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『知力1000000』のマジヤベー超超大天才がパネェ大活躍の神的最強無双英雄日常伝説  作者: 稲荷竜
二章 『モンスター襲来』、魔力プラントを守れ!
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14話 天才、先輩と出会う

「――誰だ」



 ユータが道場に入ると、いきなり問われた。

 ほんとに入ったばっかりなので、今まで名乗るタイミングなんかなかったんだから、そんな不機嫌そうな声で『誰だ』とか聞かなくってもいいんじゃないかなと、ユータは思った。


 しかもあの人、ユータの方をまったく見ずに、ユータが入って来たことに気付いた。

 道場の板張り床で正座していて、振り向いたり、前に鏡があったりすることもないのに、いきなり気付くとか、なんか、強そう。



「あ、すいません。僕は、新入生のシラギ・ユータという者です。先輩に、会いに来ました」

「私に会いに?」



 先輩が立ち上がりながら、ユータの方を振り向いた。

 意味不明なほど美人だった。


 すっごい、顔が、綺麗。

 ほんと綺麗で、どうしようかと思う。

 綺麗すぎて、逆にこわい。


 黒くて長い髪も、道着と袴っていう姿も、ほんと、ものすごい迫力だ。

 あと、おっぱいすごい。

 もうそこしか見えない。


 道着を着ていて、それはあんまり体のラインがわからない服なんだけど、それでもわかるぐらい、とんでもない迫力だった。

 ユータは『おっぱいを見よう』という心と、『そんなにジロジロ見たらだめだよ』っていう心がけんかして、動けない。



「その制服――Fクラスか」



 動けないユータに、先輩が近付いてきた。

 先輩が近付いてきたというよりは、おっぱいが近付いてきたという方が、ユータ的には正しい感じだ。



「あ、はい。Fクラスの、シラギ・ユータです」

「そうか。……それで、なんの接点もない君が、私になんの用事だ?」

「実は、明日のモンスター襲来で一緒に戦ってくれる仲間を捜しているんです。でも、学園にはあんまり人がいなくって、それで……」

「つまり、私を頼ってきたのか」

「はい」

「わかった。力を貸そう」



 先輩はまじめな顔でうなずいた。

 おっぱいは揺れない。



「ありがとうございます。おっぱ……先輩」

「うむ。こう見えて、私は、めっちゃ強いのだ」

「見るからに強そうですもんね」

「うむ。めっちゃ強いせいか、人からものすごいこわがられるんだ。だから、Fクラスの後輩が、私を頼ってくれたことは、わかりにくいかもしれないが、けっこう、嬉しい」

「そうなんですか」

「うむ。Fクラスの子とか、後輩とか、そういうのは、どうにも、私をすごくこわがって、声とかかけてくれないから……実のところ、後輩から頼られるっていうのは、夢だった」

「そうなんですか」

「君の名は、ええと……」

「ユータです」

「ゆうたくん。私がこうやって道場でずっと正座していたのも、道場にいたら強い人を求めている誰かが、私を頼りにやってくるかと思っていたのだ。そこに君は来た。つまり、私の『声をかけられるのを道場で待つ作戦』は、正しかったのだ」

「なるほど」

「やはり、賢ければ、正しさはあとからついてくる……『賢いこと』とは『正しいこと』だ。春休みとか、毎年道場で待っていて、誰も来なくて、私は正しくないんじゃないかと思うところだったけど、三年生になる春休みで、ようやく、君が来た。私は正しかった。君が証明してくれたんだ。ありがとう」

「どういたしまして」

「それでだな、唐突で申し訳ないが、フレンドになってくれないか?」

「フレンドってなんですか?」

「仲良しだ」

「なりましょう」

「では、使い魔と使い魔を握手させて……む? 君の使い魔はどこかな?」

「入学前なんで、ないんです。先輩の使い魔も見当たりませんけど……」

「顔のまわりをうろちょろして、邪魔だから、胸に挟んでる。しかし、そうか……では、入学式までは口約束フレンドだな……入学後まで、覚えていてくれるかどうか……」

「大丈夫だと思います」

「そうか。君、知力はいくつだ?」

「えっと、ひゃく……30ってことになってます」

「130!?」

「30です。間違えました」

「そ、そうか……130でFクラスとか、今年の新入生は意味わかんないほどレベル高いなとか思ってしまったぞ。いや、いいんだ。Fクラスだものな。二けたの数字を記憶しているだけでも、ものすごい。言い間違いでびっくりしたが、許そう」

「ありがとうございます」

「ちなみにわたしは、80だ。Sクラスの中でも、上位なんだぞ。どうだ、頼れるだろう?」

「はい」

「うむ。君は素直でいいな。だいじょうぶだ。この私を頼ったからには、君の未来は明るい。私は頼られるのが大好きなのだ。誰も頼ってくれなかったから……なぜみんな、私を『機嫌悪そう』とか『近寄りがたい』とか言うのか、すごく、悩んでた……」

「美人だからじゃないでしょうか」

「……君は素直だが、ちょっと素直すぎるな。あんまりかわいいことを言うと、誘拐されてしまうから、夜道に気を付けなさい。今日とか、やばい。私が高まっていて、やばい」

「はい。ご忠告ありがとうございます」

「……なにやら君は、あんまりFクラスっぽくない、知性のあるしゃべり方をするのだな」

「でも、Fクラスです」

「君と私の仲だからな。嘘だとは、思っていない」



 先輩は出会って数分で信じてくれた。

 見た目は美人すぎてこわいけれど、優しくていい人だ。



「そういえば、まだ名乗っていなかったな。大丈夫か? 私の名前は、そこそこ長い。覚えきれるだろうか……」

「だいじょうぶだと思います」

「そうか。では、言うが……私の名前は『ミカヅキ』だ。知力はSクラス相当だが、どちらかと言えば、剣術が得意だ。長い刀をぶんぶん振り回すのが、好きでな……たまに授業中とか、道ばたとかでも、振り回している。そういうの、肩こりにも、いいらしいのだ。健康のためだな」

「肩こりはやっぱりひどいんですか?」

「油断すると、すぐになる。それもあって、故郷の街でも剣術をやっていたんだ。上段面打ちの動作が、肩こりにきくようなのでな」

「なるほど」

「やはり君も、私のこと、『生真面目そうだから肩こる生き方してそう』と思うか……?」

「いえ」

「そうか。私はこう見えて、けっこう、なまけものだ。休日はできたら一日中ボーっとしていたいと思っている。ボーっとするのは、好きだな。だから、道場でボーっと正座してるのも、苦にはならなかったんだ。毎年長い休みのたびにやっているし、慣れただけかもしれないが」

「なるほど」

「でも、なまけものと言っても、頼られるのは、好きだからな。普段はボーっとしているが、いざという時は頼れる……そういう先輩を目指して、一年が過ぎ、二年目に突入していた。でも、誰も頼ってくれないから、普段ボーっとしているだけの三年生になるところだった」

「なるほど」

「ところで唐突で申し訳ないが、フレンドになってはくれないか?」

「まだ使い魔がいないので、できないんです」

「……む? 今の会話、した覚えがあるな……脳内で『後輩に頼られたら』というシミュレートをしすぎて、既視感があるのかもしれない。それとも君は、私の作りだした妄想か?」

「いえ、現実にいますよ」

「触っても?」

「どうぞ」



 ミカヅキはユータの頭とか脇腹とかを、べたべた触った。

 おっぱいが近づいたり遠ざかったり、上下運動したり揺れたり揺れなかったりした。



「……なるほど、現実のようだ」

「はい」

「まいったな。私は、実のところ、あんまり会話がうまくない……友達が、いないのだ。みんな、私をこわがるから」

「……」

「でも、脳内で、色んなシチュエーションでの会話の練習はしてるから、だいじょうぶだと思う。それとも私は、なにかおかしなことを口走っているかな? 顔に出ないとよく言われるが、これでも緊張しているのだ」

「いえ、だいじょうぶだと思います」

「そうか。では、使い魔を手に入れたら、フレンド登録をしてくれ。約束だからな。忘れないように、私が君の手にでも、書いておこうか?」

「だいじょうぶです。忘れません」

「ほんとか? ほんとに忘れないか? 新学期になったら、君のところ行くからな。お菓子とか持って行くからな。私の名前の入ったお菓子とか、持って行くぞ。忘れてもそれで思い出してくれよ」

「だいじょうぶです」

「君がそこまで言うなら信じよう。君と私は、もうすでに、実質フレンドみたいな感じだものな。フレンド限定授業とか、一緒に受けような」

「はい」

「うむ。……そういうわけで、これから私は、無口になるが、君のことを嫌っているとか、そういうのじゃないからな」

「え、なんで無口になるんですか?」

「無口な方が、頼れる先輩という感じじゃないか? それに、いっぱい人がいたりすると、緊張して、うまくしゃべれなくなるんだ。具体的には、一対一でもないと、もうだめだな」

「なるほど」

「それに私は、一気に色々話してしまうから、そういうのでも、こわがられてる気がするんだ。こわがられないために、無口になる。でも、君は事情を察して、私が無口でも、機嫌悪いとか思って、こわがらないでくれよ」

「わかりました」

「よろしい」

「……えっと、では、モンスター襲来は、手伝ってくれるということで、いいんでしょうか?」

「うむ」

「あの、先輩を含めて、まだ四人しか集まってないんです。これからあと一人に声をかけますけど、増えても全部で五人しかいないんです。それでも、大丈夫ですか?」

「うむ」

「難易度は、イージーの予定です。でも、僕も、僕のクラスメイトも、初めての『モンスター襲来』なので、うまくできないかもしれませんけど……」

「……君のクラスメイトも一緒なのか。それはいいな」

「はい。あと残る二人は、学園長先生と、保健室のマルギット先生に声をかける予定ですけど」

「それはやめよう」



 ミカヅキがガシッとユータの肩をつかんだ。

 美人に真剣な顔でせまられると、緊張感がやばい。



「なぜ」

「先生がいたら、私が、頼られなくなってしまう。だから、君のクラスメイトはいいけど、先生が一緒なのは、ちょっとやだな……」

「いえ、しかし、本来十二人でやるものらしいので」

「ゆうたくん。だいじょうぶだ。私にまかせなさい。私は友達がいないもので、普段から一人(ソロ)でやってるんだ。だって、知り合いがわいわいしてるところに、知り合いでもなんでもない私が一人でまざるの、すごく、やだし……」

「……」

「だから、頼れる相手は、私だけにしてほしい。私だけを頼ってくれ。私は後輩に格好つけたくてたまらないと思いながら、今まで一人でボーっとしてたんだ」

「あ、ソロでできるなら、ソロでやっていただいても……」

「寂しこと言うな! 一緒に行こう!」

「……わかりましだ。でも、ほんとに、僕も、クラスメイトも、初めてなんです」

「だいじょうぶだ。後ろの方に立って、私の活躍を見ててくれるだけでいい」

「わ、わかりました……あ、でも、僕のクラスメイトは、モンスターと話し合って解決するつもりらしいんですけど……」

「発想が天才のそれだな」

「……まあその、そうかもしれません」

「でも、私は戦闘中、すごく忙しいから、モンスターの近くでボーっとしてたら、間違って斬らないとも限らない。君が抑えてくれていると、助かる」

「やっぱり一人で行っていただいた方が、いいのでは……」

「なんだ!? なにが不満だ!? こわいのか!? 私がこわいから、やっぱり誘ったことを後悔してるのか!?」

「いえ、そうではなくって、足手まといになるのはどうかなって思うだけで……」

「『がんばれ』とか『かっこいい』とか応援してくれるだけで、私はものすごくがんばれるんだ。モンスターの近くでボーっとしていなければ、それだけでいい」

「いえ、ですからそれが難しそうだなって……」

「うううう! なんか色々難しそうなことを言って、私をのけ者にする気だ!」

「……わかりました。一緒に行きましょう」

「ほんとか!?」

「はい。……足手まといにならないように、がんばります」

「そうか。……ふふ。格好よく一人でがんばる私を、どうかよく見ておくといい。そして、君と君のクラスメイトには、入学式後、フレンドになってもらうからな。フレンド限定アイテムとか、一緒に買おうな?」

「はい」

「忘れたら、悲しいからな? 忘れないように、お弁当とか作っていくからな。私の名前とか、ご飯のとこに書いたの、作っていくからな?」

「忘れませんよ」

「命懸ける?」

「……」

「…………」

「……まあ、忘れません」

「うん。信じているよ。君と私の仲だからな」



 ミカヅキは満足げにうなずいた。

 ユータは1000000の知力で気付く――忘れたらヤベーことになりそうだ、と。

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