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『知力1000000』のマジヤベー超超大天才がパネェ大活躍の神的最強無双英雄日常伝説  作者: 稲荷竜
二章 『モンスター襲来』、魔力プラントを守れ!
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18話 魔の第六ウェーブ

「遅くない!?」



 ミカヅキがあきらかに怒ってて、ユータはごめんなさいしたい気持ちになった。

 たしかに、そうだ。遅かった。



「……ごめんなさい」

「活躍したのに……たくさん、活躍したのに……やっぱり私のこと、こわくて、嫌いなんだ……」

「そうじゃないですよ。ちょっと、作戦会議をしてたんです」

「ほんとに?」

「本当です」

「何本?」

「……え?」

「嘘だったら、針何本飲める? 千本、いける?」

「嘘じゃないから、いけます」

「……うん。そうだな。疑ってないんだ。ただちょっと、普段よりがんばったから、がっかりしただけなんだ」

「ごめんなさい」

「いや、いいんだ。見ろ! 今からボス戦だ! 第六ウェーブはな、すごく強い敵が出てくる! 私がそれを倒すから、二人とも、見ててくれよ!」



 BGMが盛り上がり始めた。

 ――遠くの方、砂煙の向こう側に、巨大な影が映るのがわかった。


 すごく、大きい。

 ユータの後ろにはプラント施設もあって、それもけっこう大きいけど、おんなじぐらい大きい。

 おんなじぐらいっていうのは、なんかこう、イメージみたいなのも入るから、やっぱりおんなじぐらいではないかもしれないけど、それでも、だいたい、おんなじぐらいだ。

 大きいんだ。


 近付いてきて、ようやく、色とか、正しいかたちとか、わかってくる。

 羽根の生えた真っ黒いクモだ。



「ミカヅキさん、あれ、羽根ついてるから飛ぶし、全高五メートルはありそうですし、頭からお尻までは十メートルぐらいありそうですけど、一人で倒せる相手なんですか?」

「うん? つまり大きいっていうことか?」

「そうです」

「そうだな。大きいだろう。強そうだろう。あれ倒したら、すごいだろう?」

「はい」

「そうか! すごいか! じゃあ、倒してくる! 見ててね! 絶対だぞ!」

「わかりました」



 ミカヅキが速度だ。

 近くで動き回ってるのを見ると、速すぎて、こわい。



「ミカったら、ものすごく速い。こわいわ」



 ナナは口に出したけど、ユータはミカヅキが『こわい』って言われると傷つくとわかっていたから、黙っていた。

 でも、これ以上ナナが余計なことを言わないように、後ろから口をふさいだ。



「んー!? んー!?」

「ナナ、こわいとか、言ったらだめだよ。ミカヅキさん、気にしてるんだよ」

「……んー」

「わかった?」

「ん」

「じゃあ、口から手を離すよ。見ててね。今、ミカヅキさんが、すごい活躍をして、モンスターを倒すみたいだから。ミカヅキさんをきちんと応援しよう。遅れちゃったから、ごめんなさいの意味もこめて、しっかり応援するんだよ」

「ん」



 ユータはナナの口から手を離す。

 ミカヅキが飛んだり跳ねたりして戦ってる。

 大きな刀なのに、ものすごい軽そうに振り回してる。


 しばらく、そうやってがんばってたけど……

 ミカヅキが、すごい速さで、ユータたちのところに戻ってきた。



「二人とも!」

「どうしたんですか、ミカヅキさん?」

「なんかあいつ、強い!」

「……まあ、ボスだから強いのでは?」

「そうじゃなくって、いつもより強い。どうしよう……私の体は、『そろそろ倒せてるはずだ』って言うんだけど、でも、倒せてないんだ。おかしいな?」

「おかしいですね」

「どうしよう?」

「手伝いましょうか?」

「お願い…………い、いや、いい! もうちょっとがんばる!」

「そうですか。わかりました」

「でも、おかしいよ……普段、もっと弱いもん……もう倒せてるんだ。普段の私は、もっとあっさり倒してるし……こんな苦戦するの、いつもじゃないからな?」

「ミカヅキさん」

「言い訳じゃないぞ」

「いえ、そうではなくて、来てます」

「誰が?」

「モンスターが、すぐそこに」



 ミカヅキが振り返る。

 すぐそこ、モンスター。


 モンスター、腕を振りかぶる。

 ミカヅキ、刀で防御する。


 モンスターの腕がミカヅキに当たる。

 ミカヅキ、吹き飛ぶ。


 するとミカヅキの体が青白く光って、消えた。

 たぶんやられそうになったから転送魔法陣の前に飛ばされたんだろう――学園長の話を知力1000000で記憶していたユータは、優れた知力でそう結論を出した。



「ミカが消えちゃったわ!」

「消えちゃったね」

「つまり――今、あのモンスターを手下にしたら、わたし、ミカに勝つのね?」

「そうだね」

「わかったわ。――ねえ、モンスター! あなた、頭が悪いわ!」



 モンスター、ナナを吹き飛ばす。

 ナナが青白い光に包まれ、消えた。



「……一人になっちゃった」



 ユータはつぶやいた。

 今までナナとかミカヅキがそばにいたから、けっこう寂しい。


 でも、大丈夫だった。

 すぐに後ろの方から、ミカヅキが走ってくる。

 ほんとに転送魔法陣の前に飛ばされただけみたいで、ケガとかも、なさそうだ。

 すごく、元気。



「今の、なし! 普段は、やられないから! 私は頼れるんだ!」



 そんなことを言いながら、ミカヅキがモンスターに斬りかかる。

 モンスターも攻撃するけれど、さっきみたいに油断してなかったミカヅキは、けっこうがんばって避けてる。

 でも――



「……なんかやたら強い!? 使い魔! このモンスターのレベルは!?」



 ミカヅキが言うと、彼女の顔の横で一緒にすごく速い動きをしてる使い魔が、ウィンウィンと音を立てる。

 そして――



『レイドボス「フライングスキュラ」――レベル90のモンスターユニットです』

「ええっ!? 高くない!?」

『――ミカヅキの推奨レベル以上のモンスターと判定します。トラブルを感知しました。推奨レベル未満の味方ユニットの帰還を開始します』

「あ、やめ、ちょっ、私の活躍……私、かっこいい、頼れる――」



 ヒュン、と。

 青白い光に包まれて、ミカヅキが消えた。


 けれど、ユータは消えなかった。

 ボス――『フライングスキュラ』と一対一で、残されてしまう。



「……どうしようもないな。壊したら、ごめんなさい」



 知力1000000でユータはそのように結論を出し――

 右手の平を、モンスターに向ける。


 それは彼ができる精一杯にして唯一の抵抗。

 武器も持たない彼が、唯一できる戦いの手段――


 手のひらから真っ白な光がほとばしる。

 それは周囲一帯を巻きこむようにして、『ついで』とばかりにフライングスキュラを飲み込んで、かき消した。

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