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『知力1000000』のマジヤベー超超大天才がパネェ大活躍の神的最強無双英雄日常伝説  作者: 稲荷竜
三章 木材回収! 名前を覚えるまで帰ることのできない地獄のフィールドワーク
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26話 医務室にて

「寂しかったわ……」



 医務室のベッドで、ナナがはかない笑みを浮かべていた。

 金髪ツインテールのまま寝ていたみたいで、寝る時は髪をほどいたりしないと、クセはつくし、髪も頭皮も傷む気がするのだけれど、ユータにはよくわからない。

 事情があるのだろう。


 それにしても、ちょっと寂しそうな顔をしているナナは、びっくりするぐらい、美少女度が上がる。

 ずっと寂しそうにしていてほしいなとユータは思った。



「あのね、モンスターってね、こわいのよ……話、通じないわ……なんていうか、聞こうという意思が見られないもの。なんで話し合ってくれないの? いきなり殴ってくるなんて、おかしいわ……しかも、あれ、ぜったいに、わたしを殺す気だったのよ……ほんとなんだから。信じて」

「信じてるよ。ところで、ミカヅキさんから、ナナにお見舞いの品があるらしいんだ」

「それはいいんだけれど、そのピンク髪の子は誰? 髪の毛がピンクとかありえないわ……モンスターじゃないの? 本当に人間?」



 ナナはちょっとびくびくしていた。

 寝起きに自分のベッドが四人に取り囲まれていたら、誰でもびくびくするかもしれない。



「オレか? オレがモンスター? ……いいね、それ! 理解不能だぜ。でも、モンスターとか具体的なことは言いたくないから、オレはモンスターでも人間でもない、謎の、理解不能な存在ってことにしといてくれ」

「つまり、なんなの?」

「ハッ! これだから困る! みんなしてオレに具体的な発言を求めやがって! そういう感じじゃなんだよ! 好きじゃなんだ、ハッキリするのは! なぜって賢いヤツは正体不明の理解不能だからな。地元じゃ誰にも理解されなくて、ずっとひとりぼっちだったんだ。オレが賢いからな。そういうことだ。オレはアランっていうんだ。よろしくな。クラスメイトだぜ」

「まあ、アラ!」

「アランだ! ……だが、アラでもいい。ちょっとだけ名前を言えない感じ、理解不能だぜ。ちなみにオレの性別気になるか?」

「女の子でしょ? スカートはいてるし、かわいいし」

「いいや、違う」

「男なの?」

「いいや、それも違う」

「なんなの?」

「オレは、オレだ。ほかの誰でもない」

「そりゃあ、あなたは、あなたでしょう。あなたのことを話してるのに、あなたのことを話してないことにされても困るわ」

「だろう。オレは理解不能だが、困らせるのは本意じゃないんでね」

「いい人なのね」

「おっと! オレに『いい人』とかいうレッテルを貼るのはやめてもらおうか! レッテルだぜ、レッテル。どうだ、さっきまで『枠』とかいう表現しか知らなかったけど、レッテルという言葉を覚えたことにより、だいぶ理解不能で賢そうだろう。ユーちゃんに教わったんだぜ。すごくねえ?」

「あなたはレッテルなの?」

「オレは理解不能だ」

「理解さん?」

「オレはアランだ!」

「アラ!」

「クラスメイトだぜ、よろしくな」

「ええ、よろしく。モンスターじゃないのね」

「いやモンスターじゃないわけじゃない。でも、モンスターじゃないんだ」



 二人の会話はすごく仲よさそうで、永遠に終わらない感じがした。

 ユータはそろそろわりこもうと思った。



「ところでミカヅキさん、ナナにお見舞いの品があるんですよね?」

「うむ」



 ミカヅキが胸の谷間に腕をつっこむ。

 すごく吸い込まれていくから、たぶん、胸の谷間に挟んだ使い魔に腕をつっこんでいるんだろうと、知力1000000もあり、なおかつおっぱいについて研究しているユータは、判断した。

 さすが、おっぱいだ。



「これだ」



 ミカヅキが胸の谷間から取り出したのは、卵だった。

 一般的な卵より大きい感じがする。

 あと、作為的なマーブル模様だ。


 作為的っていうのは、まるで誰かが卵にマーブル模様を描いたみたいっていう意味だ。

 そりゃあ、この世界は神さまがつくったっていう話だし、そこここに神さまの作為はあるんだろうけれど、そこまでの壮大な話じゃなくって、もっと小さく、作為的っていう意味だ。



「これはたぶん、モンスターの卵だ」

「話が通じないわ……話が……モンスターは猫さんじゃないもの……」



 ナナが頭を抱えてガタガタ震え始めた。

 ミカヅキはずずいとモンスターの卵をナナに差し出す。



「まあまあ、ナナ、聞いてくれ。モンスターはな、メイちゃんと同じなんだ」

「メイはモンスターだったの!?」

「そうではない。モンスターと、メイは同じだけれど、メイがモンスターという意味ではない。うむ、君にはちょっと難しかったかな」

「わたし一番なのよ? むずかしいことなんかないわ」

「そうか。そうだったな。つまり、私が言いたかったのは、モンスターは生まれた時に初めて見た相手にすごいなつくっていうことなのだ」

「メイも生まれた時に初めて見た相手になつくの?」

「メイのことは忘れていいぞ」

「忘れないわ! メイだってわたしの手下だもの!」

「じゃあ、メイのことは覚えておいて、モンスターの卵のことを覚えてくれ」

「両方覚えておくなんて、なかなか無茶な要求をするわね。……でも、わたしの知力なら、できるわ。メイを覚えておきつつ、モンスターの卵のことも、覚える……知識が増えるわね」

「うむ。モンスターの卵はな、なかなか拾えるものじゃないんだけれど、そこそこ拾えるものなんだ。レア度で言えば、『まあまあレア』かな。一人でフリーエリアをぐるぐるしてると、年に一つぐらいは見つかる」

「つまり、なんなの?」

「珍しいんだ」

「そうなのね」

「この珍しいやつを、お見舞いの品としてあげよう」

「その珍しいやつって、なんなの?」

「モンスターの卵だ」

「モンスターなんかもらっても嬉しくないわ……」

「でもな、このモンスターの卵は、かえった時に最初に見た相手に、すごくなつくぞ」

「卵がなつくの?」

「卵の中から生まれるモンスターがなつくんだ」

「そうなのね。卵がなつくって言うから、卵がなつくのかと思ったわ」

「そうだな。ちょっと勘違いさせてしまったかもしれない」

「いいのよ」

「この卵をナナが温めてかえしたら、ナナにすごい懐くモンスターが生まれるぞ」

「でも、懐くということは、モンスターじゃないんじゃない?」

「じゃあ、モンスターじゃなくていい。ペットでいいんじゃないか?」

「でも、モンスターって言ったわ」

「モンスターだからな」

「どういうこと?」

「なつく強い動物が生まれる珍しいこれを、ナナにあげる。お見舞いだ」

「まあ、ありがとう! 大事にするわ!」



 ナナが卵を受け取った。

 ミカヅキが満足そうにうなずく(無表情)。



「具合がよくなったら、ナナも一緒に、どこか行こうな。その前に、フレンド登録をして……」

「フレンド登録ってなんなの?」

「使い魔同士を握手させて……ナナの使い魔はどこだ?」

「もらってないわ」

「なんで?」

「まだ入学式に出てないからじゃない? 入学式はいつ?」

「終わったぞ」

「……わたし、出てないわ。寝てたから……」

「困ったな。入学式に出ないと、入学できないぞ」

「そうなの?」

「うむ。入学式っていうぐらいなんだから、きっとそうだろう」

「……どうしたらいいの? わたし、入学してないのに、学園にいるの? わたしの立場はなんなの?」



 ナナがおどおどしている。

 これには、知力1000000のユータも困った――入学式に出てないと、入学したことにならないと言われたら、なんとなくそんな感じもしたから。


 みんな暗い顔で黙る。

 でも、アランが笑った。



「おっと、オレより理解不能な存在になるのは、オレが許さねえ。入学式をやってなくて、アンタの立場が理解不能なものになるってんなら、このオレがアンタの入学式をやってやるぜ。そんで晴れてクラスメイトだ」



 ユータはハッとした。

 そうだ、入学式が入学に必要だけれどやってないなら、入学式をしたらいいのだ。

 こんな簡単なことにも気付けなかっただなんて、やっぱり知力は数字じゃないなとユータはあらためて思った。



「アラン、いいアイディアだね。ちょっと学園長先生にお願いしてみるよ」

「えっ、いや、オレはそこまで大きな話はしてねーんだ。なんかこうふんわり、この場でそれっぽいことしたらいいぐらいで……まあ、でも、そういう話もしようとしてたのかもしれないな。オレにさえわからねえ。オレは理解不能だからな」

「さすがだ」

「おっと、オレを褒めるのはやめてもらおうか! いいことを言って褒められるなんて、理解可能だからな。どういたしまして」



 その後、学園長にお願いして、ナナだけの入学式がおこなわれた。

 これで晴れて一年Fクラスが全員そろったのだ。

 めでたしめでたし。

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