10話 虎穴に飛び込む 2
-移動中の馬車の中-
馬車の動きが緩慢になり、やがて止まった。ここが目的地のようだ。
同乗していた女に促されて外に出る。全体的に石造りの・・・砦?城塞ってやつか。
見た感じではずいぶんと年季が入った建物に見える。海外のドラマシリーズにこんな感じのやつがあったなぁ。えらい長かったんで途中で見るのやめたけど。
さっきまで供をしていた騎兵は周りに居ない。馬を繋ぐ場所は別のようだ。
護衛が不要な環境ということは、安全な反面、閉じ込められたとも取れる。
まぁ、当面は内部探索の方に時間が掛かるはずだ。特に問題ないだろう。
手を引いて誘導されつつ建物内を進む。廊下は薄暗く、飾り付けの類は無い。要所に明りが灯されている。これだけ大きな建物でこれか・・・電気設備は存在しないようだな。あるいはこの辺りが僻地で貧しいだけかも知れないが。
しばらく進むと絨毯が敷かれている広間に出た。奥に偉そうな雰囲気の奴らが居る。
中央の椅子に座っているおっさんが一番偉い人ってことなんだろう。この城塞の主ってところか。その隣に立っている髭の奴は俺をじっと見ている。視線に敵意は感じないが、あからさまに観察されるのは気持ちの良いものではない。
広間の中ほどまで進むと手を離された。
「----、---------。-----」
どうやら報告しているのだろう。女は佇まいを改め、表情もさっきまでとは違う。
言葉は分からないが、良い内容では無さそうだ。髭の方は困り顔。座っている奴は喜びつつ悲しむという何とも言えない表情だ。
「--------。-------」
彼らのやりとりが済むと、壁際に居た給仕のような恰好の女が寄って来た。
「------。------」
俺の手を取ると、誘導するように歩き出した。どこに連れて行く気だ?不安しかないが、ここは大人しく様子見といこう。今は余計なことをするべきじゃないだろう。
連れて行かれた先は牢屋・・・ではなくそこそこの広さの小部屋だった。寝台と机、衣装棚に小物入れ。しっかりと清掃が為されている。誰かがここで生活していた?・・・あぁ、この娘の部屋か。考えてみれば当然の帰結だ。無駄に心配していたのが馬鹿らしい。
「------。-----」
一礼して給仕の女は出て行った。
やれやれ、とりあえず落ち着けそうだな。まずは状況を整理しよう。
おそらく今後はここが拠点になるのは間違いない。情報を集めつつ、自分の立場や周囲との関係を確認していかねばなるまい。少しずつ言葉も覚えないとだな。




