢力図は概ね把握したし、文化的内容も理解はしている。俺に必要なのは他人と接する機会が少なく、かつ一人で居ても不審に思われない環境だ。
その都度顔や身体的特徴を変えれば短期間は誤魔化しが利く。だが周りの目が多いほどどうしても綻びが出るものだ。発覚の確率は低いに越したことは無い。
領主の娘なら領地に興味が有るものと考えて、それっぽくやってきた。自警団の二人とはそこそこ仲良くやれているところだが、関係が近くなり過ぎても困る。マリーナとしての生活にも慣れてきたところだが、いつまでも子供のままというわけにはいかない。
後腐れが無いのは何らかのトラブルに巻き込まれて死ぬことか。それも死体がまともに残らない方法で。綺麗な状態でなければ身代わりを作るのは容易い。
ここを離れてからのことは後から考えればいいだろう。どうとでもなるだろうし。
いろいろと考えたが、結局のところ『数年以内にマリーナは居なくならねばならない』という結論は変わらない。そのために今後は状況を作り上げていくことになる。
こういうのは魔法の有る世界なら簡単そうなんだがなぁ。上手いこといかないもんだ。
子供でも容赦なく殺しに来るのってどんな奴らかな?あくまでも俺個人にヘイトが向くように気を付けるとして、わざとどこかの勢力を敵に回すか。目障りな存在だと認識されれば何かしらの反応が出て来るはず。相手側の実力行使を誘えば充分達成出来そうだな。
敵対すれば確実に襲ってくるのは王家、教会、大商会辺りか。利益衝突を起こしてみたり、勝手に技術水準を引き上げたりすれば自ずと狙われるようになるだろう。
この世界の裏側を知る一助にもなるはず。後の事を考える材料にもなりそうだな。
当面の間は輸送関連の技術水準を上げて、周辺の村や都市の状況を確認出来るようにしなければな。リベスタン城塞を南に下るとトリスタンという一大商業都市が有る。間にも町が有ったな。まずはその方面から攻めてみよう。この間会った行商人が一番近いカラムの町から来ていたっけ。
そういやあのおっさん、次回誰だか連れて来るとか言ってたな。そいつからも話を聞いて情報を集めることにしよう。




