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11月19日
きっとこの物語の主人公は私じゃなかった。
あの日、自殺した日。私の物語は終わっていた。きっとこの1年は健の物語だった。
健が生きるか、菜津さんが生きるか、どちらかしかなかったあの場所で、2人が生き残るためには第三者が必要だったのだ。そして、たまたま選ばれたのが私だった。ただそれだけ。今、健が助かって、私の役割は終わった。だからもう、私は‥‥‥。
目を覚ますとそこは病院だった。白い天井、白い床、白い扉。清潔感のある布団。窓にかかったカーテンの隙間からは光が漏れている。
私は、生きている。
長い夢を見ていたような気分だった。あるいは、本当に夢だったのかもしれない。私は学校で自殺未遂をして、1年間をやり直す夢を見て、今病院で目覚めたのかもしれない。
扉が開く音がした。
目だけで確認して、私はそこに立っていた人の姿に安堵する。
「今度は、こっちで会えましたね」