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『知力1000000』のマジヤベー超超大天才がパネェ大活躍の神的最強無双英雄日常伝説  作者: 稲荷竜
二章 『モンスター襲来』、魔力プラントを守れ!
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20話『メインヒロイン』

「うーむ、困ったのう……」



 学園長はうなっていた。

 だって、すごい、困る。


『モンスター襲来』は、どうにかなった。

 さすが、知力1000000の、シラギ・ユータだ。まかせてよかった。


 プラントは壊れちゃったとか言われたけど、別になんともないし、まあ、壊れちゃったとしても、来週には直るし、べつにいいって、思う。

 だけど、困る。



「シラギくん……その子は、魔力プラントで拾ってきたのかね?」



 学園長の立派な部屋には、ユータと、真っ白い女の子がいた。

 女の子は最初、全裸だったけど、全裸はよくないので、服を、着せてある。

 たくさんあるから、学園の制服の、ブレザーだ。



「はい。なんか、いたもので……」



 ユータは困ったように笑っている。

 ふかふかのソファに座ってるんだけど、そのユータの腕には、白い女の子が、からみつくように、腕を、からみつくようだった。

 からみついているので、嬉しいけど、困る。


 この部屋にいる人は、みんな困ってる。

 困ってなさそうなのは、きょとんとしてユータを見つめる、真っ白い女の子だけかも?



「うーむ……その子っぽい見た目の子は、うちの生徒にはおらんのじゃ……生徒じゃない子を、勝手に連れて来たら、誘拐じゃぞ」

「でも、魔力プラントに落ちてたんです……信じてください。さらってません」

「君の言うことならば、信じる。信じるが、信じるのと、困るのは、また別じゃ」

「はい……」

「うーむ……どうしよ、ほんと……ワシ、困る…………よし、決めたぞい」

「学園長先生、この子をどうするおつもりですか?」

「君に任す」

「……ええと」

「ワシでは、どうしたらいいか、わからん。でも、君なら、だいじょうぶじゃろ。君は、知力が1000000もあるのじゃから、きっとなんとかできる。君に頼らない手はない、ということじゃな」



 学園長は確信していた。

 だって、今回の『モンスター襲来』だって、ユータにまかせたら、いけたし。

 たぶん、なんかあっても、ユータなら、いける。


 学園長は、頭がいい。

 だから、『ユータに任せる』という、自分の判断に、すっごい自信があったのだ。



「なにかあれば、ワシも、がっつり力を貸すぞい。でも、なにをしたらいいか、ぜんぜん、わからん。だから、なにをするかは、君が、決めてくれ」

「……わかりました、そういうことなら……」

「うむ」



 ユータも承諾してくれたし、もう、だいじょうぶだ。

 だって知力1000000だもの。

 賢ければ不可能はないって、学園長は賢いから、知ってるのだ。



「それにしても、なにか、うーむ……」

「どうしました、学園長先生……」

「いやな、君の腕にべったりくっついておる、その子を見て、なにか、思い出しそうなんじゃが……」

「この子のこと、わかるんですか? ……最初に倒れてる時には、口をきいてくれたんですけど、今はぜんぜん、しゃべってくれなくって、名前もわからないんです」



 しゃべってくれないのだ。

 でも、ユータのことが嫌いだから、しゃべってくれないわけじゃ、ないっぽい。

 嫌いな人の腕に、べったりとくっついたりしない――知力1000000もあると、人の心のことだって、すごくわかるのだ。

 知力って、すごい。



「うーむ、うーむ……あ、そうじゃ。思い出せんなら、検索すればいいんじゃな」

「検索?」

「うむ。君にはまだ渡しておらんが、使い魔には、検索機能もあるんじゃ。なんか思い出せないような言葉でも、聞けば、教えてくれる」

「使い魔ってすごいですね」

「うむ。君も、もうじきもらえるぞい。……さて、では、コホン。あーあー、使い魔よ。『落ちてた女の子を拾ったらものすごく懐かれたけど、こういう子をなんと言う?』」



 ウィンウィンと、学園長の鳥型使い魔から音がする。

 そして――



『――検索の結果、「メインヒロイン」という単語がヒットしました』



「おお、それじゃ、それじゃ」

「学園長先生、メインヒロインってなんですか?」

「うむ。思い出したがの、はるか昔、ワシらがまだ『NPC』と呼ばれ、神さまに奉仕するだけの種族だった時代のことじゃ……神さまにもっとも愛されたNPCは、『メインヒロイン』と呼ばれたんじゃな」

「神代の話ですか……学園長先生は、神代のことにもお詳しいんですね」

「うむ。まあ、知力100と少しあるし、なにより、年季が入っておるからのう」

「なるほど」

「メインヒロインは、空から降ってきたり、地面に落ちていたりして、拾った相手に、ひどく懐く性質がある……というようなことを、古代文献で読んだ気がするのう。まさに、今君に懐いておる、その子のようにのう」

「でも、僕は神さまじゃありませんよ」

「メインヒロインは相手を選ばんのじゃろう。拾ってくれた相手になら、誰にでも懐く……そういう公平性があるのやもしれぬ」

「なるほど」

「ちょうどよい。名前もわからんし、しばらくは『メインヒロインちゃん』と呼ぶことにするかのう」

「でも、学園長先生、あんまり名前が長いと、覚えてもらえません。名前を覚えてもらえないと友達ができなくって、彼女がかわいそうです」

「ふむ。では、どうするね?」

「『メイ』でどうでしょう? そのぐらいの文字数なら、僕のクラスメイトでも、覚えられるみたいですし」

「なるほど、さすがじゃな。では、その子は『メイ』として、君のクラスに入れるように、手続きしておこう。ワシの知能がな、『同じクラスの方がめんどうがみやすい』と、素晴らしい答えを導き出したんじゃ」

「なるほど。さすがです、学園長先生」

「ほっほっほ。君に褒められると、嬉しいのう」



 学園長は嬉しそうに白いヒゲをなでた。

 やっぱり、頭のいい人の褒め言葉は、心に響くのだ。


 ユータはメイの方を見る。

 赤くって、大きい目が、じっとユータを見ていた。



「君はこれから、『メイ』だよ」

「…………め」

「……」

「め、い。……ワタシ、メイ」

「学園長先生、しゃべりましたよ!」

「ほっほう! これは、すごい! 知力が、10はありそうじゃな!」



 世の中、まともにしゃべれない人も多いから、名前っぽい単語を言われて、すぐに自分につけられた名前だってわかるのは、けっこう、すごいのだ。

 あるいは、天才のそばにいるから頭がよくなったのかもしれない――学園長は頭がいいので、そんな妄想をした。



「では、シラギくん、メイちゃん、いよいよ始まる学園生活、がんばりたまえよ」



 学園長は白いヒゲをなでて笑う。

 ユータは嬉しそうにはにかんでうなずき――

 メイも、まねするように、こくんとうなずいた。

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