第3話 〜師匠 vs 弟子〜
「宮古よ。お前に依代家相伝の秘術を授ける」
「はい、師匠!」
「お前は女子でありながらも、ようここまで頑張った」
「はい!」
「そして、秘術を授ける儀式知っとるかの?」
「もちろんです! 師を倒した時、その時に見える秘術だと聞いております!」
「ふおっふおっふおっ。よう分かっとる。ならば……言葉はいらないな」
古く、埃が舞っている道場。傍から見れば、薄汚い道場。古くからある傷、古くからあるシミ、古い匂い。
この2人には生涯の半分以上をすごしてきた。2人には神秘的な場所だ。
覚悟ある道場の真ん中には、70歳以上の老人。木刀の先端を床に付け、独特な構えをしている。
対して、師匠に挑むのは女性でありながらも、世界に名を轟かせるであろう才女。
歳は19歳。ショートカットの黒髪に黒目で、美人である。
彼女の構えも独特な構えであり、剣を”片手”で持っている。
依代家は世界でも独特な構えで注目を獲ている。一人一人の構えが異常なことから、太刀筋が見えず、戦えずらいのだ。
「いきますよ……師匠」
弟子である宮古の構えは、日本の剣道の構えの一種でもある。その構えのメリットといえば———
上段から放たれる猛速の振り下ろし。
「やああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
迫力ある声から振り下ろされる木刀。老人の反射神経では到底、防げるはずがない。
これが才女たる所以。
「甕生流 『脈流返し』」
勝負が決まったと思った一撃が、宮古の目に見えていた剣が”なくなっていた”。
木刀が無くなったのを確認して、次に来るのは左脇腹に言葉にならない激痛。
「—————ッッッッッ!?」
いつの間にか呼吸を忘れ、地面に崩れていた。
「まだ終わったらんッッッッッ! たていッッッッッ!」
何が起こったかも分からないなに、一撃をもらってまだ立てというのかこの師匠は。
私らしくない暴言を心の中で吐き、立ち上がる。クラクラとする頭で、師匠の今の一撃を考える。
師匠は今まで、私と普通に戦ってきたのにガラッと違う技を出してきた。師匠の本気が垣間見えた。
「はあ......はあ......はあ......!」
宮古は遠くに投げ捨てられた木刀を拾い上げ、また同じ構えをする。師匠に私の一撃を止められた。また同じ、振りをするか?
いや、それだったらまた止められる。師匠の技を見極めなければ。
「どうした? かかってこないのか?」
「はあ......はあ......はあ......!」
息が荒くなる。師匠の圧が”ヒビの入った肋骨”を締め付けられる。落ち着け......私。私の武器はリーチがあり、動きやすい。そして、速い攻撃。
ならば、フェイントをかけて打ちのめす。
「やあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
再び、上から攻撃。
「学習しないの」
師匠も応戦する。
宮古が正直に打ってくるはずがないからの。これはフェイントか。
「甕生流 『脈流返し』」
宮古には宮古自身知らない技がある。宮古は女だ。男に比べて力がない。
それは、男と戦う時に弱点となる。女は弱い。弱いからこそ、女の武器がある。
女は何が強い?
声の美しさか?
違う
体の美しさか?
違う
髪の長さか?
違う
では、何が強いのか? 誰からにも負けない美しさと
その、体のしなやかさだ
「やあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
師匠が地面に着けていた剣を左に小さく回し、宮古の木刀を弾こうとする。宮古は師匠の木刀に当たらないため肩を外すが如く、勢いを殺さず右に大きく木刀の軌道をずらした。
師匠の木刀は当たらないが、宮古の木刀をそこから師匠に当たるはずがない。
「...........宮古でも困難じゃぞ」
宮古と毎日毎日、剣を交わしてきた。儂は宮古の剣を全て知っている。剣を交わしてきた儂が見せた、儂の流派。宮古の技を知り尽くしたから、儂の技を対処出来るはずがなし。
儂でさえ、このしきたりを超えたのが約1週間。
宮古。お前にはその技はできない。勢いを殺さず、また剣を左に打ち込むなど。
そんなことが出来たら、最強じゃ。
「なんじゃと!?」
視界が晴れてきた。脇腹の痛みなど忘れた。
体がどう動けばいいか分かる。
いけ......
この一撃......師匠に届け!
「ふんッッッッッッッッ———————!?」
師匠が私の木刀に直撃し、左によろけ膝を着く。
「はあ......はあ......はあ......」
「宮古」
「はい」
「お主の勝ちじゃ」
師匠は地面に倒れる。
そして、私も地面に倒れる。
これが私......師匠との最後の勝負だった。
「師匠......。ありがとうございました」
「よいよい。儂も止めれなかったのが、悪かった」
師匠は剣の道を辞めた。
「しかし、本当に死ぬかと思ったわ! あんな攻撃を老人にするではない!」
豪快に笑いながら、病院のベットに寝ている師匠。
「それで、師匠。依代家一子相伝の技とはなんなのですか?」
「一子相伝の技は、師匠と戦いで自分独自の技を創り出すことじゃ。儂ですら、1週間かかったのに......お前は、本当に才女じゃな」
「えへへへ。そうですかね?」
「ふおっふおっふおっ......。宮古......死ぬなよ」
「はい!」
——————宮古 vs 師匠———————
宮古の勝ち
ここは後で書きます!