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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

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18話 飯事情が気になる

-リベスタン城塞 厨房-


 今日はジルに頼んで厨房見学に来ている。

 不思議そうな目で見られたが邪魔にならないことを条件に許してくれた。


 炎や刃物が有る場所で何人も動き回っている。床は水で滑り易い。必然的に俺は少し離れた位置の台上から黙って観察することとなった。


 城住まいの者と城仕えの者で100人前後。凝った物ではなくとも量が多いので大変そうだ。干し肉などの保存食を上手く使っている。

 俺自体に味覚も嗅覚も無いので特に気にして来なかったが、献立は単純だ。パンと簡単な汁物に小ぶりの肉。あんなので良く不平が出ていないものだ。まぁ、自分たちの食事も似たようなものではあるが。

 領主の食卓なので多少の果実や野菜が盛って出されているけど、考えてみたら食器と盛り付けが違うだけかも知れん。

 食文化そのものが進んでいない可能性が高いな。金を掛けれない懐事情も有るだろう。

 工夫次第でかなりの効果は見込めるが、ここではやらない方が良さそうだ。

 一度味を占めるとなかなか戻れないものだ。気まぐれに口を出して彼らの苦労を増やすのは良くない。材料の確保だけでも大変なはずだからな。


 一通り観察出来たので厨房を後にする。なかなか興味深いものだった。俺が個人的に試してみるのは有用だろう。食わせるのはメリッサ辺りでいいか。俺は味が分からんので試食というより本当の意味での実験台だがな。



-自警団詰所 食堂-


 数日後、俺は今、メリッサに両肩を掴まれて詰問されている。

  

「マリーナ、どうやって作るのか私には教えてくれるよね?」


 どうも刺激が強すぎたらしい。やってから失敗したと気付いた。

 自警団の食堂には小さな厨房が有り、そこで試しに作ってみたのだ。粗方の材料や器具は揃っていたので都合が良かった。メリッサを呼んで事情を話すと少し不審に思ったようだが深く聞くこともせず連れて行ってくれた。


 出来てからのお楽しみということで、調理の間は食堂で待機してもらった。メリッサだけに声を掛けた理由は材料が少なかったのも有るが、あくまで実験台だからだ。加えて、見られては困る動きを俺がしているせいでもある。


 出来たのは『兎と猪の合挽ハンバーグ、マヨネーズ焼き』と言えばいいのだろうか。視覚で焼き加減だけ確認出来ればそれなりに仕上がるものを作ったつもりだ。


 待っている間もだいぶ落ち着きが無かった様子だったが、出来上がりを持って行ったら目を丸くして驚いていた。促すと結構な勢いで食べていたな。食べ終わっても余韻に浸ってうっとりしていたのでだいぶご満悦だったようだ。


 そしてこの状況に至るわけだ。少し迂闊だったかも知れない。有り合わせで作った割には成功。結果としては失敗だったかもだが、まぁどうにでもなるだろう。



-自警団詰所 食堂 メリッサ-


 マリーナには料理の才能も有るらしい。自警団の調理場を借りたいと言われた時は不思議だったが、調理の間は食堂で待機というのも意外だった。てっきり私が手伝うのかと思っていたからだ。作る側じゃなくて食べる側というのも予想外だ。


 領主の娘なのに料理なんて作ったことが有るのかしら。今までそんな話は聞いたことが無いけどねぇ。不安を余所に彼女は厨房に入ると早速始めたようだ。


 しかし、何が出て来ても驚くまい。とりあえず食べれるモノであればいい。とんでもないゲテモノが出される可能性は有るけど、覚悟はしておきましょうか。彼女はそんなイタズラみたいなことはしないだろうし、今までの様子からして変なモノが出てくるとも思えないんだよね。ホントにそうかなぁ・・・そうであって欲しい。


 小刻みに包丁の音が響く。何かを刻んでいるらしい。そう言えば材料が何か知らないのよね。聞いておけば気持ちの準備も出来たのになぁ。油で何か炒めている音がする。この匂いは肉料理のようだ。少しお腹空いてきたかも。

 

 食堂にマリーナが入ってきた。両手で抱えた盆に皿が一つ。皿の中には・・・見たことが無い料理なんだけど?美味しそうな、肉の脂が焼ける時の良い匂いがする。

 

「どうぞ、お口に合えば嬉しいのだけれど。不味かったら御免なさい」


 私の前に皿を置くと、食べるように促した。


 初めて見る料理だ。だが良い匂いだし、美味しそうではある。そもそもここまで付き合って食べないという選択肢は無い。とりあえず端っこを切り取って口に含む。

 うーーーーーーーーーーーーーーん、何これ。いやすごく美味しいよ。こんなの食べたこと無いわ。肉料理なのにとっても柔らかいし食べ易い。この黄色いのは何だろう?肉と合うなぁ。あら、もう無いや。ちょっと足りないけど美味しかったし、満足満足。


「メリッサさん?大丈夫ですか。だいぶ早い食べ方でしたが」


 マリーナが水を持ってきてくれた。

 言われてから気が付いた。少し夢中になり過ぎてたかしら。

 彼女はどこでこんなの教わったんだろう。城だとこういうのが食べれるのかな。


「城ではこういうのが出るの?私らは見たことも無いわ」


「城でも出ませんよ。作ったのも初めてなら食べたのもあなたが初めてです」


 何だって?彼女が考えたってことみたいね。確かに聞いたことも無い料理だし。


「これって材料はどうしたのよ。城の厨房から持ってきたとか?」


「いえ、森の中で採れますよ。他は珍しい物でもありません」


 良いことを聞いた。これは是非ともモノにしなければ。

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