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2人の季節  作者: ぷにゃ
4/5

アカネとナナミ

どこを走ってるんだろう…

百合亜は、グルグル回る頭の中を整理出来ず、ひたすら走った。前も後ろも、右も左も分からず走った。

空は今にも雨を降らしそうだった。今朝までの百合亜なら、雨の匂いも、街の喧騒もキラキラと感じたろう。でも今は、色も、音も、匂いも無い世界を走っていた。心臓が壊れそうなほど痛い。百合亜はよろよろと壁にもたれかかった。

知らない街だった。正確には知らない場所だった。

人通りの少ない裏路地。普段なら歩かない場所だった。百合亜は壁を押しながら、よろよろと立ち上がろうとした。ふと、目の前に人影が現れた。


「お嬢さん、どうしたの?具合でも悪いの?」

派手な柄のシャツに、ネックレスと指輪をジャラジャラつけた男が声をかけてきた。


「お、JKじゃん。学校サボったの?悪い子だね〜。補導しちゃおうか。」

瞼や、唇にピアス、身体中にタトゥーの入った男が百合亜の腕を掴んできた。


「おっと、大きな声でを出すなよ。」

声を出そうとした瞬間、百合亜の首にナイフが当てられた。


「じゃあ、気持ちいい事しに行こうか。」

2人に抱えられながら、百合亜は怖くて声が出せなくなっていた。



「オイッス!キャサリン!待たせたな。」

金髪に派手目なメイク、サラシに赤の特攻服、時代錯誤のレディースが声をかけてきた。


「ないなーい。キャサリンはないわ。アカネ。」

フリル付きのカチューシャ、フリルだらけのシャツ、いわゆるゴスロリファッションの女の子が、ゆる〜く突っ込んでいる。


「おい、おい。なんだてめーら!おぢさん怒っちゃうよ!」

派手シャツの男が2人に凄んだ。


「そっちの2人も一緒に楽しむか。…アレ、赤7ちゃん?」

全身タトゥーの男が、ニヤニヤしながら2人を舐め回す様に見た後、何かに気付いた。


「赤7?なんだ、お前あいつらの事知ってるのか?」

「知ってるって言うか、ネットアイドルっすよ。アカネと、ナナミで赤7って呼ばれてるんすよ。」

「スロットかよ。」

「上手いっすね。」

相手は女の子2人。派手シャツと、タトゥーはニヤニヤと余裕で話していた。



「おっさん、話終わった?ナンシー返してほしいんだけど。」

アカネが腕組みをして、睨みつけた。


「ナンシーって。名前変わっとるがな。」

ボーとしながら、ナナミがゆる〜く突っ込んだ。


「なめやがって!てめーらも拉致ってやる!」

派手シャツの男は、キレて目も血走っている。


「うちらの庭で、デカい顔してんじゃねーよ。田舎者。」

アカネは半笑いで、派手シャツの男を煽った。


「てめー。半殺しにして、売り飛ばしてやるよ。」

派手シャツの男が、キレながら近づいて来た。怒りで身体が震えている。細身だが、鍛えられた身体だ。

アカネの前に立ち塞がる。


「ぶっ殺してやる。」

派手シャツの男が、にやりと笑った。


「ヨォ!あかねん。」

野太い声が、アカネの背後から聞こえた。

派手シャツの男は、血の気の失った顔でアカネの背後を見ていた。

アカネの背後には熊の様な大男が立っていた。傷ある顔、潰れた耳、岩のような拳。風貌が全てを物語っていた。




「ヨォ、よっちゃん。」

さすがのアカネも怖かった様で、ほっとした表情を浮かべた。


「よっちゃん、遅いわ〜」

ナナミがゆる〜く突っ込む。


派手シャツの男と、タトゥーの男は、よっちゃんとその仲間達に囲まれていた。ナイフを握っていたタトゥーの男の手は潰されていた。


「ごめん、よっちゃん。後任せていい?私達クリスの事面倒見ないといけないから。」

アカネはよっちゃんの腕を叩いて、頼りになるなーと、いいながら笑っていた。


「あかねんの頼みなら。おい、こいつら事務所に連れてけ。」

震える派手シャツの男とタトゥーの男は大男に囲まれて消えて行った。


「じゃあ、あかねんまたね。」

よっちゃんはゴツい手を振りながら去っていった。


「よっちゃん、かわいいなぁ〜」

ナナミは手を振りながら、ニヤニヤしていた。

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