クロード家の執事
「君は何者だ?」
クロード家の亭主であるクロード=アスナーは、手に持っている履歴書と背筋を伸ばして座っている目の前の青年を、何度も交互に見て驚きを隠せずにいた。
名前はロウェナ=ルソー。22歳。履歴書に書かれている内容を簡単に説明すると、『元英国陸軍中尉』『国立アナスタシア大学主席卒業』など度肝を抜かれるようなものばかりだ。さらに、大学卒業時の年齢が15となっていることはにわかには信じられなかった。
話していても緊張は感じられない。雰囲気も温和でまさにクロード家が欲していた執事の理想像だ。
面接が終わった瞬間、アスナーは家族の誰が何と言おうと採用することを決めた。
今日はルソーにとって執事として初めての仕事日。
外見は188センチの高身長に広い肩幅。小顔なこともあり一層がたいがよく見える。
ルソーは玄関でお嬢様の帰りを待っていた。
クロード家の一人娘クロード=アリシアはまだ14歳と若いが、勉学はとても優秀で現在は国内有数の有名大学に飛び級している。
しばらくすると、アリシア専属ボディーガードのメイドと共に帰ってきた。その顔は笑顔で楽しそうに何かを話している様子だ。そのメイドはアリシアが生まれたときから一緒なので、当然仲はいい。
「お帰りなさいませ、アリシアお嬢様。本日からクロード家で執事を担当させていただいているロウェナ=ルソーと申します」
腰を曲げて微動だにしないお辞儀でお迎えする。
「あら、あなたがルソーさんね。お父様がとても褒めていらっしゃったわ。期待していますよ」
「ありがとうございます」
14歳と言われても信じることができないくらいに、すべてが完成されていた。言葉遣いはもちろん、身長も170センチに達するほど成長している。蒼い大きな目と父親譲りの金髪は、かなり眩しいものがある。
「あとで部屋に来てちょうだい。大学の課題で少し難しいものがあって教えて欲しいの」
「もちろんです。お父様の紅茶のご用意ができ次第、すぐに向かわせていただきます」
「それじゃあ、あとで」
「はい」
アリシアは、その後ルソーの凄さに驚くことも知らずに腹の中で少し疑っていた。
(ただ体格がいいだけの軍人みたいな人じゃない。何であんな人を家に?)
ある日クロード家の執事になりたいと申し出た青年がいた。その名前は、ロウェナ=ルソー。ある界隈ではその名前を知らない者はいないという。
そんな彼がクロード家の執事として働くことになる。クロード家の愛娘であるアリシアは、彼のことをよく思っておらず試すようなことを何度もするが、簡単にあしらわれてしまう。
いったい彼は何者なのか。