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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
内政強化編

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127話 基盤環境の整備 7

-サマリード領 採石場-


「おぉ・・・これは随分と有る物なのですね。これほどとは思っていませんでした」


 今日は採石場に来ている。マスート達の職場は石切り場でもある。俺の回りでは今も多数の職人達が槌を振るって作業に勤しんでいる。


「こんな物をどうするんだ?俺達には用の無い物だから好きに持って行ってくれて構わないがね」


 俺の目の前に有るのは山となった砕石。石材を加工する際に成形後の滓として出て来る物だ。大きさもバラバラだが大きすぎる物は無い。ここが石切り場として機能し始めてから溜りに溜った砕石が山となって積まれている。どの程度の量が在るのか訊いても即答されなかったはずだ。これは『大量に在る』としか答えられないだろうよ。


「道路整備に使えないかと思いまして。この量なら大丈夫そうで一安心です」


 道路の舗装手法はアスファルトが良く知られているが、より工期が短くて簡単に出来るのが砕石を使った手法だ。現代ではマカダム方式として知られる工法で、歩道の工事ではそこそこ使われている。俺が考え付いたのはそれに似せた工法を用いて舗装する事。既にローマ時代から存在する工法なので、実際に造っても別段不思議という訳でも無い。


「ふむ、それは頼まれているアレも関係しているのか?」


 マスートにはかなり大きめの円盤を複数枚依頼している。サイズは全て同じ物で、後に転圧ローラーの代替品として利用する予定だ。


「はい、舗装作業で必要になります。難しい注文だと思いますが宜しくお願いします」


「なるべく早めに仕上げる様にする。任せてくれ」


 ここでも職人の数が増えたと聞いている。職人数が増えると生産速度の上昇に繋がって、結果として発展が早まる。専業ではないにしろ、人手が増すのは良い傾向だ。



-サマリード領 フォート開拓村 入口前-


 資材の目途が付いたので次は人手を確保する必要が有る。だが最初は思う通りの結果が得られるかを確認しなければならない。実験場所はフォートの入口付近。50m程度を工事して様子を見るつもりだ。不具合の洗い出しも兼ねている。


「マリーナ様、今作業に当たれる者を集めました。ご指示をお願いします」


 アイラに言って動ける者を呼んでもらった。全部で十五人、今回の作業には充分な人数だと思う。土木工具も足りない事は無い。後はやってみて時間がどの程度掛かるかだな。


「今から目の前の道路を掘り下げます。幅は道路をそのまま、深さはそのスコップの長さ分です。ここを開始位置としてあの棒の場所まで進めて下さい。アイラ、人手を三組に分けて交替させながら作業の監督をお願いします」


 俺の目の前から地面に突き刺した棒の位置までは凡そ50m。地面の堅さに若干の差は有るが、これで完成までの概ねの日数が予測出来る。作業を継続した分だけ疲労が蓄積されて効率は下がるが、慣れに依る作業効率の上昇も出て来るので、全体としての進捗には影響が無いと見て構わないはずだ。


「アイラ、壁は垂直に底は平らに。掘り過ぎても意味は有りません。彼らに余計な仕事をさせない様に良く観察し、効率的な指示に努めて下さい。掘り上げた土はこの辺りに堆積しておく事。後で使い道が有ります」


 先の地形次第では盛り土が必要になる。道路幅を確保するには必要な準備だ。


「分かりました。具体的な作業の割り振りはどうすれば?」


 神妙な顔つき。こういうのは経験が無いと分からんか。例示してから自分なりに考えてもらうのが良いかな。素案無しで丸投げしても無駄な試行錯誤になって余計に疲れるだけだ。考えさせて育てるのも必要だが、それはこういう作業で取るべき手法じゃない。


「掘削・運搬・休憩で組み分けして逐次交替させなさい。全体の二割程度まで進んだら全員手を止めて半刻以上は休む事。休憩中には必ず水を飲ませなさい。近場に樽を持って来て用意するのが良いでしょう」


 真剣な表情で頷いている。こういうのは場数がモノを言う。何度かやれば手順が頭に浮かぶ様になるものだ。自然と何が必要かも見える様になるし、その分余裕が生まれて事故率が下がる。彼女には是非こういう知見を積んでもらいたいな。

 人から聞いただけ、書物で知っただけでは分からない。実際に現場で人を動かす過程でのみ得られる貴重な知見だ。これが無いと優秀な現場指揮官には絶対になれない。頭の回転が速くて基礎能力が高いだけでは『人』を動かすには足りないのだ。


「全体休憩の際には軽食を摂らせる事。暗くなり始めた、天候が悪化した、何か問題が発生した、そういう時は無理せず一度作業を止めて、必ず皆を戻らせるのです。一日で終わる内容では無いのですから、貴女は目の前の作業だけに没頭してはいけません。忘れないで欲しいのは『彼らが集中して作業に当たれる状況を作る事』が貴女の役割だということです」


 全体を俯瞰して見る事が出来て初めて集団を動かす事が出来る。難しいがアイラにはやってもらわねばならん。俺が居る間ならフォローも可能だ。尻込みせずに頑張って欲しいな。


 遅かれ早かれ、土木工事を請け負える専門集団は必要になる。そもそも、そういう専門家達が居なければ領内インフラの発展など到底期待出来るものではない。俺としては彼らがそうなってくれるのを期待したいが、こればかりは分からんな。

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